大胆予測
キャリートレードの巻き戻しでUSD/JPYが100を下回り、日本に次なる資産バブルが到来
チャル・チャナナ
チーフ・インベストメント・ストラテジスト
チーフ・インベストメント・ストラテジスト
サマリー: 当社の第2四半期見通しでは、投資家は白か黒かの二元論で考えるのをやめるべきだと提言しています。AIは依然として長期の主要テーマである一方、地政学リスク、エネルギー供給の混乱、サプライチェーンの逼迫が、市場を一段と選別的かつ厳格にしています。鍵となるのは、構造的成長への投資機会を確保しながら、集中リスクを抑え、分散の強化・実物資産・質の高いインカムに加え、エネルギー/インフラ/安全保障関連セクターを活用して耐性を高めることです。
第2四半期に入るにあたり、市場は同時に二つの力に引っ張られています。イラン情勢はヘッドラインを支配するマクロショックである一方、AIは設備投資、政策の優先順位、そして長期的な市場の主導権を形作る構造的トレンドとして残っています。投資家にとっての課題は、どちらか一方を選ぶことではなく、両方に備えたポジショニングをどう組むかを理解することです。
地政学的ショックは、原油だけにとどまらず重要です。エネルギーの混乱が長引けば、インフレ期待、債券利回り、利下げ観測、そして市場全体のリスク選好に波及し得ます。より大きな視点では、AIは依然としてこの10年で最も重要な投資サイクルの一つですが、その確信はもはや無条件ではありません。AIは政策に支えられ、設備投資(CAPEX)主導で、国家競争力にも結び付いています。しかし、エネルギーショックが持続すれば、電力コストの上昇、金融環境の引き締まりを通じて道筋はより不安定になります。その結果、投資家は、収益化(マネタイズ)、バランスシートの強さ、成長が鈍化した場合でもどの程度のCAPEXが正当化されるのか、といった点について、より厳しい問いを迫られます。
言い換えれば、地政学的ショックがAIの発展を終わらせるとは限りませんが、AIテーマの中でも、安価な資本や遠い将来の約束に最も依存している領域に対しては、エネルギー感応度を高め、より選別的で、より容赦のない環境にし得る可能性があるということです。
これが、第2四半期において投資家に提示された本当の課題です。構造的な成長テーマへの投資は引き続き維持・検討をしつつも、今後の展開について特定の方向への想定に依存しすぎないことが求められます。
長期投資家にとって第一の原則はいつでも、「慌てないこと」です。地政学的ショックが、長期的な投資計画を放棄する理由になることは稀であり、また市場から退く代償は高くつく場合があります。ただし、ポートフォリオがいつの間にか、「無意識下での一定方向への集中」に傾いていないかを把握することが重要です。
多くのポートフォリオが一見、しっかりと分散されているように見えたとしても、実際には分散が十分でないということがあります。具体的には、少数のAI勝ち組への過度なエクスポージャー、特定地域・セクターへの大きな依存、そして防御手段を債券だけに頼りすぎている、といった状態です。
インフレと金利の変動が大きい世界で、安全性とインカムを確保するうえで債券は依然として重要ですが、それだけでは十分でない可能性があります。したがって、ポートフォリオが特定の防御策に依存していないことを確認する必要があります。
投資家にとって最も有用な対応は、紛争のあらゆる展開に合わせて売買することではありません。分散が今も機能しているかを問い直すことです。長期投資家向けの簡単なチェックリストは次のとおりです。
回答の多くが「いいえ」となる場合、ポートフォリオはリバランスの余地がある可能性が高いです。
イラン情勢が市場に与える影響の入口はエネルギーですが、影響はもはや原油価格だけでは止まりません。航路の混乱や保険料の上昇、物流ルートの変更や中間財の制約が生じることで、ショックはサプライチェーンとコストの問題へと姿を変え、利益率や納期、さらにはインフレ全体にも波及し始めています。
ショックの捉え方で重要なのは:
このイラン情勢の影響をふまえることが、投資戦略上で重要なポイントです。
投資家にとってイラン情勢を考えるうえで最も有用なのは、ポートフォリオの耐性を測る三つのシナリオとして捉えることです。
緊張緩和となれば、市場は純粋なディフェンシブ姿勢から離れ、再び市場の裾野(ブレッド)へ戻りやすくなります。原油のリスクプレミアムが低下し、成長懸念が和らぎ、インフレ圧力が弱まり、供給の混乱が解消に向かえば、より広範な株式が回復する可能性があります。
