大胆予測
キャリートレードの巻き戻しでUSD/JPYが100を下回り、日本に次なる資産バブルが到来
チャル・チャナナ
チーフ・インベストメント・ストラテジスト
チーフ・インベストメント・ストラテジスト
サマリー: 私たちの「大胆予測」は、非常に可能性は低いものの、もし起こった場合には金融市場に衝撃を与える出来事です。今年は「ドル円が150円から80円まで急落して、大幅な円高となる」という大胆予測となります。これは公式な予測ではなく、議論を喚起し、コンセンサスに挑戦することを目的としています。
キャリートレードの巻き戻しでUSD/JPYが100を下回り、日本に次なる資産バブルが到来
市場は円が1ドル150円から80円へと急騰し、数十年ぶりの大幅な円高に驚くことになるでしょう。この動きは日本の積極的な金融引き締めによるものではありません。日本銀行は中立的な姿勢を維持し、安定性に注力しておりますが、今回の衝撃はワシントンからもたらされます。パウエル議長の任期終了後、トランプ政権が新たなFRB議長を任命し、米連邦準備制度理事会(FRB)は急速な利下げに転じます。これは米国経済の減速のサポートとなるだけではなく、トランプ氏が長年求めてきた政策の実現でもあります。これにより米国と日本の金利差が急速に縮小し、円の低金利を利用したキャリートレードが一気に巻き戻されるでしょう。
長年、世界の投資家は円で資金を調達し、米国の信用市場や新興国債券、AI成長株などに投資を行ってきました。しかしボラティリティが急上昇し、利回りが急低下すると、これらのポジションは大きく巻き戻されます。ヘッジファンドや企業はショートポジションを急いで解消し、大規模な円買いを引き起こすでしょう。損切り注文やマージンコールが連鎖的に発生することで、この動きはグローバル市場に波及します。
日本企業は防衛的な対応をするでしょう。円高で輸出が鈍化する中でも、企業は利益を本国に還流させ、ドル建て資産を減らすことで利益率を守ろうとします。エネルギー価格の下落や原発再稼働で輸入コストが削減され、日本の経常収支は堅調に推移し、円高を支える実需フローが発生します。
円高により輸入インフレが抑制され、消費者物価指数(CPI)は再び1%程度に落ち着き、実質所得を安定化させます。輸出企業は調整を迫られて成長はやや鈍化しますが、国内の流動性は増加し、資金が国内に流入します。低金利、家計のバランスシートの健全化、そして資産流入の急増が重なり、東京の不動産や株式市場で新たな資産バブルの兆しが見られ始めるでしょう。
年末には、アナリストたちは1985年のプラザ合意との類似性を引き合いに出すでしょう。当時は協調政策でのドル安・円高が進みましたが、今回は市場主導の動きであり、キャリートレードの巻き戻し、資金の還流、そして米国の金利低下が背景となっています。
市場への潜在的影響: 世界のリスク資産は後退し、新興国通貨は下落、日本の輸出企業は苦戦する一方で、国内の銀行、保険会社、そして家計は購買力の向上と国内資産価格の上昇による恩恵を受けるでしょう。