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ミューチュアルファンドは、複数の投資家から収集してプールされた資金を株式、債券、デリバティブをはじめとする他の資産など、多様な証券に投資するビークルです。通常、プロのポートフォリオマネージャーによって積極的に運用されます。
標準的なミューチュアルファンドは、数十から数百種類の商品で構成されます。こうした幅広い資産構成により、一貫性のある体系的な形でリスクを分散できます。
ミューチュアルファンドの運営形態は、個人投資家が持分を保有する投資会社と似ています。ミューチュアルファンドは、「マンデート」と呼ばれる規則一式によっても管理され、これによりファンドマネージャーが実行可能な投資が決まります。
このマンデートは、資産クラスまたは商品、業種、通貨あるいは戦略の組み合わせに基づいて規定される場合があります。マンデートが策定されたら、ミューチュアルファンドのマネージャーはファンドの資金をその基準に適した資産に投資します。
例を挙げましょう。
資本1万ユーロを新興市場に投資しようと考える投資家が10人いるとします。個別に投資するとしたら、それぞれが独自の分析、投資ポートフォリオ候補の特定、1万ユーロの資本での参入必要額の交渉を行う必要があるでしょう。
ところが、全員の資金をプールすることで、投資家たちは10倍の資金でレバレッジを交渉できます。分析と選別プロセスはプロのミューチュアルファンドマネージャーが代行し、利益のすり合わせを徹底します。
投資家がこのように協力しあう場合、資金が合算されることで投資先がより幅広い範囲に分散され、保有資産のバランスが取れたポートフォリオができあがります。
ミューチュアルファンドの定義は多くの国で異なるため、投資家が混乱するのも無理はありません。いくつかの主要国・地域での呼称を以下に挙げますので、参考にしてください。
ミューチュアルファンド(または投資信託)に投資する場合、選択肢があまりに豊富なため、投資目標を達成するにはどの点に注目したらよいか判断しがたいことがあります。
選択が簡単になるように、以下に考慮点をいくつか挙げます。
まずは、ミューチュアルファンドのマネージャーが投資可能な商品を定めた規則集です。マンデートと呼ばれるこうした規則ではさまざまな要素が取りあげられており、利用される商品の種類やファンドが特定領域に配分可能な額が例として挙げられます。例えば、「グローバル・エクイティ・ファンド」は全世界の債券でなく、株式に投資する必要があります。
投資する資産クラスも考慮する必要があります。株式のみに特化するのか、それとも債券、現金、オルタナティブ(代替)資産も含むのかを検討します。オルタナティブ(代替)資産には、風力発電から森林、道路建設などのインフラプロジェクトまで、伝統的な取引所で取引されないあらゆる資産が含まれます。
地域は別の重要な考慮点です。ミューチュアルファンドの中には、東南アジア、北米など、特定の地域をターゲットとするものもあれば、インド、中国、英国など、個別の国に焦点を当てたものもあります。特定国の単体株価指数のみを対象とするものもあります。米国のS&P 500やNASDAQ 100、英国のFTSE 100はその代表格と言えます。このように対象を絞ることで、かなりの調査が必要となる領域にも投資できるようになります。
最後の考慮点はトレンドとテーマです。例えば、バイオテクや人工知能といった特定のトレンド、倫理面で定評ある企業を支援するといったテーマが考えられます。不動産、ロボット工学など関心のある業種がどのようなものであれ、投資家の価値観や興味と一致するミューチュアルファンドはきっとあります。
上場取引信託(通称「ETF」)は、複数の証券がまとめられておりポートフォリオを分散できる点で、ミューチュアルファンドと似ていますが、
相違点もあります。以下の3つはその主なものです。
ミューチュアルファンドは、複数の投資家が拠出するプール資金をまとめて投資するため、通常の株式売買と取引方法が異なります。
ミューチュアルファンドは個別株、債券、現金保有高、その他の投資など、複数の資産で構成されるのが通例です。各構成要素の価値はすべて、毎日所定の時間に1度のみ計算されるため、各投資家の保有持分の額面は、取引日中は変動しません。
投資家はミューチュアルファンドに投資することである金額の拠出を確約したことになります。その額はそのファンドの価値を次回計算するときに投資されます。ファンドの価値は、株式、債券、現金などの基礎となるあらゆる資産の価値合計額を表します。
例えば、1,000万ユーロのミューチュアルファンドに投資家が5,000ユーロ拠出した場合、ファンドの価値は1,000万5,000ユーロに増え、投資家の持分割合は0.05%と計算されます。
新規投資家がミューチュアルファンドを解約した別の投資家から単純に持分を引き継ぐ場合もあります。いずれの場合もミューチュアルファンドの持分とはポートフォリオ全体に占める持分の割合を指します。集団で投資することで、個別投資家が単独で可能な範囲より投資先を広げ、リスクを分散できます。
ミューチュアルファンドの保有持分を売却する場合は、逆のプロセスが実行され、「売却」注文を出すと、その日の終わりまでにミューチュアルファンドの持分が換金されます。換金された資金は口座に送金されます。
