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「One Big, Beautiful Bill(大きく美しい法案)」が登場: 誰が勝ち、誰が負けるのか?

株式
Charu Chanana 400x400
チャル・チャナナ

チーフ・インベストメント・ストラテジスト

重要なポイント:

  • トランプ大統領の税制法案が下院を通過し、上院に向かう:3兆8,000億ドルの「One Big Beautiful Bill(大きく美しい法案)」には、抜本的な減税、社会支出の縮小、3兆ドル以上の追加の赤字歳出(国債発行)が含まれています。上院での採決は7月4日の休会前に行われる予定です。
  • 潜在的な勝者:防衛、サイバーセキュリティ、一部の一般消費財:ロッキード・マーティン(Lockheed Martin)やクラウドストライク(CrowdStrike)などの請負業者に利益をもたらす防衛および国土安全保障の資金調達が大幅に増加する可能性があります。一方、残業代やチップに対する減税はサービスセクターの消費をサポートします。
  • 潜在的な敗者:再生可能エネルギー、EV、ヘルスケア:クリーンエネルギー税額控除が廃止され、(電気自動車)EVに対するインセンティブが廃止され、メディケイドが8,000億ドル削減され、サンラン(Sunrun)、テスラ(Tesla)、ヒューマナ(Humana)などの株式に打撃を与える可能性があります。


注: 当記事はマーケティング用の資料です。

米国下院は、3兆8,000億ドルの税制・歳出パッケージを可決し、215対214の僅差で可決されました。ドナルド・トランプ大統領が「One Big Beautiful Bill」と呼んだこの法案は、広範な減税と社会支出の大幅な削減を組み合わせたもので、米国の財政政策の大きな転換点を示しています。

法案は現在、上院に移され、一部の共和党員は、特にメディケイドと事業税の減税をめぐる変更を推進すると予想されています。現在の形で成立すれば、この法案は連邦政府の優先事項を劇的に変えることになり、今後10年間で赤字を3兆ドル以上増加させ、気候、教育、医療から資源を防衛、化石燃料、法執行機関に向けることになります。

重要な法案の概要

  • 2025年末に期限が切れる予定だった(第一次トランプ政権に可決した)トランプ時代の減税を延長します。これは、今後10年間、個人および世帯の個人所得税率の引き下げが続くことを意味します。
  •  個人(単身者)および夫婦(既婚者)に対する州・地方税(SALT)控除上限を10,000ドルから40,000ドルに引き上げ、ニューヨーク州やカリフォルニア州などの高税率州の納税者に利益をもたらします。500,000ドル以上を稼いだ人に対する控除は段階的に廃止されます。
  • 住宅用ソーラーおよびバッテリー貯蔵を含むほとんどのクリーンエネルギー税額控除を終了し、プロジェクトの適格性についての期限を前倒しします。
  • メディケイド(Medicaid:米国連邦政府と州が共同で負担し、州が運営する低所得者向けの医療保険制度)とフードスタンプ(米国の低所得者向け食糧支援制度)の資金を数千億ドル削減し、2026年12月からメディケイドの受給資格のための労働要件を効率化します。
  • 2025年以降、7,500ドルの連邦EV税額控除を廃止し、年間250ドルのEV道路料金を課します。
  • 米国物価連動債(TIPS)に対して年間インフレ調整課税がされるため、課税対象のポートフォリオにとって魅力的ではなくなります。
  • キャピタルゲイン税率は変更されませんが、他の(非課税の投資や特別税制控除など税金逃れの手段である)タックスシェルターや投資控除に関する規則が強化されます。
  • 軍事予算を1,500億ドル増額し、国境の壁への資金提供や国外追放活動の拡大など、移民法の執行と移民の取り締まりに1,750億ドルを追加。
  • サービス部門労働者の手取り賃金を引き上げることを目的として、残業代、自動車ローンの利息、およびチップを所得税から一時的に免除します。
  • ハーバード大学やイェール大学などの学校を対象に、1.4%であった私立大学の寄付金投資収入に対する税金を21%に増税します。
  • 学生ローンの免除をより厳しい返済条件に置き換えます。
  • 移民による海外への資金移動(送金)に新たな税金を適用します。

この措置は、保守派からは成長を促進する税制の見直しとして賞賛され、批評家からは、富裕層に利益をもたらしながら低所得世帯に負担を転嫁する「逆のロビンフッド」と非難されています。


以下のセクションでは、この法案の影響をセクターごとに分析し、どの業界が恩恵を受ける可能性が高いか、どの業界が深刻な逆風に直面しているかを強調します。

セクターへの影響:誰が勝ち、誰が負けるか?

