マクロ経済 :欧州エネルギー危機 - 悪化するが解決の道はある マクロ経済 :欧州エネルギー危機 - 悪化するが解決の道はある マクロ経済 :欧州エネルギー危機 - 悪化するが解決の道はある

マクロ経済 :欧州エネルギー危機 - 悪化するが解決の道はある

CD
クリストフ・ダンビ

マクロ分析責任者

サマリー:  歴史は、危機や不安定がイノベーションをもたらすことを教えてくれています。しかし、現在の欧州エネルギー危機はどのような結果をもたらすのでしょうか。


アラスデア・ロバーツは、『America's First Great Depression:Economic Crisis and Political Disorder after the Panic of 1837(仮題:米国初の大恐慌:1837年のパニック以降の経済危機と政治的混乱)』(2013年)で、米国が同国初の大恐慌の影響にどう対処したかを見事に解説しています。彼は、この危機の中で民主主義へのコミットメントがいかに試されたかを示しています。また、欧州諸国がこの困難な時期をどう乗り越えたか、労働力が大量にあふれ資本が欠如していた時期に、食料品価格の高騰と著しい高金利が、欧州全土で起こった1848年の革命にどうつながっていったかを検証しています。「1847年初頭、欧州全土で基本的な食料品の価格が2倍になり、それが暴動につながり、飢饉への恐怖が高まった。欧州政府は金融引き締め政策で対応し、国内での不況を招いた。1848年、欧州は2年にわたる経済難がもたらす政治的影響を認識した」。歴史は繰り返しません。しかし、しばしば周期が見られます。現在の経済環境は19世紀半ばの状況に似ています。ただし2つの点で大きく異なっています。資本は豊富であり(2年前と比べれば減少していますが)、労働力は不足しています(欧州の出生率は1848年に3を超えていましたが、現在は1.5です)。私たちは同様の政治不安を予期すべきでしょうか。フランスで2018年に起きた「黄色いベスト運動」(フランス政府への抗議運動)が何らかの形で再現する可能性は排除できませんが、それが欧州全域に広がることはないでしょう。実際、欧州の有権者の右傾化こそが、最も直接的な政治的帰結なのです(イタリアとスウェーデンの9月の選挙結果にそれが見て取れるでしょう)。

さらに、19世紀半ばの危機と比較すると第三の違いが存在します。1847年の食料品価格の2倍への高騰は、ジャガイモの病気と穀物の不作が主な要因でした。これらは予測も回避も不可能な外的要因です。欧州のインフレ危機は、エネルギー政策の失敗(数十年にわたるロシア産の低コスト化石燃料への強い依存、原子力エネルギーからの撤退、現段階ではエネルギーの安定供給が不可能な太陽光や風力への投資)が主因となっています。とはいえ、もし欧州がエネルギーに関してイデオロギー的ではなく現実的なアプローチをとっていれば、記録的なエネルギー価格の高騰は確実に避けられたでしょう(例えば、フランスの1年間の電力料金は2010年から2019年の長期平均と比較して1000%も上昇しました)。 

欧州のエネルギー危機は続いています。この数か月、私や私の同僚は、この点について何度も述べてきました。しかし希望もあります。現在の危機の影響を緩和するための解決策が少なくとも3つあり、そのうちの1つは状況をほぼ即座に緩和することができるからです。 

欧州のエネルギー政策の盲点であるエネルギー効率。政策当局は無線LANを切るようにアドバイスしていますが、実際に無線LANルーターは1時間にどれくらいのエネルギーを消費しているでしょうか?12ワット/時です。ドライヤーは3キロワット/時で、その250倍です。このように、私たちは欧州の人々に、日々の小さく簡単なエコ行動でエネルギー危機を解決できるという間違った印象を与えていますが、実際はそうではありません。私たちは技術革新、特に人工知能(AI)に投資する必要があり、それによってユーザーに迅速かつ具体的な利益をもたらし、今年の冬以降の消費を減らすことができるのです。例えば、バルセロナの地下鉄事業者は、1日に100万人以上の乗客が通勤する128の駅に、AIで制御された「インテリジェント」な空調システムを導入しました。その結果、エネルギー消費量は平均25%削減され、利用者の満足度は10%向上しました。同様のシステムは、オフィスビル、映画館、郊外のインフラなど、ほとんどどこにでも導入することが可能です。これにより、数年後ではなく、技術導入後数週間でエネルギー消費量を大幅に削減することができます。 

