コモディティ市場:底打ちか? コモディティ市場:底打ちか? コモディティ市場:底打ちか?

コモディティ市場:底打ちか?

オーレ・ハンセン

コモディティ戦略責任者(Saxo Group)

サマリー:  コモディティは再び市場で最注目のトピックになるのか、それともAIがその座を守るのか?


1年にわたり調整を続けるコモディティに反転の兆し

数ヵ月にわたり低迷が続いていたコモディティ・セクターは6月には幾分か反転し、第3四半期を堅調な足取りでスタートすることになりそうです。予想に基づくもの、事実に基づくものなど、複数の要因が急反発に寄与しました。特に注目されたのは、金利差の縮小を受けたドル安の再燃、石油輸出国機構(OPEC)による原油生産と価格への積極的な関与、未だ実現されてはいないものの、中国政府が景気刺激策を強化するという見通しですが、何よりも、いくつかの主要産地が熱波や乾燥気象に見舞われる中、秋にかけて食料品価格が上昇するリスクが浮上したことがコモディティ相場を押し上げました。

米国と欧州の景気後退懸念を背景に需要減の懸念が続いているにもかかわらず、サウジアラビアの単独減産、夏場の需要ピークに向けた精製マージンの上昇、投機的トレーダーや投資家の価格上昇に対する確信が過去10年間で最も低い水準にあることが、マクロ経済動向を受けた積極的な売りのリスクを軽減し、エネルギーセクターを下支えしています。また、熱波と乾燥気象が農産物セクター全体に懸念をもたらしている一方、世界中の発電所から冷房用の天然ガス需要が高まっています。

株式市場の急騰で代替投資の必要性が低下する一方、各国中央銀行はインフレ抑制を狙って利上げを継続したため、貴金属の上昇相場は第2四半期中に息切れしました。インフレ率はさらに低下する可能性がありますが、長期インフレ率が2%から2.5%の目標を大幅に上回って推移するリスクが高まっていると当社は見ています。加えて、株式バブルのリスク上昇、中央銀行の旺盛な需要、米連邦公開市場委員会(FOMC)の焦点の移行に伴い短期金利が最終的なピークを打つ見通しなどから、貴金属は今年後半にかけてさらに上昇すると予想します。

各セクターの最近の値動きを見る限り、コモディティ市場は底入れの兆しを見せており、現在の水準はすでに最悪の成長シナリオを織り込んでいると考えられます。米国の経済指標は、依然として経済活動がトレンド成長率を下回っていることを示していますが、景気後退の兆候は認められず、4月中旬に第1四半期の決算発表シーズンが始まって以来、特に欧州において業績予想が大幅に上方修正されています。しかし、ここからさらに上昇する可能性があるかどうかは、主に中国が追加の景気刺激策を実施し、原油から銅、鉄鉱石に至る主要コモディティの需要を支えることができるかどうかにかかっています。また、今後数週間にわたる北半球の天候と、それが農産物の生産に与える影響もカギとなります。

金の上昇は一服も、史上最高値更新は依然として射程圏内

11月以来の力強い価格上昇の後、金は一時的に史上最高値を更新したものの、第2四半期の大半は値固めに終始しました。最近の株式市場の上昇と米国の追加利上げ観測により金価格の支援となる金利がピークを打つタイミングの見通しが後ずれし、足元の投資家センチメントは悪化しています。金と銀については、今後発表される経済指標に注目が集まるため、短期的には1オンス=2,000ドルを下回る水準への更なる調整を予想しているものの、全般的には強気の見通しを維持しています。その要因としては以下が挙げられます。ドル安の継続、景気減速とそれによる現在の株高の息切れ、安全資産としての貴金属への新たな需要、中央銀行による継続的な需要が市場の下支えとなること、米国のインフレ率が高止まりし、米連邦準備制度理事会(FRB)が設定した長期目標2.5%に向かいつつあること(もし実現すれば、実質利回りを低下させ、金が再評価される可能性が高い)、世界の多極化による地政学的緊張の高まりなどです。さらに、銀は工業用金属の上昇からも恩恵を受け、金をアウトパフォームする可能性があります。総合的に、また前述の予想と想定に基づけば、金は年末までに2,100ドルを超え、史上最高値を更新する可能性があると見ています。

銅:土台作り

銅は第2四半期の大半を守勢に回りました。中国の景気回復が以前ほどコモディティ集約的ではなく、主要工業用金属の需要が急回復するとの予想が覆されました。しかし、6月に入り、中国の追加景気刺激策の見通しと、取引所が監視する倉庫の在庫が5カ月ぶりの低水準まで減少したことが、それまで銅についてショート寄りのポジションを組んでいたヘッジファンドのセンチメントを変えるきっかけとなりました。