ムーディーズ(Moody’s)はすでに財政指標の悪化により米国の信用見通しを下方修正しており、この法案は、国防・治安取り締まり費用の増加から恩恵を受ける可能性のあるセクターと、医療、再生可能エネルギー、所得に敏感な需要にさらされているセクターとの間の格差を増幅させることになるとみられています。

勝者となる可能性の高いセクター

防衛・航空宇宙

この法案は、米国防総省の資金を1,500億ドル増やし、軍備品の調達、サイバーセキュリティ、機器の近代化の大幅な拡大と促進を示しています。また、「ゴールデンドーム(Golden Dome)」ミサイル防衛システムに割り当てられた250億ドルも含まれています。

この増加により、ロッキード・マーティン(Lockheed Martin)、パランティア(Palantir)、ノースロップ・グラマン(Northrop Grumman)などの米国の防衛請負業者全体で新たな契約フローが促進され、受注が強化されることが期待されています。

サイバーセキュリティと国土安全保障

移民と国土安全保障のための資金の1,750億ドルの増加には、デジタル監視、サイバーインフラ、国境警備のアップグレードが含まれます。

サイバーセキュリティ企業や、クラウドストライク・ホールディングス(Crowdstrike)、フォーティネット(Fortinet)、パロ・アルト・ネットワークス(Palo Alto)などの政府系IT請負業者は、公共部門の需要の高まりから利益を得る立場にあります。

一般消費財

残業代やチップ所得の所得控除は、低・中所得者層の短期的な所得拡大を目的としています。

これは、特にサービス業を中心とする産業において、周縁の追加所得の部分で消費者支出を支える可能性があります。

敗者となる可能性の高いセクター

再生可能エネルギー

住宅用ソーラーおよびバッテリー貯蔵関連サービスに対する税額控除は、2025年までに廃止されます。商業用のプロジェクトは、既存のインセンティブの適用資格を得るためには、制定から60日以内に開始する必要があります。

この政策転換は、プロジェクトの実行可能性を損ない、クリーンエネルギーへの移行の勢いを損ないます。サンラン(Sunrun)、エンフェーズ・エナジー(Enphase Energy)、ソーラーエッジテクノロジー(SolarEdge Technologies)、ファーストソーラー(First Solar)などの銘柄は、このニュースを受けて大幅に急落しました。

電気自動車(EV)

7,500ドルのEV税額控除は2025年以降に廃止されます。新たに、年間250ドルのEV道路修理料金が導入されました。米環境保護庁(EPA)はカーボン(CO₂)クレジットを要求しなくなり、上院はカリフォルニア州大気資源局(CARB)と提携する州がガソリン車を禁止するのを阻止することを可決しました。

補助金の喪失と規制の逆転が重なり、米国のEV普及が脅かされ、テスラ(Tesla)の国内での優位性が損なわれています。

医療(ヘルスケア)

メディケイド(Medicaid)の削減額は8,000億ドルを超え、新たな労働要件は2026年に前倒しされます。この法案は、他のセーフティネット提供のための医療プログラムも削減します。

保険会社や、ヒューマナ(Humana)、センティーン(Centene)、モリナ・ヘルスケア(Molina Helathcare)、エレバンス・ヘルス(Elevance Health)など、事業がメディケイド(Medicaid)に大きく関与している企業に医療サービスを提供する企業は、利益率の圧縮とボラティリティの増加に直面しています。

農業

農業支援プログラムへの2,380億ドルの削減は、農村部への補助金、コモディティ支援、および農場開発を対象としています。

アグリビジネスでは、キャッシュフロー支援の縮小と政策リスクの増加が見られ、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(Archer Daniels Midland)、バンジ(Bunge)などの農産物関連銘柄に影響を与える可能性があります。

教育と大学

大規模な私立大学は、今後寄付金の投資から得られる収入に対して、21%の税金を支払う必要があります。これは1.4%からの増税になります。連邦政府の教育資金は3,490億ドル削減されています。

高等教育機関は、予算の逼迫と連邦政府による支援金の利用可能性の低下に直面する可能性があります。

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