原子力に焦点を当てる : 好むと好まざるとにかかわらず、原子力はエネルギー問題解決に不可欠な要素です。したがって、この危機を機に、原子力発電に対する政策姿勢を見直すべきです。9月初旬、いくつかの超党派の団体が、スイスが予定通り2027年に原子力を放棄することを阻止するよう、請願を開始しました。また、フランスとイギリスだけが、大規模な原子力発電所を建設中であると報告されています。しかし、欧州諸国の多くが実は原子力発電の推進に消極的なのに対し、アジアは原子力発電を受け入れています(韓国は脱原発を撤回し、中国は原子炉の大規模な増設を加速しています)。原子力発電は問題がないわけではありませんが(フランスにおける原子炉の腐食問題など)、長期的にはエネルギーの自立と低水準のエネルギー価格を保証するものであることに注目する必要があります。また、原子力発電は安全ではないという考え方は正確ではありません。特に、放射性廃棄物は他に類を見ないほど危険であり、産業界はその扱いを知らないという通説は誤りです。実際、放射能は時間とともに急速に減少します(発電終了から約40年後には燃料棒の放射能は99%以上減少します。それに比べ、私たちが管理しているほとんどの産業廃棄物は、時間が経っても、たとえ100万年経っても毒性が弱まることはありません)。さらに、産業界はリサイクルプロセスに取り組み、一定の成果を上げています。フランスでは、すでに原子力発電の17%がリサイクル燃料によって生産されていますが、これはまだ始まりにすぎません。低炭素経済を目指すのであれば、原子力は間違いなくエネルギー転換の不可欠な要素になるはずです。 

グリーントランスフォーメーションを加速する産業インフラの構築:近年、欧州ではグリーントランスフォーメーション(太陽光、風力、バイオマスなど)に大規模な投資が行われていますが、欠けている部分があります。それは、欧州には同産業に必要なインフラがなく、移行に必要なサプライチェーンをコントロールすることができないことです。電気自動車(EV)を例に考えてみましょう。2022年6月29日、欧州連合(EU)加盟国は、2035年以降、乗用車とバンの新車はCO2を排出しないもののみ販売することで合意しました。これにより、理論上はEVの普及が促進されるはずでした。しかし、EV用バッテリーとグリーントランスフォーメーションに必要な重要鉱物の採掘と加工を支配しているのは誰でしょうか?中国です。同国が、風力タービンの世界の製造能力の50%、太陽電池の66%、蓄電池の90%を占めているのです。レアアース(希土類)は、その大部分が中国で採掘・加工されています(それぞれ59%、88%)。その他の鉱物(リチウム、コバルトなど)についても、ほぼ同じ割合となっています(下表参照)。調達を中国以外に多様化するのは簡単ではありませんし、一夜にして実現するものでもありません。しかし、少なくとも部分的に供給拠点となりうる国は他にもあります(リチウムならチリ、プラチナなら南アフリカ、コバルトならコンゴ)。これまで私たちが間違っていたのは、サプライチェーンを確保せずに、最終製品(例えばEV)に焦点を当てたことです。ロシア(化石エネルギー)、中国(新型コロナウイルスパンデミック時のマスクや重要な医薬品)と全く同じ過ちを繰り返しているのです。

冬は厳しいでしょう。それは間違いありません。しかし、2023年に危機が再発することは避けられないわけではありません。イデオロギーから脱却し、エネルギーミックスを多様化するための試行錯誤を経た解決策に注力することを前提に、欧州でエネルギー転換のための強固な基盤を構築する方法はあるのです。今は、政策当局が正しい選択をすることが求められているのです。 

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