中央銀行の決定事項は、市場がトランプ関税監視中の、付随的な余興に過ぎません。

中央銀行の決定事項は、市場がトランプ関税監視中の、付随的な余興に過ぎません。

FX 4 minutes to read
ジョン・ハーディ

グローバルマクロ戦略責任者

サマリー:  FOMCが無風通過した後に米国債利回りが横ばいであることから、円は堅調に推移しています。ECBも、全世界がトランプ関税の全体像が明らかになるのを待っている中、筋書きを変える可能性は低いと思われます。


FOMCの会合は、米国債利回りと米ドルにほとんど波紋を広げることなく過ぎていきましたが、これは背景にある事情に非常によく適合しています。つまり、市場は、FRBの決定やガイダンスを待っているのではなく、経済指標に関する結果と、それらの結果を牽引するだろう今後の政策の動き、つまりトランプ政権からの政策の動向を見守っているのです。トランプ大統領は今のところ最初に動く人、いわゆるラテン語でPrimus Motor(原動力)であり、 彼の政権の関税強化のスケジュールの明確な概要と、関税が引き上げられるかどうかについてのペース、そして世界の他の地域からのその後の反応が得られるまで、その状態が続くでしょう。関税スケジュールがわかれば、市場の価格がどの辺りにあるかがわかります。一部の商品市場においてニューヨークの銅のプレミアムがロンドンの価格に比べて上昇していることは、関税引き上げが価格に織り込まれてきているのが本当であり、それが特定の市場ですでに具現化していることを示しています。それが通貨やより広範なリスクセンチメントにも当てはまるかどうかはともかくとして、です。ところで、トランプ大統領がカナダとメキシコ、さらにはEUに対する関税に関する以前のコメントに関連して21日に言及したことを考えると、週末にはここで市場が神経質になる可能性があります。

トランプ大統領の次の動きが市場の注目を独占する一方で、今週のDeepSeekのニュースにより、主要な市場セクターに何らかの影響が続く可能性があると思わざるを得ません。MicrosoftMetaなど、今週最初に報告した主要企業は、DeepSeekについてポジティブな響き以上のコメントを出しました。例えば、Microsoft社のCEOは、「MetaCEOMark Zackerberg氏は自社のハードウェア・インフラへの設備投資支出を擁護しました。また、我が社Microsoftはクラウドサービスの容量に制約があり、すでにAzureサービスでDeepSeekを顧客に提供しているため、DeepSeekに関するニュースは『すべて良いニュース』です」と述べました。DeepSeekの導入がハイエンドチップハードウェアと関連クラウドサービスの需要を食いつぶすかどうかは、おそらく次の四半期にしかわかりません。(この記事は株式に関するコラムではありませんが、Nvidiaを含む米国のハイテク株が世界市場を支配しているため、この問題はリスクセンチメントにとって重要です。)

そうでなければ、明日には12月のPCEインフレデーターの発表が控えており、その経済指標がどちらかの方向にも大きなサプライズを生み出さない限り、この発表はちょっとした気晴らしとなるでしょう。来週は、通常のISMと金曜日の雇用統計という、より重要な米国の経済指標の発表がありますが、ここでも、大きな方向性のサプライズがあった場合だけ市場の注目を集めるでしょう。より興味深いのは、来週木曜日に行われるイングランド銀行の脇筋的な発表で、市場が英国の成長リスクを織り込んでいる以上に、イングランド銀行はハト派的な姿勢をとることになるかもしれません。ユーロ/ポンド(EURGBP)は、0.8450まで大きく動いた後、ポンドの相対的な強さを幅広く読み、今日は0.8325-50の最終的な実質サポートゾーン付近まで後退しました。

ECBは本日の会合とユーロ圏の窮状
ECBは本日、25ベーシスポイントの利下げを行い、見通しについて多くの不確実性を表明する一方で、おそらく3月の追加利下げを示唆するでしょう(ただし、「事前コミット」はしないと述べ、その後にさらなる不確実性が生じると思われます。)。これは、上記で述べているように、財政支配と米国の先駆者としての地位という新時代において、世界中で繰り返し言われる決まり文句です。クロス通貨ペア(例えば、ユーロ円(EURJPY)、等)では、明日のドイツと月曜日のユーロ圏からの1月の速報インフレ率の発表に若干の焦点が当てられる可能性があります。

チャート:ユーロ/米ドル(EURUSD)
ユーロ/米ドル(EURUSD)は、1.0500+エリアへの挑戦を断固として拒否し、3本のローソク足の宵の明星を形成し、堅固なレジスタンスを設定しましたが、1.0350-1.0325ゾーンを突破できない限り、このユーロ上昇の波の拒否はまだ完全にはされていません。この通貨ペアが今後数週間で安値に挑戦し、パリティに照準を合わせるためには、いくつかの関税に関するニュースが必要となるでしょう。

