チリ政府はリチウム産業の国有化を発表;1Q決算サマリー

チリ政府はリチウム産業の国有化を発表;1Q決算サマリー

株式
Peter Garnry

Chief Investment Strategist

サマリー:  リチウムは今後10年間にわたって電動化を促進する最も重要な金属の一つとして、投資家の注目を集めています。先週、チリ政府は近日中にリチウム産業の国有化を含めた新たな規制の枠組みを導入する旨を発表しました。発表の直後、リチウム大手SQMと米リチウム原料生産会社Albemarleの株価は大きく下落しました。本稿ではリチウム産業を取り巻く状況とチリ政府の計画がこれらの企業に与える影響を考察します。また、本日公表された第1四半期決算の概況をお伝えしたいと思います。


※本レポートは自動翻訳を一部修正したものです。原文と和訳に齟齬がある場合は原文が優先されます。

リチウム産業の見通しは変わらず


当グループは先週金曜日に世界のリチウム市場に関する詳細のレポートを発行し、投資機会や潜在的なリスクについて考察しました。しかし、その直後にチリの銅公社であるCodelcoとEnamiがリチウム生産拡大に向けて民間企業と協議していることがプレスリリースで明らかになりました。チリ政府はリチウム産業を国有化するまでCodelcoとEnamiを通じて短期的に関与しています。また、左派のガブリエル・ボリッチ大統領は近日中に新たな国営リチウム鉱山会社の設立を含めた「国家リチウム戦略」を発表する見通しです。チリ政府はリチウム増産に向けて資本を呼び込みより多くの税収を確保すると同時に、環境保護の実現を目指しています。現在、チリのリチウム生産はSQMとAlbemarleの2社に分割されており、チリのリチウム事業の国有化報道を受けて両社の株価はSQMが17.8%、Albemarleが10%、それぞれ下落しました。

 
SQM and Albemarle share price | Source: Bloomberg

市場は当初SQMとAlbemarleの株価にネガティブな反応を示しましたが、チリがリチウム産業を巡って新たな規制を整備する必要に迫られているのが現状です。1970年代に策定された現行の規制においてリチウムは「重要金属」に分類され、チリ政府はリチウムの採掘に新たな許可を承認しないことになっています。当然ながらチリのリチウムの生産量は頭打ちとなっており、生産量の世界シェアは25%にまで落ち込んでいます。また、このような状況が続けば2030年にはわずか10%に減少すると予想されています。メディア報道では新たな規制を「国有化」と表現していますが、実際には政府と民間セクターの関与を併合させた新たな枠組みとなる可能性が高いと考えられます。複数のアナリストは、新たなリチウム規制の枠組みは、SQMとAlbemarleにとってわずかにプラスとなる可能性があると指摘しています。市場がこれに同意するかどうかはまだ分かりませんが、少なくともチリ政府が打ち出した新たな枠組みによって2030年までに世界のリチウム供給量が拡大することは間違いありません。

リチウム需要の見通しは、引き続き堅調です。リチウムの需要は、電気自動車(EV)の普及に伴う将来的なリチウムイオン電池の需要動向に大きく左右されます。需要予測にはばらつきがありますが、EVの普及率に基づいて判断すると総じて保守的な見通しが示されています。当グループでは、リチウム市場は2030年まで爆発的な成長を遂げ、供給が需要を上回るシナリオが継続すると予想します。第4四半期のEVの出荷台数の伸びは前年同期比52%程度に達しており、先行指標から判断すると目先で鈍化する可能性が高いものの、年内に大きく減速する可能性は低いと考えられます。

下図は、世界有数のリチウム鉱山銘柄(上場企業)の一覧です。これらの企業は高い売上成長率と極めて魅力的な営業利益率を誇ります。多くのセルサイドのアナリストがリチウム産業に非常にポジティブな見方をしており、BHPグループやリオ・ティントなど世界最大の鉱山会社もリチウム事業で買収の機会を模索しています。

2021年 リチウム生産量の国別シェア:

