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Hardyのマクロの見通し:トランプ2.0市場時代のルール#3

概況 5 minutes to read
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ジョン・ハーディ

グローバルマクロ戦略責任者

サマリー:  シリーズの第3回目では、ルール#1で部分的に取り上げられているように、対外不均衡の縮小を目指し、外国資本に対してあまり友好的でないトランプ大統領の経済政策により予想される米ドルの下落について考察します。この変化は、米国資産への世界的な依存度の低下と、集中した米国株式市場の調整につながる可能性があります。さらに、財政の混乱後の後遺症、関税の混乱、消費者心理の低迷などから生じる恐れのある米国の潜在的な景気後退リスクがドル安の一因となり、米ドルが大幅に下落する可能性があります。


当記事はマーケティング用の資料です。

トランプ2.0市場時代に関するシリーズの第3回では、最初の2つの記事で取り上げたテーマに基づいて、ルール#3: 米ドルは今後数か月で大幅に下落するリスクがあります、について掘り下げます。最初の記事では、米国の政策の不安定性と、トランプ大統領のスタイルから生じる時折混沌としたやり取りにもかかわらず、その真剣な意図について議論しました。次に、2番目の記事では、トランプの政策立案だけでなく、この記事の主題である米ドルのリスクという観点からも、非常に集中した米国株式市場に関連するリスクを概説しました。では、これらすべての要因が世界の金融情勢に大きな変化をもたらし、米ドルに大きく依存するグローバル・ポートフォリオのリターンにとって重要な要素である米ドルの見通しにどのような影響を与えるかを探ってみましょう。

チャート:米ドル(USD)インデックス
ドルインデックス(米ドル指数)は、米ドルの広範な通貨に対する尺度であり、ユーロと日本円に対する米ドルの強さに大きく依存しています。最近では、トランプ政権時代の混乱により、99.0を下回る3年ぶりの安値にまで低下し、株式や米国債などの米国資産に対する外国人投資家のセンチメントを悪化させています。今年から来年初めにかけて下落が続けば、米ドルは2021年と、2018年の短い期間を除いての過去10年間で最低の水準である90まで下落する可能性があります。

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出所: サクソバンクグループ

米ドル:グローバルなダイナミクス(集団力学)の変化
米ドルは長い間、世界の貿易と金融の柱でしたが、トランプ2.0(米トランプ政権の二期目)の時代は米ドルの支配に挑戦する態勢を整えています。最初の2つの記事で論じたように、トランプ大統領の経済的な力を用いて他国に影響を与えようとする政治的手腕は、対外不均衡を減らすことを優先しており、それが世界貿易や米国の資産の価値貯蔵庫としての米ドルの使用の減少につながる可能性があります。この変化は、貿易に対する米政権の一般的な姿勢により動かされているというだけでなく、例えば、外国投資への課税を可能とする新しい米下院の法案に記載された条項に代表されるような、外国資本の扱い方の変化という新たに憂慮すべき兆候であるといえます。

世界の資本フローへの影響
歴史的に、世界の経常収支の大幅な黒字(米国から見れば赤字)が米国の資産にリサイクルされ、米ドルの強さを支えてきました。しかし、トランプ大統領の政策が外国投資を抑止する可能性があるため、政府系ファンドや大口投資家は、米国市場や米国債への過剰な配分を避けて分散化を模索するかもしれません。この傾向は、投資家が(米ドルに代わる)価値の代替的な貯蔵庫を探すこととなるため、すでに金価格の大幅な上昇に貢献しています。

米国株式市場の調整によるリスク
米国株式市場の割高なバリュエーションに関する当シリーズの2番目の記事で強調したように、米国株式市場へ資本が過度に集中している現在の状況は、ドルに別のリスクをもたらします。AI関連企業の成長の減速によるものであれ、他国からの報復税制によるものであれ、米国株式の大幅な調整が進めば、米国市場への資本流入が減少する可能性があります。このような調整は、投資家が米国資産へのエクスポージャーを再評価するであろうことから、当然のことながらドル安につながるでしょう。

経済の逆風と景気後退リスク
ドルの強さに対する最も差し迫った脅威は、米国の景気後退のリスクです。イーロンマスク氏が率いていた「DOGE」(米政府効率化省)による大規模な財政混乱を回避したものの、以下のような、いくつかの要因が依然として経済に重くのしかかる可能性があります。

  1. 財政の混乱後の後遺症:バイデン前大統領が選挙のチャンスを増やすために2025年度予算教書で発表していた、今年度(2024年10月~2025年9月)の支出の前倒しにより、トランプ政権下での財政の衝動は弱まっています。これは成長の可能性を制約します。
  2. 関税の混乱:関税は経済に対する税金として機能し、ほとんどの関税が交渉のために停止されているにもかかわらず、多くの関税が現在有効になっています(例えば、自動車、全ての中国からの輸入品)。いかなる税金も全体的な需要を減少させ、同様に、今年初めにみられた関税法案の発効前の先制的な(駆け込み)購入により。将来の需要の一部が共食いされています。関税率の水準をめぐる不確実性が続いているため、関税に関して我々がどこに着地するのか不明であることから、企業は投資や採用の決定を遅らせています。
  3. 消費者心理の低迷:米ミシガン大学の消費者信頼感調査などの調査では、消費者の期待が歴史的に低く、経済見通しがさらに悪化していることが示されています。
  4. 労働市場の懸念:米JOLTS求人労働移動調査で示された雇用の減少や、5月の米消費者信頼感調査(コンフェレンスボード)で明らかになった「就きにくい仕事」の部分がパンデミック後の高い水準にあることなど、雇用市場の弱体化の初期の兆候は、今後の潜在的な課題を示唆しています。
  5. 脆弱な個人消費:貯蓄率はパンデミック前の水準を下回っており、景気後退期の個人消費の脆弱性を示しています。
  6. 移民政策:トランプ大統領の移民受け入れの閉鎖は、労働力不足を悪化させ、経済成長に影響を与える可能性があります。

米ドルの下落を予測
これらの要因を考慮すると、米ドルは弱くなる可能性が高く、ドルインデックス(米ドル指数)は90(現在は99付近)に向かって下落する可能性があり、米ドル/円は120-125に下落し、ユーロ/米ドル(EURUSD)は今後6〜9か月で1.25以上に上昇する可能性があります。この変化は、トランプ2.0時代に進行中の広範な経済的および地政学的な変化を反映しています。

結論
この新しい状況を切り抜けていくにあたり、投資家は警戒と適応性を維持する必要があります。米ドル安は、政策、市場力学、世界の資本フロー、資産のバリュエーション(その多くが米ドルベース)の相互作用を理解することの重要性を強調しています。最近の米ドル安以前は、MSCIワールド・インデックスのうち、米国上場企業が占める時価総額の割合は70%をはるかに超えてピークに達し、過去数十年で最も高い水準となっていました。トランプ2.0の時代には、資産クラス間のボラティリティがポートフォリオ全体のリターンにどのような影響を与えるかを認識し、バランスの取れた視点を持ち、1つの籠に卵を入れすぎないように慎重に考え抜かれたポートフォリオ戦略を維持する必要があります。

来週か再来週のシリーズ最終回では、ルール#4とその投資家やトレーダーへの影響を探りますので、ご期待ください。

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