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チーフ・インベストメント・ストラテジスト
サマリー: 「景気後退」についての議論が盛んになっており、実際、多くの指標が景気後退を示唆し始めています。世界の信用状況、米国の景気先行指標、新規受注の鈍化などはその一例ですが、消費者と企業のバランスシートは依然として堅調です。景気後退を定義するのはまだ難しいですが、来年は、景気後退が「インフレ」から目をそらさせると考える理由が幾つかあります。しかし、株式市場はこの需要減退のリスクをまだ織り込んでおらず、投資家はむしろ、債券に収益機会を求め始めています。
FRB がインフレは「一過性」以上のものであると認めたのは、ちょうど 1 年前のことでした。そして、その影響は今年一年を通じて市場に波及しています。しかし、物価上昇圧力に若干の冷え込みの兆しがあることを示す指標があったとしても、安心するのは時期尚早でしょう。FRBは特に、金融緩和が早すぎたためにインフレが再燃した1970年代の経験から、そのことを理解しています。
しかし、2023年に向けて需要が弱まることを示唆する幾つかの指標から、焦点は景気後退懸念に移っているようです。その状況は以下の通りです。
1. 民間部門での新たな与信の流れをGDP比で示した世界の信用状況は通常、S&Pの収益拡大の優れた信用指標となっていますが、それが減少を見せ始めています。当社のマクロストラテジストであるChris Dembikのマクロチャートマニアの30ページをご参照ください。
2. 米コンファレンスボードの景気先行指数は-2.7に落ち込み、前月比でも0.8%減となったことを、当社の株式戦略責任者のピーター・ガンリューがこちらで言及しています。
3. NY連銀製造業景気指数(エンパイア・ステート景況指数)やフィラデルフィア連銀製造業景況指数、昨日(11月23日)のS&Pグローバルが発表した11月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値を見ても、新規受注は減少しています。
4. 米銀は、中小企業向けおよび大企業向けの貸出や商業用不動産への貸出基準を厳格化しています。クレジットカードやその他の消費者金融の貸出基準も厳しくなっています。
5. 住宅市場は以前から警告のサインを発しており、雇用喪失のリスクは高止まりしています。住宅セクターはGDPや雇用に占める割合が高いため、米国全体の雇用に占める割合が低いハイテクセクターの解雇とは異なり、ヘッドラインの数字に顕著に反映される可能性があります。
とはいえ、景気後退に陥るとしても、それは名目上で、実質上のものではないとの見方もできます。インフレ率の低下によって実質成長が支えられるということです。もうひとつの重要な観点は、米国の家計と企業は、パンデミックの間の貯蓄と景気刺激策から依然としてかなり現金が豊富であるように見えるということです。
NBER(全米経済研究所)が定義する公式な景気後退に突入するかどうかを判断するのはまだ難しいですが、指標は景気減速を示唆するものが増えてきています。注視すべき重要なポイントは以下の2つです。
1. 収益成長の鈍化ペース
2. 米国の労働市場の悪化ペース
このことは、株式市場ではまだ景気後退のリスクを織り込んでおく必要があるため、弱気相場に終止符を打つのは時期尚早であることを示唆しています。S&P500のPERは18.2倍で、2000年以降の平均17.4倍より高い水準にあります。ディフェンシブな投資行動をとり、下振れ幅の大きい成長銘柄よりも割安銘柄へのエクスポージャーを確保するのが最善と思われます。一方、投資家は今年に入り金利が大幅に上昇したため、債券の高い利回りと収益機会を追求し始めています。短期で信用力の高い投資適格債は、魅力的なインカムゲインとキャピタルゲインの機会を提供します。