  1. オーストラリア (53%)
  2. チリ (25%)
  3. 中国(13%)
  4. アルゼンチン(6%)
  5. その他(3%)

2021年 リチウム確認埋蔵量上位5カ国:

  1. ボリビア
  2. アルゼンチン
  3. チリ
  4. 米国
  5. オーストラリア

免責事項:アナリストはSQMの株式を保有しています。

第1四半期決算サマリー

本日、多くの企業が決算発表を行いましたが、以下はその概要および当グループの見解です。なお、本日最も注目される決算は、米国市場の引け後に公表予定のAlphabetとMicrosoftです。昨日発行した決算プレビューはこちらをご参照ください。第1四半期決算の概況や本日の市場の反応に基づいて判断すると、第1四半期の業績は投資家が期待していたほどポジティブなカタリストとなっていないようです。

 
  • Banco Santander: 第1四半期の純利益は、純金利収入の大幅な伸びを支えに予想を上回り、有形自己資本利益率は14.4%(予想12.4%)となりました。ネガティブな材料としてはスペイン事業での預金流出とブラジル事業で純利益が計画を下回ったことがあげられます。銀行株の取引はまだ本格的に回復していません。
  • Nestle: 販売価格の引き上げが業績に寄与し、オーガニック売上高の伸びは予想を上振れました。同社の業績は、世界の消費財セクターのメガキャップが、投資家にとって有望なディフェンシブ銘柄であることを裏付けています。
     
  • Novartis: スイスの製薬大手Novartisの第1四半期決算は、純利益と売上高がいずれも市場予想を上回ったほか、通期のガイダンスを上方修正しました。予定されていたサンド事業の分離は下期に向けて順調に進展しています。Novartisの決算は、製薬セクターおよび同社に対するポジティブなモメンタムを裏付ける内容となりました。

  • UBS: 第1四半期の純利益は、予想の18.6億ドルに対して10.3億ドルとなり、売上高も予想を下回りました。また、有形自己資本利益率も事前予想の14.6%に対して8.1%と、予想以上に低下しました。米RMBS訴訟に係る引当金として6億6500万ドルを積み増したことが減益の一因となりました。なお、UBSがクレディ・スイスを吸収合併する間、流動性とバランスシートを管理するために自社株買いは当面停止されます。今回の決算は、主にクレディ・スイスの統合を巡って、今後も様々なノイズが発生する可能性を示唆しています。

  • Spotify: 堅調な業績を発表し、月間アクティブユーザー数は前年同期比22%増の5.2億人、プレミアム会員数は同15%増の2.1億人と、いずれもコンセンサス予想を大きく上回りました。一方、ストリーミングサービス事業では1億5600万ユーロの営業損失を計上しました。一方、第2四半期の有料会員数とアクティブユーザー数の見通しはコンセンサスを上回っており、回復の兆しも見受けられることから、短期的には減益となっても投資家は楽観的に受け取っているようです。全体として、同社は確固たる事業基盤を築いておらず、超高収益を生み出す企業とはなっていません。

  • UPS: 価格低下と販売台数の減少を受けて、第1四半期の業績は売上・利益段階で予想を下回りました。また売上高と営業利益率の見通しは低い水準に留まっており、UPSの取扱数量は引き続き下押し圧力に晒されるものと予想されます。同社の業績は、米国の第1四半期の小売売上高が期待外れとなった可能性を示唆しています。マクロ的な観点からは、業績については懸念が残ります。

  • PepsiCo: 第1四半期の業績は、売上高および利益段階で予想を大きく上回ったほか、オーガニック売上高の通期ガイダンスを6%増から8%増に上方修正するなど、力強い内容となりました。UPSとは対照的に、飲料・スナック部門の好調が続いており、インフレにもかかわらず消費者の間で買い控えが生じていないことを表しています。

  • GE: 第1四半期決算は予想を上回り、同社は通期のフリーキャッシュフローのガイダンスを予想レンジの下限の水準に若干引き上げました。再生可能エネルギー部門は、第2四半期も第1四半期と同程度の赤字を計上する見通しです。同社の業績は、航空部門など産業向けの需要がかなり安定していることを裏付ける内容となりました。