中国の追加刺激策の有無にかかわらず、現在の銅の低迷は一時的なものだと考えています。今後数年間は「グリーントランスフォーメーション(GX:脱炭素社会の実現に向けた取り組みを通じた経済社会システム全体の変革)」というテーマが、脱炭素化に必要な金属、いわゆるグリーン・メタルに強力な追い風となるからです。その代表格である銅は、バッテリー、電動モーター、再生可能エネルギー発電、エネルギー貯蔵、送電網の更新に必要な最高の電気伝導性金属です。銅鉱山業者が、鉱石の品位低下、生産コストの上昇、気候変動、政府の介入、さらには銀行やファンドが提供する投資プールを縮小させるESG問題などに直面する中、生産見通しは厳しさを増しています。

高品位銅鉱石の価格は、現在の4ドルを下回る水準から、やがて上昇し始め、過去最高値を更新すると見られますが、それは世界的な成長見通しと中央銀行の政策スタンスが引き締めから緩和へと変わる年明け以降になる可能性があります。

原油:需要懸念がサウジの減産効果を相殺

世界経済の成長に対する懸念は、OPEC加盟国とロシアなど非加盟の主要産油国から成るOPECプラスが収益と市場シェアを犠牲にしてでも原油価格を下支えしようとする姿勢によって相殺されています。そのため、WTIとブレント原油の5月以降の横ばい傾向は、第3四半期に入っても継続する見込みです。価格は概ね直近の安値に近い水準にありますが、OPECや国際エネルギー機関(IEA)が予測するような力強い需要回復が実現しない恐れがあり、あと数カ月は厳しい状況が続く可能性も否定できません。後者は、OPECが減産を発表した直後にサウジアラビアが単独の減産を発表するという前例のない措置を取った理由である可能性があります。 

特に、サウジアラビアの単独減産によっても需要が回復しなかった場合、他の生産国に対する減産圧力が高まるため、今後数カ月はOPECにとって困難な時期となるかもしれません。今のところ、OPECの事実上のリーダーは、より深刻な調整の回避に役立つであろう価格下支えのシグナルを送ることに成功しており、最終的に需要が回復すれば価格上昇への道が開かれるとみています。

それまでは、ブレント原油は70ドル台から抜け出せないものの、四半期末に向けては心理的抵抗線である80ドル台を回復する可能性が高いでしょう。従って、年末に向けては、現在の70-80ドルから5-10ドル上昇した水準で取引されると予想します。

天候懸念の高まりで農作物生産には下方修正リスク

穀物セクターは、1年間の低迷を経て、砂糖、カカオ豆、コーヒー豆、オレンジジュースなど、既に定着していた主要ソフトコモディティ先物の上昇相場に加わりました。穀物セクターは、黒海から北欧、そして最近では米国までが季節外れの乾燥気象に見舞われるなど、北半球の主要生産地で干ばつがもたらす潜在的な被害が懸念されるなかで、息を吹き返しました。小麦、とうもろこし、大豆の主要3作物の作柄がすべて悪化していることを示す週次データが発表されており、降雨によって乾燥状態がすぐに回復しない限り、収穫期を前にした最終的な生産高に対する懸念が価格を下支えする可能性があります。

こうした動きは、市場がエルニーニョの再来による潜在的影響に厳戒態勢を敷いている時に起きており、 それはほとんどのエルニーニョが発生する1 ~2カ月前のことでした。米海洋大気庁(NOAA)のエルニーニョ/ラニーニャ予報局長は、エルニーニョが拡大する可能性があり、今後数カ月の間に強い現象が発生するリスクが高まると述べていました。エルニーニョは、オーストラリアに乾燥と熱波をもたらす傾向が強く、南米については、北部地域(ブラジル、コロンビア、ベネズエラ)の天候をより乾燥させ、アルゼンチン南東部やチリの一部にはより湿潤な天候をもたらします。インドとインドネシアもエルニーニョにより8月までは乾燥する傾向にあります。

これらに加え、ウクライナで長期化する戦争が黒海地域からの供給を困難にするという見通しや、中国が国内の天候不順により世界最大の小麦輸入国になることで、この需要の高い作物に対する世界的な競争が激化する可能性があります。特に、エルニーニョが中国に対する小麦の最大かつ圧倒的な供給国であるオーストラリアの生産を減少させる可能性がある年には、その懸念はさらに高まることになります。

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