ミューチュアルファンドの売買では、1日中チャートを監視することに貴重な時間を費やすことなく、ポートフォリオの分散を図ることができます。
ミューチュアルファンドへの投資には、有益なメリットがいくつかあります。そのうち上位5つを以下に取りあげます。
ミューチュアルファンドは投資先をすぐ分散でき、リスク調整済みリターンの改善に役立ちます。ミューチュアルファンドに投資することで、ポートフォリオの範囲はさまざまな業種や地域にわたる株式や債券など多様な商品に広がります。ポートフォリオを分散することは、個別株式の所有より低リスクと通常みなされます。複数の資産にリスクが分散されるためです。
ミューチュアルファンドでは、比較的低コストで広い投資範囲にアクセスできます。多くの場合、個別銘柄の売買を頻繁に行う場合より手数料と取引料金は低く抑えられるため、長期的に見るとリターンの目減り幅が小さくなります。ただし、コストはミューチュアルファンドによって変動する可能性があるため、各ファンドの具体的な付随コストを確認することが重要です。
ミューチュアルファンドに投資すると、ポートフォリオはプロのファンドマネージャーの専門知識やノウハウの恩恵を受けることができます。マネージャーは企業を評価し、市場を監視して、情報に基づく意思決定によりパフォーマンスの最適化とリスク管理に貢献します。これによりプロの厳しい監視の下で一貫した投資運用が徹底されます。
投資先が分散され、よくバランスの取れたポートフォリオを自力で組む作業には多くの時間と専門知識が必要です。ミューチュアルファンドなら、プロのファンドマネージャーが調査、ポートフォリオ管理、リスク管理を投資家のために代行します。その結果、投資家は優先事項に集中しつつ、ポートフォリオの徹底的な運用というメリットも享受できます。
ミューチュアルファンドは、個人投資家はアクセスできない場合のあるニッチな資産クラスを含めて、幅広い投資機会の扉を開けます。風力発電所、森林、公共インフラ投資といったオルタナティブ(代替)資産のような領域も投資先になり得ます。これらの選択肢は、異なる景気サイクルにわたって分散を強化する機会となり、投資家の興味、価値観、目標と一致するポートフォリオを組むことができます。
こうした長所に加え、モーニングスターなどの独立系プロバイダーによる格付けが伴うことも多く、リスク調整済み投資利益率を中心とする過去のパフォーマンスデータを類似ファンドと比較して評価するのに役立てることができます。
ミューチュアルファンドは個別株と比べて大きな投資メリットがありますが、投資前に検討すべきデメリットもいくつかあります。
ミューチュアルファンドに投資する場合、資産の選択、購入、売却に関する裁量権を放棄し、ファンドマネージャーに委ねることになりますが、マネージャーの決断が必ずしも投資家の好みと一致するとは限りません。投資家は保有資産に関する意見があっても、ミューチュアルファンドが選ぶ投資先に対して発言権を持ちません。
ミューチュアルファンドが保有資産と取引活動をリアルタイムに開示することはありません。保有資産については、通常は、60~90日あるいはそれ以上遅れて報告されます。そのため、自分の資金がどのように投資されているかをある時点で把握することはできません。
ミューチュアルファンドの目標はリターン最適化とリスク管理にありますが、市場全体より高い利益率をあげたり、厳選された個別株ポートフォリオに匹敵するリターンをあげたりするという保証はありません。ミューチュアルファンドのマネージャーが他の市場参加者と同じ様に、判断ミスをしたり、機会を見逃したりする可能性があります。投資前に必ず各ファンドを注意深く評価しましょう。
大半の市場では、ミューチュアルファンドが取引日に売買されるのは市場がひけてから1度のみです。そのため、急激な値動きにすばやく反応することはほとんどできません。
ミューチュアルファンドには個別株と比べて顕著なメリットがありますが、どちらもポートフォリオに含めた方がなお賢明と言えます。どちらか一方のみでなく、投資の経験度や費やせる時間、最終目標といった投資家個人の優先事項に応じて選択することが望まれます。
サクソバンク証券では、投資家がさらされる可能性のあるリスクが常にできるだけガラス張りとなるよう努めています。
ミューチュアルファンドは一般的に、投資先の分散が市場リスク低下に寄与する投資機会とみなされています。ただし、以下のように、検討すべきリスクもいくつかあります。
ミューチュアルファンドには市場全般の変動による値下がりリスクが常に伴います。相場の潜在的上昇と下落は、原資産である証券価格に連動するため、ミューチュアルファンドの価値に反映されます。
中古車を売ろうとしても市場に買い手がほとんどいないとしましょう。価格を下げるか、買い手が見つかるまで長い間待つ必要があるかもしれません。これは流動性リスクの一例であり、価値を損なうことなく特定の資産をすばやく売却するのが困難な場合に発生します。このリスクは流動性の低い資産に投資するミューチュアルファンドにも影響する可能性があります。例えば、エキゾチック投資を保有するミューチュアルファンドは割引価格で売却するか、希望価格を支払う用意のある買い手が見つかるまで待つ必要があります。資産の買い値と売り値の差額はスプレッドと呼ばれ、通常、非流動的資産では流動的な資産より大きくなります。