  • 3M: 同社は経営幹部の交代を一段と進め、従業員6000人の追加削減を発表しました。組織再編を目指す3Mは、引き続きコスト面での逆風に晒されています。今年の売上成長率は2%~6%となる見通しで、エンドユーザーの需要は依然低迷しています。マクロ的な観点からは、同社の決算は特段ポジティブな内容ではありませんでした。

  • McDonald’s: 第1四半期は、売上高、利益ともに予想を大幅に上回り、既存店売上高は前年同期比12.6%増(予想8.2%増)と、極めてポジティブな内容となりました。これは、メニュー価格の引き上げが消費者に受け入れられており、需要にさほど影響していないことを示しています。同社は通期の営業利益率が45%に達すると予想しています。今回の決算は、同社の経営体制が極めて優れていることを裏付けています。

口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。 

最短3分で入力完了!

【ご留意事項】

■当資料は、サクソバンクグループのアナリストによるマーケット分析レポートの転載、もしくは外部のアナリストからの寄稿となっております。
■当資料は、いずれも情報提供のみを目的としたものであり、特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
■当資料は、作成時点において執筆者またはサクソバンク証券(以下「当社」)が信頼できると判断した情報やデータ等に基づいていますが、執筆者または当社はその正確性、完全性等を保証するものではありません。当資料の利用により生じた損害についても、執筆者または当社は責任を負いません。 
■当資料で示される意見は執筆者によるものであり、当社の考えを反映するものではありません。また、これら意見はあくまでも参考として申し述べたものであり、推奨を意味せず、また、いずれの記述も将来の傾向、数値、投資成果等を示唆もしくは保証するものではありません。 
■当資料に記載の情報は作成時点のものであり、予告なしに変更することがあります。 
■当資料の全部か一部かを問わず、無断での転用、複製、再配信、ウェブサイトへの投稿や掲載等を行うことはできません。
■上記のほか、当資料の閲覧・ご利用に関する「免責事項」をご確認ください。 
■当社が提供するデリバティブ取引は、為替相場、有価証券の価格や指数、貴金属その他の商品相場または金利等の変動によって損失を生じるおそれがあります。また、お預けいただく証拠金額に比べてお取引可能な金額が大きいため、その損失は、預託された証拠金の額を上回る恐れがあります。
■当社が提供する外国証券取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。手数料については、「取引金額×一定料率」又は「取引数量×一定金額」で求めた手数料が一回の取引ごとに課金されます。ただし手数料の合計額が当社の定める最低手数料に満たない場合は、手数料に代えて最低手数料を徴収させていただきます。また取引所手数料等の追加費用がかかる場合があります。 
■取引にあたっては、取引説明書および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。 
■当社でのお取引にかかるリスクやコスト等については、 こちらも必ずご確認ください。

サクソバンク証券株式会社
Saxo Bank Securities Ltd.
Izumi Garden Tower 36F
1-6-1 Roppongi Minato-ku
Tokyo 106-6036
〒106-6036 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデンタワー36F

