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マクロ・インサイト:FRB利上げの行方を探る マクロ・インサイト:FRB利上げの行方を探る マクロ・インサイト:FRB利上げの行方を探る

マクロ・インサイト:FRB利上げの行方を探る

概況
チャル・チャナナ

マーケット・ストラテジスト(Saxo Group)

サマリー:  米2月消費者物価指数(CPI)では、コア指数は前月比ベースで予想を上振れたものの、概ね予想と一致した内容となりました。米国がさらなる市場の混乱を回避できれば、FRBが来週の会合で0.25%の利上げに踏み切る可能性は再び高まるでしょう。しかし、その一方で米銀の融資要件の厳格化が実体経済に与える影響は、FRBの利上げ以上に広範かつ急速に波及する可能性があり、米経済の先行き不透明感が高まっています。目先でボラティリティが高まりやすい状況が続くとみられますが、中小企業の収益が圧迫される中、市場では「質への逃避」が一段と加速する可能性があります。


根強いインフレ圧力で3月利上げの公算高まる


米2月消費者物価指数(CPI)はコア指数の前月比を除き総じて予想と一致したものの、インフレ圧力の根強さを裏付ける内容となりました。総合指数は前月比0.4%の上昇にとどまったものの、食品とエネルギーを除くコア指数は前月比+0.5%と、1月の同+0.4%から伸びが加速しました。なお、前年同月比の上昇率は+6.0%と前月(1月:同+6.4%)から大きく低下した一方、コア指数は前年同月比+0.5%(1月:同+5.6%)と小幅な減速にとどまりました。

コア指数の財価格は前月比+0.1%と1月から横這いで推移し、財価格のディスインフレが進んでいるとのシナリオの蓋然性は、かなり低いことが確認されました。サービス価格のインフレは依然根強く、コアサービスは前月比+0.6%(1月:同+0.5%)、住居費は同+0.8%と、いずれも伸びが加速しました。なお、パウエル議長が重視する「スーパーコア(住居費を除くサービス業)」は1月の前月比+0.36%から同+0.5%に上昇し、昨年9月以来の伸びを示しました。

金融市場のシステミックリスクが顕在化し、リセッション懸念が高まる中においても、インフレ率が予想以上に根強いことが確認されるにつれてFRBが利上げペースを緩める時期は遠のきつつあるようです。こうした中、市場が織り込む0.25%利上げの確率は、週明けに一旦50%を割り込んだ後、足元では再び80%以上に切り上がっています。ただし、すべては来週22日のFOMCまでに、FRBがさらなる市場の混乱を回避できるか否かにかかっています。

適切な政策手段を講じる

金融危機の高まりによって、FRBの政策の舵取りが一層複雑になったのは間違いありません。しかし、今回の危機への規制当局の対応を見る限り、インフレ抑制の取り組みを継続する余地はまだ残されているようです。この先市場が落ち着きを取り戻した場合も、来週FRBが利上げの一時停止、または利下げに動くならば、一部の投資家はFRBがシステミックリスクに対する警戒を依然強めていると受け取り、市場のパニックを引き起こしかねません。また、一連のインフレ指標は鈍化の兆しを見せておらず、FRBはインフレ抑制という仕事において信頼性を維持する必要に迫られています。

このため、FRBは金融政策をシステミックから切り離すと同時に、いかなる市場の混乱にも万全の対応を取り、さらなるパニックを回避することが重要となります。イングランド銀行(BOE)は、昨年9月に生じた市場の混乱に対処するために臨時の流動性供給策を講じる一方、あくまでも物価抑制にフォーカスした金融政策を継続し、これまで1.75%の利上げを行ってきました。

クレジットリスクを注視

金融システムのストレスを把握するために、クレジット市場の動向を引き続き注視する必要があります。当グループの株式戦略責任者を務めるピーター・ガンリューは、先日のレポートで注目すべき指標をリストアップしています。FRA/OISスプレッド(米3カ月物金利先渡し契約と3ヶ月OISの差分)は、資金調達にかかるストレスを表す指標として有効です。FRA/OISスプレッドは2020年3月以来最も拡大した水準にありましたが、足元ではやや縮小傾向にあります。しかし、先行き不透明感が急速に増す中で、引き続き注視すべき重要な指標となります。FRA/OISスプレッドが再び拡大する、あるいは拡大した水準に留まるならば、金融システムの脆弱性やショックへの耐性が十分でないことを示唆している可能性があります。

昨日、大手格付け機関が相次いで米国の銀行セクターの見通しを引き下げたことも、市場の懸念を引き起こしています。ムーディーズは米銀の見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げ、米銀6行の格付けも引き下げ方向で見直すとしています。また、S&Pもファースト・リパブリック・バンクの見通しを「ウオッチネガティブ」に指定しました。

またその他にも、米国の金融環境指数も重要な指標となります。主にクレジット・スプレッドの拡大を背景に、米国の金融環境は現サイクルで最も逼迫した状況にあります。市場の流動性は、経済への効果が波及するまでに多くの時間を要するFRBの金融政策よりも、米経済や米国株式市場の見通しに甚大な影響を与える可能性があります。

FRBの政策がもたらす影響

たとえFRBが当面はインフレ抑制に注力し続けるとしても、長期的な利上げの道筋は極めて不透明な状況にあります。米銀の融資要件の厳格化は実体経済に与える影響は、FRBの利上げ以上に広範かつ急速に波及する可能性があり、リセッション懸念は急速に高まっています。しかし、その一方でインフレは許容できないほど高止まりを続けており、中国経済の再開やFRBの流動性供給措置によって今後一段と加速するリスクも残されています。これは、景気後退と物価上昇が同時進行するスタグフレーションに向かう可能性があることを意味しています。

企業の利益マージンの動向も、もう一つの重要な指標となります。米銀の破綻がセンチメントの重しとなる中、今後、収益への下押し圧力は主に中小企業(ラッセル2000の構成銘柄に多い)の間で必然的に強まるでしょう。全米自営業者連盟(NFIB)が公表した2月の中小企業の景況感調査によると、インフレは中小企業にとって最大の課題となっているとの回答が示されています。


したがって、リセッションリスクの高まりは利回り低下を促す一方で、市場のリスクプレミアムは上昇すると考えられます。経済見通しやインフレ動向、市場リスクといった要素が織り込まれる中で、利回りは目先でボラティリティの高い展開が続く可能性があります。経済を取り巻く環境が一層厳しさを増す中で今後、「質への逃避」が続くものと予想されます。

 

 

 

 



Source: CME FedWatch
US FRA-OIS Spread. Source: Bloomberg, Saxo

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