前週の市場総括と今後の展開

2025年5月19日 (2025年5月12日～19日の週の振り返り)

市場の概要

主なニュースと動向

市場は米中関税の大幅な緩和に反発しましたが、ムーディーズが米国債の格下げを行う中、慎重な姿勢で週を終えました。テクノロジーと贅沢品のセクターは、AIの開発と関税についての楽観的な見方に牽引されて当初急騰しましたが、マクロ経済データはまちまちで、投資家心理は慎重なままでした。ビットコインは、暗号資産関連株式のボラティリティにもかかわらず、過去最高水準を維持しました。ボラティリティを示す指標は著しく緩和され、経済の不確実性が迫っているにもかかわらず、市場の当面の不安が軽減されたことを示唆しています。

株式

• 米中貿易摩擦が緩和されたため、米国株は月曜日(5月12日)に急騰し、ナスダック(+4.35%)、S&P500(+3.26%)、ダウ(+2.81%)が上昇しました。テスラ（Tesla）(+6.8%)、アマゾン（Amazon）(+8.1%)、アップル（Apple）(+6.2%)が上昇しました(5月12日)。火曜日(5月13日)、半導体チップメーカーの株式はナスダックをさらに押し上げ、エヌビディア（Nvidia）は5.6%上昇しました。逆に、ユナイテッドヘルス・グループ（UnitedHealth）は、CEOの退任とガイダンス（業績見通し）に対する懸念により、17.8%急落しました。木曜日(5月15日)までに、市場はまちまちでした。GEはボーイング（Boeing）の取引に対する楽観的な見方で2.8%上昇しましたが、ユナイテッドヘルス・グループ（UnitedHealth）は規制上の懸念からさらに11%下落しました。
• 欧州では、月曜日(5月12日)、特にLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン（LVMH）(+7.5%)やケリング（Kering）(+6%)などの高級ブランドの株式が反発しました。水曜日(5月14日)までに、関税とマクロ経済の懸念の中で、高級品は急激に反転しました(LVMHは-2.2%、ロレアル（L'Oreal）は-3.3%)。
• 英国株式はまちまちの結果となりました。FTSE100は、企業業績の後退により週の初めに弱かった日にもかかわらず、ナショナルグリッド（National Grid）(+3%)とアストラゼネカ（AstraZeneca）に支えられ、金曜日(5月16日)には+0.57%と大幅に上昇しました。
• アジア市場は当初上昇しましたが、最終的には弱含みで終了しました。日本の日経平均は、GDPの低迷(前年比-0.7%)の影響を受けて、金曜日(5月16日)に-0.5%下落しました。

ボラティリティ

VIX指数は週を通して急落し、4月上旬以来の安値を記録し、5月16日の終値は17.24(-3.3%)でした。短期指標(１日VIX、９日VIX)は、ムーディーズの米国債の格下げにもかかわらず、当面の懸念が減少したことを反映して大幅に低下しました。

デジタル資産

ビットコインは、ボラティリティにもかかわらず、102,438ドル(5月16日)前後の高水準を維持し、106,500ドル付近で週次の記録的な終値となりました。イーサリアムはビットコインに密接に追随しましたが、コインベース・グローバル（Coinbase）(-7.2%)のサイバー攻撃による被害のニュースにより、5月16日に急激な引き下げに直面しました。暗号資産関連株はまちまちでしたが、コインベース・グローバル（Coinbase）(+9%)とサイファー・マイニング（CIFR）(+21.8%)は週末までに大幅にアウトパフォームしました。

債券

米国債利回りは変動し、10年債利回りが火曜日(5月13日)に主要な心理的な節目である4.50%に達し、週の初めに急上昇しました。ムーディーズによる米国債の格下げは、金曜日遅くに別の急騰を引き起こし、30年債利回りを一時的に再び5.0%に押し上げました。ドイツ10年国債利回りは、週末の動向を前に2.59%(5月16日)で取引を終えました。

商品

金価格は、安全資産としての需要が減少する中、週明けに下落しましたが、ムーディーズが米国債を格下げした後、特に反発し、約3,200米ドルで落ち着きました。原油価格は、地政学的な出来事や供給懸念を受けて不安定なままでしたが、主にレンジ内で推移し、66米ドル(5月13日)付近で取引されました。

通貨

米ドルは、関税緩和の楽観的な見方から当初は上昇しましたが、ムーディーズの格下げ後、大幅に下落しました。日本円は、日本のGDPデータが弱いことを受けて政策介入の可能性を示唆されたことから、145.00近辺(米ドル/円、5月16日)近辺で取引され、特に上昇しました。

主なポイント

• 米中関税の停戦は当初、株式を押し上げましたが、ムーディーズによる米国債の格下げ後、センチメントは緩和されました。
• VIX指数は、マクロ経済の不確実性が続いているにもかかわらず、大幅に低下しました。
• ビットコインは強力な機関投資家からの資金流入を維持し、過去最高の週間の終値を達成しました。
• 米国債利回りは、信用格下げの懸念から急上昇し、財政上の懸念が続いていることを浮き彫りにしました。
• コモディティは、金が格下げ後に上昇し、原油は不安定なままで、複雑なトレンドを示しました。

今週のイベント(2025年5月19日〜23日)

• 月曜日:米国の景気先行指数（４月）、トリップ・ドットコム（Trip.com）、ライアンエアー・ホールディングス（Ryanair）の決算発表。FRB副議長のジェファーソン（Jefferson）氏の講演。
• 火曜日:ホーム・デポ（Home Depot）、パロ・アルト・ネットワークス（Palo Alto Networks）、トール・ブラザーズ（Toll Brothers）による決算発表、複数のFRB高官による講演。
• 水曜日:TJXカンパニーズ（TJX）、ロウズ（Lowe's）、スノーフレイク（Snowflake）、ターゲット（Target）の収益。FRBのボウマン（Bowman）総裁の講演。
• 木曜日:米新規失業保険申請件数（05/11-05/17）、米中古住宅販売件数（４月）。インテュイット（Intuit）、ロス・ストアーズ（Ross Stores）、ラルフローレン（Ralph Lauren）による決算発表。
• 金曜日:米新築住宅販売件数（４月）、ブーズ・アレン・ハミルトン（Booz Allen Hamilton）の決算発表。

小売業の収益と住宅市場のデータは、消費者と経済の健全性に関する重要な洞察を提供し、FRBの講演者は金利政策の精査を行う中でガイダンスを提供します。