お問い合わせ

国・地域を選択

日本
日本

【重要事項及びリスク開示】

■外国為替証拠金取引は各通貨の価格を、貴金属証拠金取引は各貴金属の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、売買の状況によってはスワップポイントの支払いが発生したり、通貨の金利や貴金属のリースレート等の変動によりスワップポイントが受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■外国為替オプション取引は外国為替証拠金取引の通貨を、貴金属オプション取引は貴金属証拠金取引の貴金属を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。また、オプションの売り側は権利行使に応える義務があります。
■株価指数CFD取引は株価指数や株価指数を対象としたETFを、個別株CFD取引は個別株や個別株関連のETFを、債券CFD取引は債券や債券を対象としたETFを、その他証券CFD取引はその他の外国上場株式関連ETF等を、商品CFD取引は商品先物取引をそれぞれ原資産とし、それらの価格の変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、建玉や売買の状況によってはオーバーナイト金利、キャリングコスト、借入金利、配当等調整金の支払いが発生したり、通貨の金利の変動によりオーバーナイト金利が受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■上記全ての取引においては、当社が提示する売価格と買価格にスプレッド(価格差)があり、お客様から見た買価格のほうが売価格よりも高くなります。
■先物取引は各原資産の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。
■外国株式・指数オプション取引は、対象とする有価証券の市場価格や対象となる指数、あるいは当該外国上場株式の裏付けとなっている資産の価格や評価額の変動、指数の数値等に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、対象とする有価証券の発行者の信用状況の変化等により、損失が発生することがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。さらに、外国株式・指数オプションは、市場価格が現実の市場価格等に応じて変動するため、その変動率は現実の市場価格等に比べて大きくなる傾向があり、意図したとおりに取引ができず、場合によっては大きな損失が発生する可能性があります。また取引対象となる外国上場株式が上場廃止となる場合には、当該外国株式オプションも上場廃止され、また、外国株式オプションの取引状況を勘案して当該外国株式オプションが上場廃止とされる場合があり、その際、取引最終日及び権利行使日が繰り上げられることや権利行使の機会が失われることがあります。対象外国上場株式が売買停止となった場合や対象外国上場株式の発行者が、人的分割を行う場合等には、当該外国株式オプションも取引停止となることがあります。また買方特有のリスクとして、外国株式・指数オプションは期限商品であり、買方がアウトオブザマネーの状態で、取引最終日までに転売を行わず、また権利行使日に権利行使を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。また売方特有のリスクとして、売方は証拠金を上回る取引を行うこととなり、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。売方は、外国株式・指数オプション取引が成立したときは、証拠金を差し入れ又は預託しなければなりません。その後、相場の変動や代用外国上場株式の値下がりにより不足額が発生した場合には、証拠金の追加差入れ又は追加預託が必要となります。また売方は、権利行使の割当てを受けたときには、必ずこれに応じなければなりません。すなわち、売方は、権利行使の割当てを受けた際には、コールオプションの場合には売付外国上場株式が、プットオプションの場合は買付代金が必要となりますから、特に注意が必要です。さらに売方は、所定の時限までに証拠金を差し入れ又は預託しない場合や、約諾書の定めによりその他の期限の利益の喪失の事由に該当した場合には、損失を被った状態で建玉の一部又は全部を決済される場合もあります。さらにこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。外国株式・指数オプション取引(売建て)を行うにあたっては、所定の証拠金を担保として差し入れ又は預託していただきます。証拠金率は各銘柄のリスクによって異なりますので、発注前の取引画面でご確認ください。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、取引証拠金を事前に当社に預託する必要があります。取引証拠金の最低必要額は取引可能な額に比べて小さいため、損失が取引証拠金の額を上回る可能性があります。この最低必要額は、取引金額に対する一定の比率で設定されおり、口座の区分(個人または法人)や個別の銘柄によって異なりますが、平常時は銘柄の流動性や価格変動性あるいは法令等若しくは当社が加入する自主規制団体の規則等に基づいて当社が決定し、必要に応じて変更します。ただし法人が行う外国為替証拠金取引については、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用いて通貨ペアごとに算出(1週間に1度)した比率を下回らないように当社が設定します。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、損失が無制限に拡大することを防止するために自動ロスカット(自動ストップロス)が適用されますが、これによって確定した損失についてもお客様の負担となります。また自動ロスカットは決済価格を保証するものではなく、損失がお預かりしている取引証拠金の額を超える可能性があります。
■外国証券売買取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。
■取引にあたっては、契約締結前交付書面(取引説明書)および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。

サクソバンク証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
第一種金融取引業、第二種金融商品取引業
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
手数料:各商品の取引手数料についてはサクソバンク証券ウェブサイトの「取引手数料」ページや、契約締結前交付書面(取引説明書)、取引約款等をご確認ください。