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スティーン・ヤコブセン
最高投資責任者(CIO, Saxo Bank A/S)
サマリー: 市場は、経済、インフレ、今後の政策対応が新しいパラダイムにシフトしていることを理解していません。中央銀行は、このインフレの勢いがクラッシュして厳しい不況に陥るまで、止まらない暴走列車を後ろから追いかけることしかできません。これはインフレによって実証されるでしょう。
2022年第3四半期のQuarterly Outlookでは、実際には年末まで見通して、私たちが経済、インフレとこれからの政策対応の新たなパラダイムにシフトしたことを、市場が理解していないことを主張します。インフレは、インフレの動力学が激しい景気後退への墜落をもたらすまで、中央銀行が後から追いかけることしかできない暴走列車であることが明らかになるでしょう。しかし、この最終的な景気後退は、ディスインフレと平静な状況への平均回帰が待っていることを意味しないと思われます。なぜなら、インフレは解消されないからであり、その主な推進力は、ディグローバリゼーションと、政策がレバレッジの引き上げと止まることのない経済の金融化を推し進め過ぎたことの結果としての、物理的世界での何十年にもわたる過少投資による供給サイドの弱点です。1980年代初期から40年以上にわたって、景気後退のたびに、その後の利回りの低下とますます大規模な政策的刺激が続き、最後の期間にはゼロおよびマイナスの政策金利が特徴となりましたが、さらに一層重要な特徴は、途方もない規模の無駄な投資を推進したマイナスの実質金利でした。現在では、より高いボラティリティとより高い基調的インフレを伴う新しいスーパーサイクルが始まっています。金融政策の役割が後退し、財政主導になることは、インフレがバグと同程度の特 徴になることを意味します。インフレは、政策立案者にとって、現在の過剰債務経済のデレバレッジを実現するための唯一の選択肢だからです。
株式では、市場がわずか半年の間に過去100年間で最大のセンチメントのシフトを経験したことを主張します。このシフトは、インフレが抑制されるまでひたすら金融引き締めに集中しなければならないことをFRBが遂に認識し、有名なFRBプットが窓の外に放り出されたことが市場で理解され始めた後に起こりました。経済の供給サイドが過少投資に陥ってきたという当社のマクロのテーマを考慮すると、株式の新たな状況は、物流、コモディティ、再生可能エネルギー、インフラおよび防衛などの有形資産に有利なものになると考えられます。エネルギーセクターは、今年の米国株式の唯一のプラスのセクターであり、株価指数における重要性が高まっていることから、当社は、環境・社会・ガバナンス(ESG)ファンドがその石油・ガス株式の大幅なアンダーウェイトによって危機に瀕する可能性があると予測します。その他には、コモディティ関連株に関する株式フォーカスの論考も取り上げ、さまざまなコモディティへのエクスポージャーをもたらす銘柄を挙げるとともに、グリーントランスフォーメーションのテーマの現在のリスクを指摘します。
物理的世界が追い付くことが不可能であることによるインフレリスクを当社が注視しているのに対して、当社のコモディティ見通しでは、金融政策の引き締めと昨年中の激しい価格上昇後の需要調整による景気後退の到来を市場が予想していることから、短期から中期ではコモディティにダウンサイドリスクの懸念があることを指摘する点が、興味深いと思われます。
しかし、長期的には、当社は、何十年にもわたる生産能力への過少投資と、よりカーボンニュートラルな未来に向けた金属集約的な推進の必要性が、コモディティを上昇のスーパーサイクルに留まらせると確信しています。
通貨では、FRBが今や「何かが壊れるまで」金融引き締め政策の継続を余儀なくされている状況で、米ドルの強気サイクルの中のどこに達しているかを評価します。他の中央銀行がFRBの政策引き締めに同調する、あるいはそれを超える可能性さえあると広く予想されているにもかかわらず、米ドルは、ハードランディングに向かっていることが明らかになるまではピークを付けず、反転しない可能性があります。
ユーロは、経済通貨同盟(EMU)の根本的な課題に起因する政策の断片化を回避しながら引き締めを試みるため、困難な状況にあります。
通貨では、日本円に関する論考も取り上げます。日銀は、日本国債の利回り上限を防衛するための介入を行うことでそのバランスシートのコントロールを失うことが確認されつつあるイールドカーブ・コントロール政策を強化しました。このことは、今年後半に市場の力と日本国内の実現インフレ率が許容不能な水準に達した場合には、日本円のボラティリティが爆発的に高まることを意味する可能性があります。
ECBは、ソブリンスプレッドを制御し続けるための新たな手段を第3四半期に発表する予定です。それはどうにかして可能かも知れませんが、ユーロ自体には何が起こるでしょうか。端的に述べると、ECBが引き締め政策で世界の他の中央銀行に後れを取り過ぎれば、ユーロ圏は再び危機領域に陥る可能性が十分にあります。しかしそれは、完全に否定的なことだとは限りません。2012年以降、危機が起こるたびに新たな制度改革が促され、それによってユーロ圏の枠組みが強化されてきました。今年後半はユーロ圏にとって決定的に重要になると思われます。
中国のゼロコロナ政策による同国経済の今年の不振は、一時的だと評価することができます。今回の中国に関する論考では、この冬から来年初めにかけての中国の前途が多難であるという判断を示します。中国は、ウイルスの無秩序な拡大を食い止めることを決意している一方で、相殺するために講じる刺激策は慎重なものに止まっていると思われるからです。しかし、中国経済を世界の工場の時代からハイテクの能力と自立性の向上に牽引される新たな「双循環」のパラダイムに転換するための同国の巨大なイニシアチブに注目すると、中国の長期的展望は順調だということができます。
今回の暗号通貨の論考では、ほぼすべての種類の高リスク資産を壊滅させた世界的な流動性の著しい縮小の下で、今年の暗号通貨市場が強い圧力にさらされていることを指摘します。暗号通貨のトレーダーから暗号通貨のサービスプロバイダーまで、暗号通貨市場のすべての部分が圧力を受けています。これが過剰なレバレッジの投機家を排除し、信頼性がなく、擁護できない暗号通貨サービスを明らかにすることで、業界の健全なクリーンアップになり得ると主張する人もいます。第3四半期を迎えて、暗号通貨は不安定な状況にあり、一般的なマクロ経済的センチメントの変化、規制と、機関による暗号化技術の採用におけるブレークスルーを待っています。
最後に、重要な資産、特に、米国株式市場が第2四半期に弱気市場の局面に入った後の長期米国債利回りとNasdaq-100、米ドルインデックスとブレント原油について、一連の長期的テクニカル分析も取り上げています。