オプションのロール戦略を解説・第1部:基本の理解とロールの重要性

オプションのロール戦略を解説・第1部:基本の理解とロールの重要性

オプション取引 10 minutes to read
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コーエン・ホーレルベケ

オプション戦略責任者

サマリー:  サマリー:ロールとは、権利行使価格や満期日を変更することで、オプション取引を一からやり直すことなく柔軟に調整する方法です。この4部構成のガイドの第1部では、カバード・コールとキャッシュ・セキュアード・プットを使って、オフェンシブ(攻め)・ディフェンシブ(守り)なロールの実例を交えながら、基本的な考え方を紹介します。


1部:基本の理解とロールの重要性

このシリーズは、投資家やアクティブトレーダー向けに作成された「オプションのロール戦略」に関する4部構成のミニシリーズです。初心者から上級者まで、ロールのタイミングと方法を理解することで、リスク管理や柔軟性の向上、自信を持った対応が可能になります。
※本記事は第1部です。

オプションポジションが予想よりも早く、あるいは遅く動いていると感じたことはありませんか?これは初心者にも経験者にもよくある状況です。取引はまだ有効ですが、タイミングや価格、見通しが変わってしまった。そんなときに役立つのが「ロール」です。

ロールとは、現在のオプションを決済し、同じ銘柄で満期日や権利行使価格が異なる新しいオプションに置き換えることです。重要な会議の予定を変更するようなもので、キャンセルするのではなく、状況に合わせて調整するイメージです。

この第1部では、初心者の視点からロールを解説します。ロールの仕組み、使う理由、そして実際の例として「カバード・コール」と「キャッシュ・セキュアード・プット」を紹介します。実践的で親しみやすく、投資家が直面する現実的な判断に基づいた内容です。

ロールを新しい視点で捉える

例えば、数ヶ月前に旅行を予約したとします。当時は日程や目的地に納得していましたが、旅行が近づくにつれて天候や予定、旅行プランが変わってしまったとします。そこで、旅行をキャンセルするのではなく、日程を変更して今の状況に合った形にする。これがオプションにおけるロールの基本的な考え方です。

実例:キャッシュ・セキュアード・プット
あなたがABC社のプットオプション(権利行使価格95ドル)を売ったとします。強気のポジションで、株価が下がれば買っても良いと考えていますが、理想の展開としてはプレミアムを得て、割り当ては受けないことです。

株価が少し下がり、ポジションがやや危険に感じられるようになったとき、柔軟性を保ちたいと考えます。そこでロールを行います。現在のプットを買い戻し、権利行使価格を少し下げ、満期日を延長した新しいプットを売るのです。同じ戦略ですが、より現状に即した設定になります。

ロールとは何か?

  • 現在のオプション取引を決済する
  • 同じ銘柄で満期日または権利行使価格が異なる新しいオプションを建てる

    プラットフォームでは「ロール」機能を使って
    1ステップで行えますが、実際には2つの取引です。

ロールで調整できる3つの要素

ロールを行うことで、具体的には以下を調整することができます。

  • 時間:満期日を延長して、取引をより長く継続させる
  • 権利行使価格:現在の株価に合わせて権利行使価格を調整する
  • 取引数量:現在の数量を維持するか、リスクを減らすか、スプレッドの幅を調整する(初心者は現在の保有数を固定するのが一般的です

  これらの要素を変更することにより、見通しに合わせた調整やリスク管理が可能になります。

重要な注意点:

本記事で紹介する戦略や例は教育目的であり、参考として提供するものです。実際に実行する際は、ご自身の財務状況、リスク許容度、投資目的を十分に考慮し、慎重に判断してください。株式市場への投資にはリスクが伴いますので、情報に基づいた判断を行いましょう。

実例:カバード・コールのロール

ABC社の株を100ドルで100株購入したとします。収益を得るため、105ドルの権利行使価格で3週間後に満期を迎えるコールオプションを売り、1.50ドルのプレミアムを得ました。

その後、株価が104ドルまで上昇。コールはほぼイン・ザ・マネーです。株を気に入っていて、さらに上昇の余地を残したいと考え、権利行使価格を110ドルに、満期を1ヶ月延長してロールします。追加で0.80ドルのプレミアムを得ます。

これは「オフェンシブ(攻め)のロール」です。状況が良好で、より多くのチャンスを得るために調整しています。

逆に、株価が95ドルまで下落した場合、コールは大きくアウト・オブ・ザ・マネーとなり、プレミアムもほとんど残っていません。そこで、権利行使価格を102ドルに、満期を1ヶ月延長してロールします。0.60ドルの新たなプレミアムを得て、損益分岐点を改善します。

これは「ディフェンシブ(守り)なロール」です。計画通りに進まなかった場合でも、冷静に調整してポジションを改善する方法です。

実例:キャッシュ・セキュアード・プットのロール

ABC社の95ドルのプットを売り、21日後に満期を迎える契約で2.00ドルのプレミアムを得たとします。割り当てられれば93ドルで株を買うことになります。

その後、株価が104ドルまで上昇。プットの価値はほとんどなくなりました。そこで、95ドルのプットを決済し、100ドルのプットを翌月満期で売り、0.70ドルのプレミアムを得ます。エントリーポイントが上がり、収益も増えます。

これも「オフェンシブ(攻め)のロール」です。株価の強さを活かして、より良いポジションに再設定しています。

逆に、株価が92ドルまで下落した場合、プレッシャーを感じるかもしれません。そこで、権利行使価格を90ドルに、満期を1ヶ月延長してロールします。0.60ドルのプレミアムを得て、損益分岐点を下げ、ポジションに安定性を持たせます。

キャッシュ・セキュアード・プットは安定した市場で効果的ですが、ロールを活用することで、変動の激しい局面でも冷静かつ意図的に対応できます。

オフェンシブ・ロールとディフェンシブ・ロールの違い

ロールの仕組み自体は、取引が順調な場合でもそうでない場合でも同じです。重要なのは「意図」の違いです。

 

  • オフェンシブ・ロールは、良好なポジションをさらに発展させるために使います。より多くの時間、より多くのプレミアム、あるいはより良いポジショニングを目指して、強さを活かす調整です。
  • ディフェンシブ・ロールは、リスクを軽減したり、損益分岐点を改善したり、ストレスを増やすことなくポジションを維持するために使います。

ロールは自動的に行うべきものではありません。不安だからといってボタンを押すようなものではなく、取引の新しい形を理解し、「今、自分が何を求めているか」に基づいて選択するべきものです。

まとめ

ロールは、文字通りそして比喩的にも「選択肢」を与えてくれます。一からやり直すことなく、ポジションを継続的に管理できる実践的な方法です。リスクを調整したり、期間を延長したり、収益を得るチャンスをもう一度作ることもできます。

2部では
この基礎をもとに、バーティカル・スプレッドやアイアン・コンドルなど、より複雑な戦略におけるロールの活用方法を探っていきます。調整によってリスクとリターンがどのように変化するかを具体的にご紹介します。


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