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グローバルマクロ戦略責任者
サマリー: ここ数ヶ月、市場は強気派と弱気派の両方に対して容赦のないものでした。米ドルではないにしても、少なくとも米国株式市場で市場サイクルが一巡した今、投資家やトレーダーがグローバル市場の新時代をナビゲートするのに役立つ可能性のあるいくつかのルールを検討する価値があります。
注:当記事はマーケティング用の資料です。
本稿は、トランプ2.0の時代にトレーダーと投資家にとっての土俵がどのように変化したかについての4部構成の記事シリーズの第1部であり、それ以前のすべてのものとは対照的です。その変化はまさに、トランプ大統領が我々の知っていた世界秩序をひっくり返そうとしていることから発生しています。トランプ大統領の解放記念日の関税発表前後の市場の巨大なボラティリティは、非常に危険な結論にたどり着くように我々を導くかもしれないのと同時に、いくつかの重要な教訓を提供してくれます。しかし、ここからが本番です。
プレビュー:つい最近起こった、強気派と弱気派の両方を燃やしたのは何だったのか?
先週末と月曜日は、トランプ大統領の任期と市場との相互作用の縮図でした。先週は好調に取引を終えた後、米国株式市場は月曜日の初めに一時的に急に悪化し、その後、力強く反発してこの日はプラスで取引を終えました。短期的に悲観論が噴出したのは、部分的には、トランプ大統領の「大きくて、美しい」減税と下院を通過している歳出法案が、彼の政権が赤字を削減するための信頼できる努力を怠っているように見えることから、米国債利回りを急上昇させるリスクがあるという最新の懸念が市場で触れられました。債券格付け機関のムーディーズがAAAの格付けから米国債を格下げしたため、市場でみられたこの恐怖に拍車がかかりました。同様に、ベッセント米財務長官は日曜日に、これらの懲罰的な解放記念日の関税について、結局のところ、各国が「誠意を持って」交渉しなければ、それが何を意味するにせよ、懲罰が課せられる可能性があるだろうと警告しました。そして、どういうわけか、市場が開くと、市場はその恐怖を払いのけ、当月の新高値まで上昇しました。
楽観主義から悲観主義への突然の相場の騰落は、1月下旬にトランプ氏が大統領に就任して以来、米国株式市場で展開されたことの小さな縮図のようなものです。まず、米国効率化省(US DOGE)が支出を削減し、トランプ大統領が、あちらこちら、あちらこちら、あらゆる場所で関税を課す貿易戦争の道筋に、大規模な自信の崩壊がありました。その後、トランプ大統領が、4月2日に発表した全ての主要なアメリカ貿易相手国に対する、極めて高い新たな"解放記念日"関税の発効をごく短期間に認めた後、突然、全てのアメリカ貿易相手国との二国間貿易協定交渉の時間を確保するため、これらの関税の90日間の停止を発表した時に、相場は最高潮に達しました。
そして、中国が解放記念日の関税停止に含まれていなかったため、スイスのジュネーブで週末に行われた米国と中国の間の合意により、米国の対中関税145%が30%に引き下げられ、中国の米国に対する125%の関税が10%に引き下げられた後、市場の復活は5月12日月曜日まで続きました。 これは、ファイナンシャルタイムズ(FT)のコラムニストが「TACO(Trump Always Chickens Out:トランプ大統領はいつも怖気づいてやめてしまう)取引」と呼んだことが再び起こったことから、先週の力強い相場上昇への道を開くのに役立ちました。これは、トランプ大統領がしばしば繰り返すパターンで、荒唐無稽な政策の立場を主張し、その後、彼はそれらの政策の大部分を後退させています。つまり、最初は恐怖と売り込みの宣伝、そして次に、トランプ大統領が引き下がったときの市場参加者の大きな安堵のため息と相場の上昇が起こるのです。間違いなく、大統領就任式以来、私たちは1つの巨大なTACO取引を見てきました。しかし、不確実性は残っており、変化はまだ進行中です。
チャート:大転落とその後の回復 - トランプ2.0時代の兆候? 2024年の選挙でトランプ氏が勝利したとき、2017年にトランプ氏が企業や個人に対する減税を行った株式市場の高騰を誰もが覚えていたため、市場はその再来を期待して非常に強気でした。しかし、今回は、破壊的なDOGE(米国効率化省)や移民の取り締まり、そして特に大規模な関税の発表が市場センチメントと見通しを脅かしたため、楽しみは長くは続きませんでした。恐怖のレベルは、4月上旬に交渉の停止が発表されてすぐ後に、トランプ大統領の解放記念日の関税が(他に何も遮るものがなく)発効されることとなったときにピークに達しました。
米国株式が2025年の横ばいの水準に戻った今、今後の見通しはどうなっているのでしょうか?
