AIは新しい暗号資産か? AIは新しい暗号資産か? AIは新しい暗号資産か?

AIは新しい暗号資産か?

マッズ・エバーハート

暗号資産アナリスト(Saxo Group)

サマリー:  AI(人工知能)ブームは、AI企業に資金が流れ込むにつれて、この技術を寵児に変え、投機の世界のかつての人気者、暗号資産をさらに無人地帯へと押しやりました。現在の認知度は対照的ですが、AIと暗号資産には顕著な類似点があります。両者が同じサイクルを辿るのであれば、AIはバブルを免れることはできないでしょう。


暗号資産市場はボラティリティが高く、ほとんどが規制されておらず、過去の実績データは限られています。従って、それが本質的な価値を持つか否かについては、さまざまな議論があります。この問いに対してどのような意見を持つかはさておき、暗号資産市場が上記の特性により他の多くの市場とは一線を画すとの見方は幅広いコンセンサスを得ています。つまり、暗号資産市場は他の市場との比較には適していないのです。ただし、未成熟ではあるものの多大な期待が寄せられる技術が引き起こすバブルについては別です。この場合は、暗号資産ほど横に並べて比較するのにふさわしいものはないでしょう。暗号資産と最近ブームのAIを比較してみれば、一方通行のように流れ込む資本など、顕著な類似点が見えてきます。

暗号資産市場はこれまでに、そのような資本の一方通行を2度経験しています。その2 度とも、最終的には流入資金が枯渇し、バブルが弾けました。こうしたバブルは2017年と2021年に発生し、ビットコイン、イーサリアム、その他さまざまな暗号通貨の価値が急騰しましたが、翌年には90%もの急落に見舞われました。バブル期には、暗号資産の価格が上昇しただけでなく、誰もがこの市場への参入を望んだため、関連のプロジェクトや企業は容易に資金を調達することができました。しかし、その後突然、限られた者を除き、大方が暗号資産への関心を失ってしまいました。

市場の集団的想像力はどの時点で終わるのか?

暗号資産もAIも、成長を続けるクラウドの中で基幹技術となり得るものとして、将来的に大きな可能性を秘めています。しかし、両者とも、現時点では限られた価値しか生み出せないため、世界中で広く導入されるには至っていません。さらに悪いことに、これらの技術が十分に成熟し、広く適用されるようになるのか、そうなるとしても、それはいつなのかを知る術はありません。しかし、かつての暗号資産を含む他のほとんどの新技術と同様、AIの重要性が短期的に過大評価されることはほぼ確実です。

技術的に成熟するまでは、市場は集団的な想像力に基づいて、かなり盲目的に技術を判断します。ベンジャミン・グレアムはかつて、「投機市場では、重要なのは想像力であり、分析ではない」と述べました。バリュー投資の父と称されるグレアムは恐らく、将来についての当て推量を評価の柱とする市場に対して警告の意味でこの言葉を発したのでしょう。暗号資産とAIはまだ確立された技術ではないため、未来への想像力は現在の具体的な側面を凌駕し、それゆえに、市場参加者は、実際のデータや数値に基づくのではなく、想像力を働かせて、この業界が将来世界に与える影響、ひいてはその価値を認識しています。このように認識された価値は、暗号資産が幾度となく経験したように、AIの今後の展開と大きく乖離する可能性があります。

しかも、現在のAIの価値判断は主に個人投資家によって導き出されたものです。個人投資家は、今年初めのAI相場にはほとんど参加していませんでした。金利の急上昇を受け、多くが株式の保有を減らしたからです。しかし、ここ数カ月、特にAI関連銘柄への投資で市場に戻ってきたようです。個人投資家からのAIへの資金流入は続き、彼らの新たな寵児になりつつあります。個人投資家は、彼らが高い支配力を持つ暗号資産やミーム株(SNSや掲示板サイトで注目を集め、株価が短期的に大幅に変動する銘柄)のように、リスクとリターンの大きい投資を好みます。想像力が主導する市場において、このような見逃すことを恐れる群衆の存在は将来のバブルにつながるパーティー騒ぎを煽るものであり、注意する必要があります。

今回のAI関連投資を巡る騒ぎが、暗号資産の歴史やITバブルのような重大な欠点を1つも伴わないのであれば、驚くべきことです。技術の成熟の予想以上の遅れ、規制上の不確実性など、暗号資産が直面したのと同様の課題が明らかになるにつれ、市場はいずれAIの短期的な影響を見直すことになるでしょう。また、一部の企業を除き、個々の企業がAIによって生み出される価値をどの程度獲得できるのかが不明確であることも不確実性に拍車をかけ、ボラティリティを過剰なほどに高める可能性があります。

「ゴールドラッシュのときはシャベルを売れ」

AIの価値を取り込む能力が現時点で明確になっている数少ない企業のひとつが、GPUメーカーのNvidiaです。AIモデル(例えばOpenAIのツール)のトレーニングには、コンピュータの高度な演算処理能力が必要ですが、その鍵を握る半導体の主要サプライヤーであるNvidiaは、AI技術の波に乗り遅れまいとGPUを必死に確保しようとする企業からの需要によって、昨年度、桁外れの増益を達成しました。5月下旬、Nvidiaは2023年度第2四半期に110億ドルの売上を見込んでいると発表しましたが、この見通しはアナリスト予想の平均71.8億ドルを大きく上回ります。このようなAIを囲い込もうとする企業行動により、Nvidiaの株価は2022年10月に付けた安値から4倍になり、現在の時価総額は1兆ドルを超えました。時価総額が1兆ドルを超える企業は他に5社しかありません。Nvidiaの時価総額が1年未満で2,500億ドルから7,500億ドルも拡大したことは、AIが投機的な市場であることを明確に示しています。投資家は想像力を膨らませ、この技術の前途には何か偉大なものが待ち構えていると信じ込んでいるようです。

Nvidiaのケースは、「ゴールドラッシュの時はシャベルを売れ」という格言を思い起こさせます。これは、ブームそのものを追い求めるよりも、ブームを追い求める人々に必要なインフラを提供する方が利益を生むことを示す言葉です。2021年の暗号資産ラッシュでは、Coinbaseは暗号資産取引を促す「つるはしとシャベル」を売り、大きな利益を得ました。これは現在のNvidiaと同様の状況です。やがて暗号バブル資産は弾け、Coinbaseは大幅な減益に陥り、株価は1年で最大90%下落しました。Nvidiaが永遠に続くゴールドラッシュの中にいるのか、それともCoinbaseと同様に、「山高ければ、谷深し」という成り行きを辿るのかは、時間がたてば分かることでしょう。 

 
出所:Coinbase Global, Inc、サクソグループ

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