ミューチュアルファンドには固有のコストがかかる場合があります。これはファンドによって大きく変わります。こうしたコストはファンドの長期的なリターンに影響する可能性があり、コストが高いほど、影響度は大きくなります。
ミューチュアルファンドの種類によっては、通貨リスク、金利リスク、信用リスク、地政学リスクなどの追加リスクが発生することがあります。
ミューチュアルファンドに投資する際、プロのポートフォリオマネージャーが投資家の資金を運用します。マネージャーは投資配分方法に関して情報に基づき判断を下します。こうした高度なポートフォリオ運営は、自力で資金運用する時間も専門知識も持たない投資家にとって大きなメリットになり得ます。
ミューチュアルファンドは通常幅広い証券に投資します。このように投資先の分散はリスク軽減に貢献します。一部の投資先のパフォーマンスが振るわなくても他の投資先の好調なパフォーマンスで相殺できる可能性があるためです。ポートフォリオのリスク軽減は、投資資金の配分先を分散することで達成され、ほとんどのファンドは関心領域に応じて、数種類から数百種類に及ぶ証券に投資します。
ミューチュアルファンドは簡単に購入でき、多種多様な発行会社がさまざまなファンドを扱っています。その多くは類似するマンデートで運営されています。こうしたアクセスの手軽さは、業界内の競争を激化させていますが、投資家には選択肢の拡充や競争による価格低下圧力といったメリットをもたらします。
ミューチュアルファンドは通常、取引日終了時に1度だけ値付けされます。その日に持分を購入するすべての投資家が同じ価格を支払うわけです。さらに、ほとんどのミューチュアルファンドは必要最小額が低く、資産規模の大小を問わず幅広い層にとって手頃でアクセスしやすい投資商品となっています。
配当を再投資可能な点は、多くの投資家がミューチュアルファンドを好むもう1つの理由です。配当やその他の金利所得が宣言されると、ミューチュアルファンドの追加持分の購入に利用できるため、長期的に投資拡大に役立ちます。
次は、ミューチュアルファンドに関連して発生する可能性のある追加コストや手数料について説明しましょう。
ミューチュアルファンドにはさまざまなコストがありますが、考慮すべき主なコストは継続的に発生するものです。ミューチュアルファンドの運営にかかる年額料金には、運営費、管理費、信託報酬が含まれます。経常費用はミューチュアルファンドの資産から控除され、純資産額(NAV)に反映されます。
ミューチュアルファンドは複数の要因の影響を受けます。全般的な市場パフォーマンス、経済指標、投資家センチメントなどの市場の状況、ファンドが保有する原資産(証券、代替資産、デリバティブなど)のパフォーマンスはその代表例です。
ミューチュアルファンドの発行会社が計算する価格(純資産額、略してNAV)は、通常、すべての原資産商品の価値を発行ユニット数で除算して計算されます。NAVは毎日計算されるのが通例ですが、週に1度または月に1度など、計算頻度が少ないものもあります。
ミューチュアルファンドにはいくつか種類があり、主なものは以下のとおりです。
ミューチュアルファンドのKID(重要情報書類)を読むと、ミューチュアルファンドの選定に役立ちます。KIDには投資に関する基本情報が掲載されています。例えば、投資目的、付随コスト・料金、過去のパフォーマンス、その他の主な特徴を知ることができます。
配当は企業利益に占める投資家の持分です。配当の支払いがある証券や利付き証券を所有するミューチュアルファンドは、配当などによるキャッシュフローをファンドの投資家に間接的に渡します。企業は決算内容に基づき配当額を承認します。原資産証券に基づき配分される金銭は、原則として、ミューチュアルファンドの合計純資産に追加されます。
配当は、企業利益の一部でもあります。財務業績が好調な企業は、利益の一部を配当の形で株主に移転するのが通例です。各株主は保有株式に応じて一定額を受け取ります。
配当利回りの高いミューチュアルファンドでは、この所得が合計リターンに占める割合はかなり高率になる可能性があります。配当支払い頻度はミューチュアルファンドが設定するため、ファンドの受領配当と投資家への支払い配当がきっかり1:1になるとは限りません。
ミューチュアルファンドの中には投資家への支払い額を累積する(配当無払い)場合もあり、原資産証券から派生するあらゆる種類の所得は、基本的に再投資に回されます。
ほかに、INCまたはDISTという分類もあります。この略語はミューチュアルファンドが所得や配当を投資家に分配する方法に通常関連します。こうした所得はファンドの原資産価値のパススルーである場合もありますが、利益の売却部分を通じて、投資家に支払われる実際のリターン部分である可能性もあります。
資金は受領されると、現金またはきわめて流動的な低リスクの債務証書(通称「現金等価物」)として保持されます。この追加現金により、運用資産残高(AUM)が増加し、配当が加算されるため純資産額(NAV)も増加します。
株式配当は、通常、価格下落を招くため、配当の受領はミューチュアルファンドの価値に影響しません。そこで、ミューチュアルファンドマネージャーは投資好機を見つけると、運用残高を拡大させるために配当支払い額も投資に回します。
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