TACOの取引であろうとなかろうと、米国株式が混乱したボラティリティを経て年初と比べて同水準の株価に戻った今、多くの市場参加者が安堵のため息をついており、年初から多かれ少なかれ市場のサイクルは一周したといえるでしょう。世界の投資家は米国を拠点とする投資家ほど、現状に満足していないことに注意してください。なぜなら、米ドルが下落したことから、米国の主要な株価指数は実際には、例えば、ユーロ建てや、特に日本円建てまたはスイスフラン建てでみた場合、まだ下落しています。
2月から4月上旬にかけて強気派が大損失を出し、4月上旬の安値から5月中旬にかけて弱気派がプラスではあるものの緩やかなパフォーマンスとなった後、状況が少し落ち着いてきました。今現在、今後ポートフォリオに過剰なドラマが生じないようにするために学べる教訓を棚卸し、振り返ってみる必要があります。この振り返りを進めるために、私はトランプ2.0時代の4つの公理または「ルール」を考え出しました。これにより、投資家やトレーダーがこの環境で少しでも安全を確保できることを願っています。最初のルールは次のとおりです。
ルール#1:政策と市場のボラティリティは続くでしょう - それを受け入れてください。
トランプ大統領は時折「チキンアウト(怖気づいて退く)」するかもしれませんが、根底にある政策の動きは現実のものであり、長年にわたって拡大してきた大規模な不安定性への対応である米国の経済に関する政治的手腕と産業政策における致命的かつ深刻な変化だととらえるべきでしょう。
彼のスタイルが好きか嫌いかは別として、トランプ大統領は、特に1990年代半ば以降、第二次世界大戦後のシステムが作り出した不均衡を逆転させることに真剣に取り組んだ最初の米国大統領です。過去数十年間、ドイツ、日本、韓国、そして何よりも中国のような重商主義大国は、米ドルに基づく世界秩序を利用して、自国通貨を人為的に安く保ち、輸出主導の工業能力の構築を奨励してきました。このシステムが機能するためには、米国が、世界が米ドルを主要な世界準備通貨として使用するのに十分な米ドルを送ることを必要としたため、アメリカに恒久的な巨額の赤字をもたらすこととなりました。これにより、米国は高い生活水準を得ることができましたが、その仕組みが国内での不平等問題を悪化させ、自国の産業基盤が空洞化し、製造業の雇用が消滅することとなりました。
今、トランプ大統領は、関税、貿易ルール、諸外国との同盟を米国の優位性のための梃子として利用しており、本質的には重商主義国家がやってきたのと同じゲームをしていますが、今は逆方向に進んでいます。トランプ大統領が7歩進んで5歩下がるからといって、我々がどこかに行かないわけではありません。そして皮肉なことに、おそらくは物事がうまく落ち着いたときこそ、トランプ大統領は勇気づけられて新たな政策イニシアチブを解き放ち、皆を再び緊張させるのでしょう。
これはあなたの投資とトレードにとって何を意味するのでしょう?