この局面の投資は、以下を考慮します。
混乱が長期化すると、原油・運賃・投入コストが同時に高止まりし、より不快な環境になります。その結果、市場はより低い成長、より粘着的なインフレ、そして債券価格のボラティリティ上昇に直面します。
この局面の投資は、バランス重視が適切です。
このようなテールリスクのシナリオは、市場が「機会を狙う」姿勢から「守りを重視する」姿勢へ最も明確に移る局面です。この場合、原油価格は成長とインフレの双方にとって危険水域に入り、スタグフレーション懸念が前面に出る可能性があります。ブルームバーグ・インテリジェンスの分析では、原油価格が1バレル100ドルを上回る水準は、歴史的に株式市場にとっての危険ゾーンであり、エネルギーコストの上昇が利益率を圧迫することでS&P500の収益性が低下してきたことが示されています。
この局面の投資では、以下を考慮しましょう。
イラン情勢がマクロショックである一方で、AIは引き続き構造的トレンドであり続けます。しかしそれは、市場がAIの全ての側面を同じ熱量で信じているわけではありません。
第1四半期に変わったのは、投資家がAIに資金を供給する姿勢です。「とにかく資金を出す」姿勢から投資家は、割高感や利益化の確度、競争力、さらにAIが一部のソフトウェア企業を強くする一方で、別の企業を脆くする可能性などを厳しく見るようになりました。そして今後もエネルギーコストの高止まりと金融環境の引き締まりが続く場合、AIのどの領域に未来があり、どこが縮小・再検証される可能性があるのかについて大いに注目するようになりました。
以下のような要素が焦点となります。
長期の投資においては、少数のAI銘柄へ偏るのではなく、AI業界内に幅広く分散して投資をすることが望ましいです。(しかし、全ての分野が同じくらい期待できるとは限りませんので、見極めが必要となります)
今現在注目を集め見出しを派手に飾る分野・銘柄だけではなく、以下のような分野に目を向けてみましょう。
利益の見通しにおいては、AIの構造的な追い風はまだ残っています。S&P500のEPS成長率は第2四半期に向けて改善が見込まれており、テクノロジーは市場で最も強力な収益エンジンの一つであり続けています。収益予想の修正も、比較的底堅く推移しています。しかし、セクター全体に強い収益見通しがあっても、AIテーマの一部が「過剰保有」「過剰期待」になっている、あるいは市場が四半期前に織り込んでいた以上にエネルギー・資金調達ショックに脆弱である、というリスクは残っています。つまり、AIの成長ストーリーは消えたわけではないにしても、主役としての将来は依然として限定的で、確信も脆弱であることから、集中リスクには引き続き注意が必要です。

AIと地政学リスクが重なる部分には、興味深い長期的投資のヒントが見て取れます。AIは電力、半導体、データセンター、送電網、そして安全なデジタルインフラへの需要を増やす一方で、地政学リスクはエネルギーの強靭性、信頼できるサプライチェーン、国家安全保障の重要性を高めています。両者が組み合わさることで、市場は利便性よりも安全保障を重視する傾向となります。
AIはエネルギーを大量に消費しますが、地政学リスクはエネルギーの確保に多大な影響を与えます。
主に以下の分野に関連します。
ここで考慮するポイントは、「AIの需要拡大」と「安全保障の意識の高まり」の両方の要素を支えられるかという部分です。
イラン情勢によるショックは、物流、海運、調達、中間財が短期間で市場の重要テーマになり得ることを改めて示しています。同時に、AIと産業政策は、各国および企業に対してサプライチェーンの短縮、多様化、強靭化を促しています。
主に以下の分野に関連します。
ここでは、世界的な取扱量の増加だけに期待するのではなく、供給網の耐性、現地化、オペレーション効率に強みを持つ企業を重視することがポイントです。
地政学リスクは軍事支出への需要を高めるだけではありません。サイバーセキュリティ、安全な通信、戦略技術、国内の産業能力への需要も押し上げています。
主に以下の分野に関連します。
ポイントは、国家安全保障の支出が「防衛だけ」ではなくなり、テクノロジーやインフラと一体化しつつあると理解することです。
実物資産は、地政学リスクに備えるためだけのものではありません。エネルギー需要がますます増加する社会では、エネルギーの供給を制約し、安全保障をより重視する世界に対応するための「構造的な投資先」でもあります。
投資戦略の観点から、実物資産は同時に以下の二つの役割を果たし得ると言えるでしょう。