債券の強気相場の条件は整ったが、課題は残る 債券の強気相場の条件は整ったが、課題は残る 債券の強気相場の条件は整ったが、課題は残る

債券の強気相場の条件は整ったが、課題は残る

アルテア・スピノッツィ

シニア債券ストラテジスト

サマリー:  債券の強気相場はやってくるのでしょうか。インフレは依然として投資家にとってリスクとなっていますが、中央銀行が利下げを行う必要に迫られる可能性がある年末に向けて、ポートフォリオに債券を加える好機が訪れるかもしれません。


今年最後の四半期は、大西洋の両側でスタグフレーションが本格化するでしょう。ドイツとオランダで始まった景気後退は他の欧州諸国に波及し、米国では経済成長が大幅に減速するとみられます。しかし、インフレ率が年内および来年を通じて高止まりするため、中央銀行はタカ派的姿勢を維持せざるを得なくなるでしょう。

とはいえ、さらに利上げが行われることにはならないでしょう。利上げ幅はすでに縮小しており、いくつかの中央銀行は利上げを見送っています。これは、利上げサイクルが終わりに近づいているか、すでに利上げが終わって可能性があるということを示しています。今後は金融政策を微調整する段階に入り、インフレ率が中央銀行の目標を上回っているため、中央銀行はタカ派的姿勢を維持しようとすると考えられます。しかし、今後を見ると、経済活動の減速や地政学的リスクが先行きに暗い影を落としており、これらが債券強気相場への下地が作られるでしょう。

この状況においては、利下げサイクルが始まるまで金利がいつまで現行水準で留まれるかが市場のテーマになることから、大西洋の両側で今年の第4四半期を通じてイールドカーブがスティープ化すると予想するのが無難です。利下げは短期債、長期債いずれにとっても買い材料ですが、利下げに先立つ期間は長期債にとっては強気材料にはならないかもしれません。これは、米10年物国債利回りが今年8月に2007年以来の高水準となる4.36%を記録し、イールドカーブがベア・スティープ化したことにも見受けられます。

ブレークイーブン金利(期待インフレ率)を見ると、「より長くより高く」というFRBの姿勢が反映されています。期待インフレ率は2022年のピークから低下したものの、FRBの目標である2%を若干上回る水準で安定しています。これは、FRBには追加利上げの動機はないかもしれないが、利下げを行う動機もないということを意味します。

以下の要因が利回りに上昇圧力をかけると、長期金利はさらに上昇する可能性があります。

  • 中央銀行は、「より高くより長く」という考えを依然として維持しています。これは、短期金利は固定されますが、イールドカーブの長期ゾーンはさらに上昇する可能性があることを意味します。
  • 日本銀行はイールドカーブ・コントロールから脱却しようとしています。そうなると、日本の投資家は、国内債券の利回りが上昇するにつれて、徐々に資金を本国に戻すことになるでしょう。
  • 量的引き締め(QT)。すべての先進国の中央銀行は、償還金の一部または全部を再投資しないことによって、膨大なバランスシートを縮小する政策を採用しています。
  • 中央銀行が利上げサイクルを終えたとの期待から、投資家はイールドカーブのスティープ化から利益を得る取引を行うようになります。つまり、投資家はイールドカーブの短期ゾーンを買い、長期ゾーンを売ろうとするので、長期利回りにさらに圧力をかけることになるでしょう。

したがって、中央銀行が利下げの準備を進める中、金利は大きく下がる前に最後の上昇をみせるかもしれません。これが、短期のソブリン債を当グループが引き続き好む理由ですが、一方で年末にかけてデュレーションのエクスポージャーを増やす余地があると考えています。

デュレーションのエクスポージャーを増やすときが近づく

インフレは依然として債券投資家に重大なリスクをもたらしています。中央銀行がピーク金利に到達した後にインフレが再燃する場合、深刻な景気後退にもかかわらず、さらなる引き締めが必要になる可能性があります。この決定はイールドカーブの短期ゾーンに最も影響を与えますが、長期利回りも高騰することに注意する必要があります。これは70年代に起きました。このときはスタグフレーションの悪化につれて利回りは年限を問わず上昇しました。しかし、長期債利回りは、はるかに小さな動きでより大きな損失をもたらします。

2年物国債(US91282CHV63)の利回りは現在5%で、修正デュレーションは1.5%です。つまり、利回りが突然100bp上昇しても、投資家の損失は1.5%にとどまります。他方、米10年物国債(US91282CHT18)の修正デュレーションは8%です。

したがって、インフレ見通しが依然として不確実であることを踏まえると、短期債はそこに資金を預けて投資環境の改善を待つのに理想的です。一方で、インフレが再燃する見込みがなくなれば長期国債は魅力的になります。

景気後退が深刻になれば、インフレ懸念は和らぎます。中央銀行が金融緩和を余儀なくされるかもしれない年末が近づくと、ポートフォリオにデュレーションを追加する良い機会が現れるとみています。

スタグフレーションはインフレ連動債を買う機会?

インフレ連動証券は10年ぶりの投資機会を提供しています。米2年物インフレ連動債(US912810FR42)の利回りは3%となっています。米10年物インフレ連動債(US91282CHP95)と米5年物インフレ連動債(US91282CGW55)の利回りは2%強と2008年以来の高水準に達し、世界金融危機以降で最も引き締まった状況を創り出しています。

インフレ連動債が優れている点はインフレと金利の両方の影響を受けることです。つまり、インフレ率が上昇すれば、インフレ連動債の想定元金額と利子額が増加します。インフレ率が平均水準に戻れば、満期時の利子額や想定元本額は減るものの、インフレ連動債は金利低下による利益を得ます。

インフレ率は、積極的な利上げが実施されたにもかかわらず、今年と来年は高止まりするとみられます。したがって、金利が高すぎるか、予想インフレ率が市場で低すぎる値付けがなされているかどちらかである転換点に私たちは立っています。どちらの場合でも、インフレ連動債は、十分に分散化されたポートフォリオにおいて、両方のシナリオの下で優れたリスク・リターンを提供します。

ジャンク債のスプレッドはまもなく拡大、質こそ重要

2%の実質金利は貯蓄には好都合ですが、借り手や成長を脅かします。実質金利が2%を超えた水準を保持したのは、世界金融危機前の2005~2007年だけです。歴史的な高水準の実質金利がリスク資産に打撃を与えないなどと期待すべきではありません。

スタグフレーションが深刻化し中央銀行が高金利を維持すると、企業の信用ファンダメンタルズは悪化します。企業は資金調達コストの上昇に直面しますが、この負債コストの上昇に適応できるかどうかは企業の信用の質しだいです。

現在のところ、ジャンク債と投資適格債の間のスプレッド(利回り格差)は新型コロナ前のタイトな水準で推移しており、ジャンク債の利回りは投資適格債を平均270bp上回っています。デフォルトが増加しインタレスト・カバレッジ・レシオに圧力がかかると、デコンプレッション、つまりハイイールド債と投資適格債の間のスプレッドの拡大が生じると当グループは予想しています。

当グループは慎重な姿勢を変えておらず、質の高い債券をジャンク債よりも好んでいます。投資適格社債は魅力的で、現在の平均利回りは5.1%と2008年以来の高水準近辺で推移しています。

【注目銘柄】
iShares Short Treasury Bond ETF
iShares 1-3 Year Treasury Bond ETF
iShares 7-10 Year Treasury Bond ETF
iShares 20+ Year Treasury Bond ETF
Vanguard Total Bond Market ETF

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