木々の森が見えるようにしてください - 問題は、我々が古い世界秩序を破壊させているのかどうかではなく、その速度です。 確かに、トランプ大統領は、市場の信頼に対する過度の即時ダメージを避けるために、非現実的なほど強力な政策措置をほぼ毎回後退させており(いわゆる、TACO取引をしており)、自身の従来からのやり方が、彼が実権を握っている期間の株式市場のパフォーマンスを「摩耗させる」ことを知っています。しかし、彼の混沌としたスタイルは、現場の経済関係者に真の変化を強いています。企業は今、トランプ政権が鞭を打たなければ決して取らなかっただろうサプライチェーンの多様化または国内回帰のために、大規模でおそらく高額なコストのかかる変更を行うことを検討しなければなりません。この新しい体制では、スピードは常に大きな問題ですが、方向性についてはそうではありません。アップル(Apple)のケースを1つ考えてみましょう - 非常に大きいとはいえ、アップル(Apple)は依然としてiPhoneのほとんどを中国で生産しています。トランプ大統領が中国に課した目を見張るような関税水準の例外を設け、アップル(Apple)がiPhoneやその他の機器を米国に少ない税率で輸出し続けることを認めたにもかかわらず、アップル(Apple)はiPhoneの生産をインドに移すと発表しました。これは、明らかにそれらのiPhoneを米国で生産することを望んでいるトランプ大統領の新たな怒りを引き起こしました。インドへの移転計画はアップル(Apple)にとってすでに多額のコストがかかる話ですが、米国への移転の方がはるかに高額です。そして、アップル(Apple)は、その生産の移転のコストをすべて顧客に転嫁することで市場シェアを失っても大丈夫なのでしょうか?他の企業に関しても、同様の事項について考慮しなければいけませんが、特に必要とされている重要な産業の企業についてはそうでしょう。そこで、我々は以下の点を考えてみましょう。
誰が恩恵を受けるかを把握しましょう。
この米国経済の政治的手法の変革は、全面的なものになるわけではなく、主に、米国経済の歯車を回し、国民を安心させ続ける特定の戦略産業を対象としており、米国は、中国のような遠く離れた、あるいは敵対的な国にサプライチェーンとしての働きを期待することはできないでしょう。デジタル、医薬品、エネルギー、すべての輸送インフラ(特に中国が完全に支配している海運)、ハイテク、さらには基本的な産業ローテク、さらには上記のいずれかの企業のサプライヤーも含め、すべての関連する産業であり多岐にわたります。娯楽用品や一部の繊維製品のような低付加価値産業だけが、米国の関税による影響から大きく免れる可能性があります。米国の関税は、サプライチェーンの国内回帰や多様化に投資する必要がある一部の企業にとって、コストの上昇と利益率の低下を意味します。しかし、他の企業は、利益に関心がなく、ただ生産能力を制御するという中国政府の命令にしか従わない中国企業との利益破壊的な競争を避ける、保護主義的な傘の下で利益を得るかもしれません。上記のような、造船、半導体チップや輸送コンテナ、原子力エネルギー、医薬品、希土類などの戦略的商品の生産における官(軍)民共同で推し進める必要のある技術分野について考えてみてください。
現在のFRB(米連邦準備制度理事会)は以前のFRBとは違うことを認識してください:FRBにとって、ボラティリティを避けるためだけに救済措置をこれ以上行う必要はないのです。
トランプ大統領の経済についての政治的手腕が生み出している成長、特にインフレに対する大きな不確実性のため、FRBは、少なくとも悪名高いLTCMヘッジファンドを救済した1998年まで遡り、ほぼすべての場面で過去に提供してきた種類の支援をもう提供できないため、脇に追いやられてきました。FRBの過度な金融緩和は、そうでなければ生き残れない事業を運営する企業を生き延びさせるだけであり、したがって、それは役に立たない重荷となる作用であり、米国経済の生産性を衰退させることになります。また、今後のFRBによる金融緩和は、資産の市場価値を支えることよりも、むしろ米国債市場を円滑に機能させ、米国政府が国債の償還と利回りの支払いをすることができるよう支援することに関係している可能性が高いです(それがしばしば同じ効果をもたらす可能性があるとしても、です)。かつて中央銀行が宇宙の支配者だった頃から30年近く経った今、それは信じがたいことですが、その時代は終わりました。我々は、政府の政策が主導権を握る、つまり、トランプ米大統領と米共和党が支配権を握っている、財政優位の新時代にいます。この状態は、少なくとも2026年後半の米国の中間選挙後までは続き、そして米共和党が下院と上院の両院の支配を維持した場合、そしてトランプ大統領が大統領令を通じて関税のような重要な政策行動をとる能力を維持する限り、ある程度は続くと予想されます。
来週は、トランプ2.0市場時代のルール#2にご期待ください。