冬の到来  冬の到来  冬の到来 

冬の到来

スティーン・ヤコブセン

最高投資責任者(CIO)

サマリー:  中央銀行が相次いで金融引き締めを実施し、金融市場に冬が到来しています。冬眠明けの市場はどうなるのでしょうか。


今回の第4四半期予想のタイトルを「ゲーム・オブ・スローンズ」からの引用と考える若い読者には残念かもしれませんが、これは1970年代の映画「チャンス」(原題:Being There)からの引用です。この映画では、ピーター・セラーズがチョンシー・ガーデナーという庭師を演じるのですが、彼がした庭や季節に関する話がマクロ経済や政治の話の暗喩と捉えられ、彼は大統領顧問としてウォール街にセンセーションを巻き起こします。彼の発言は以下の通りでした。「庭での成長には季節があります。まず春と夏がやってきますが、その後には秋と冬があります」   

今年もマーケットに冬が到来します。暗号資産市場には昨年既に冬が訪れ、2021年11月のFRBの政策転換以来、長く続いています。株式市場も、今年春に一時的に雪解けを迎えましたが、6月16日のFOMC後にわずか数か月の晴天の日々が続いただけで、それ以外はほぼ冬でした。6月16日のFOMCでは9.75%という大幅な利上げが実施され、FRBの積極的な利上げサイクルが経済に与えるマイナスの影響が懸念されたため、市場は利上げのピークが早期に訪れることを期待しました。 

当社は2020年初頭から、インフレは根強く続くと主張してきました。この見解は現在も変わっていませんが、世界経済は早くも分岐点に近づいており、次の四半期において政策当局の「タカ派的姿勢がピークアウト」すればそこに到達したと言えるでしょう。 その分岐点に至る前には次の3つの状況を経なければなりません。 

第一に、世界の中央銀行は、インフレは一過性のもので今後は一定水準に抑えられると訴え続けるよりも、強硬なタカ派姿勢をとったほうがよいことに気づいています。第二に、米ドルは異常に強く、商品と製品の輸入価格の上昇を通じて世界の流動性を低下させ、実質成長率を低下させています。第三に、FRBはついにQT(量的引き締め)プログラムを本格化し、肥大したバランスシートを毎月最大950億ドル削減する予定です。このような3つの逆風が吹いていることから、第4四半期はボラティリティが上昇し、債券・株式市場には強い逆風が吹く可能性があります。  

投資家の関心は次に向かうでしょう。第4四半期にタカ派的姿勢がピークアウトするとしたら、その後はどうなるのかということです。その答えは、利回りの上昇によって株価バリュエーションマルチプルが調整されるという単純なシナリオではなく、市場が景気後退を織り込んだ価格決定を始める可能性があるということです。その後の景気後退を織り込んだ転換点は、エネルギー価格が、前述の3つの点とともにピークに達すると予想される12月となる可能性があります。 

世界経済に占めるエネルギーの割合は、9.5%から13%以上に上昇したと推定されています。これは、生産量やサービスの減少に伴う価格上昇など、どのように定義したとしても、GDPの6.5%の純減を意味します。この損失は、生産性の向上や実質金利の引き下げで補う必要があります。  

また、負債の膨張による経済の破綻を回避するために、実質金利を出来る限り低い水準に維持する必要があります。つまり、政策金利を大幅に上回るインフレが続くか、インフレを上回るスピードで利回りが低下するか、二通りの展開が考えられます。そのいずれになるのかが重要な問題です。 

米国と世界の金利はさらに50-70bp上昇する公算が大きく、インフレは高水準にとどまるか、徐々に低下するかのみであるため、その間はリスクオフの姿勢がとられる可能性が高いと思われます。しかし、当社が予想するようにタカ派姿勢がピークアウトし、引き締め政策のコストが、経済、労働市場、国債費(国債の債務返済費および利払費)の観点から許容不可能な水準となったために、政策当局がインフレとの戦いを終えた兆候が見られれば、市場はリスク資産の買いに走るでしょう。戦いは続きますが、チョンシー・ガーデナーの言葉を借りれば「春を迎える前に秋と冬を迎えなければならない」のです。  

冬を乗り切りましょう。 

スティーン・ヤコブセン 
最高投資責任者、サクソバンクグループ 

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