出所: サクソバンクグループ

本日発表されたドイツの第4四半期GDP(前四半期比:-0.2%)は、営業日調整ベースで0.0%ですが、どちらも予想を0.1%下回りました。欧州は悲惨な長期成長見通しに対応しようとしていますが、それがかえって米国に、EU製品の主要な輸出先を脅かす関税強化という障壁を築かせることとなっています。また、ロシアのガスを遮断していることから高コストの再生可能エネルギー源に依存せざるを得ず、エネルギーコストの高騰に苦しんでいます。 また、欧州は、自動車のような伝統的なEUの中核産業において、安価ではあるものの質がますます高くなっている、国家が支援する中国の輸出品と競争していることに気づき始めています。昨日、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)委員長は、EUの競争力を取り戻す方法についての、元ECB総裁であるマリオ・ドラギ氏の報告書に基づく、多くのアイデアをまとめた26ページの「Competitive Compass」を発表しました。この新しいレポートでは、バイオテクノロジー、宇宙、量子コンピューティング、先端材料技術に関する「行動計画」から、手頃な価格のエネルギーや脱炭素化までについて、今後5年間のあらゆる対策をまとめています。もちろん、これは企業の規制上の負担を軽減しながらのことです。新たな地政学的背景について思慮深いリーダーを務めたRabobankMichael Every LinkedInの投稿で指摘しているように、それはすべて非常にトップダウンな内容です。彼は、「目にするのは、高価で、資金の裏付けがなく、超野心的で、頭字語的な、トップダウンの、PowerPointを使ったプレゼンにより決定の下される(机上の)EU産業政策であり、抜本的な改革と絶え間ない監視を必要とするだろう。政策については、…どういうわけか事務処理を削減し、より活発に常に発展し続けてはいますが、現在、EU各国政府からの賛同はほとんど得られていません。」と述べています。EUのエネルギーコスト上昇についての緊急事態に関しては、今日のFinancial Timesの記事を見ると興味深いです。「EUの議論は、ウクライナ和平協定に関する議論の一部として、結局、ロシア産ガス供給の問題に帰結します」。 

表:主要10通貨とCNHのFXボードについての、トレンド展開とその強さ

:FXボードのトレンド・インジケーターは相対的なスケールのみ表示しており、ボラティリティが調整されています。絶対値 2 未満の値はかなり弱いですが、3 を超える値は非常に強く、6 を超える値は非常に強いことを示しています。

米国債利回りが後退する中で円高が進んでいるのは、現在、最も興味深い動きです。他通貨と比べて一番の円の強さが続くためには、米国10年債利回りが4.50%まで低下する必要があります。その他、豪ドルは今週初めの軟調なCPIを受けて下落しましたが、トランプ大統領の関税強化政策がどのような形になるのかが明らかになってしまえば、中国通貨がどこに向かっているのかがわからない状況でこの動きに歯止めをかけるのは難しいでしょう。

出所:ブルームバーグ、サクソバンクグループ

表:個々の通貨ペアのFXボード・トレンドスコアボード
ATR(Average True Range、真の変動幅平均)の測定値には濃い青色が多く、非常に静かな市場を表していますが、中国元(CNY)の方向性をめぐる不確実性により、通貨の多くについて、中国元の強さ等のバロメーターが係留(アンカリング)している、アンチポディアン(対蹠地の)・クロスの状態にあります。ユーロ/ドル(EURUSD)、ドル/円(USDJPY)、ポンド/ドル(GBPUSD)などの主要な米ドル・クロス通貨ペアでは、ATRの測定値は「Warm(黄色の)」ゾーンにあります。注:ユーロ/ポンド(EURGBP)は、ここで強い上昇線(ラリー・バー)上に位置できなければ、弱気トレンドに傾いていくでしょう。

出所:ブルームバーグ、サクソバンクグループ

口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。 

最短3分で入力完了!

コンテンツ免責事項

本ウェブサイトで提供される情報は、金融商品の売買を勧誘、推奨、または承認するものではなく、金融、投資、または取引に関するアドバイスを目的としたものではありません。当社およびサクソバンクグループの各法人は、執行専用のサービスを提供しており、すべての取引および投資はご自身の判断に基づいて行われます。分析、調査、および教育コンテンツは情報提供のみを目的としており、アドバイスや推奨として解釈されるべきではありません。

当社のコンテンツは、著者の個人的な見解を反映している場合があり、予告なく変更されることがあります。特定の金融商品の言及は、例示目的であり、金融リテラシーの向上を目的としています。投資調査として分類されるコンテンツはマーケティング資料であり、独立した調査の法的要件を満たすものではありません。

投資判断を行う際には、ご自身の財務状況、ニーズ、目標を十分に考慮し、必要に応じて独立した専門家のアドバイスを受けるかどうかの判断も含め、自己責任であることをご理解ください。当社は、提供される情報の正確性または完全性を保証するものではなく、この情報の利用により生じた誤り、脱漏、損失または損害について一切の責任を負いません。

サクソバンク証券株式会社
Saxo Bank Securities Ltd.
Izumi Garden Tower 36F
1-6-1 Roppongi Minato-ku
Tokyo 106-6036
〒106-6036 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデンタワー36F

お問い合わせ

国・地域を選択

日本
日本

【重要事項及びリスク開示】

■外国為替証拠金取引は各通貨の価格を、貴金属証拠金取引は各貴金属の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、売買の状況によってはスワップポイントの支払いが発生したり、通貨の金利や貴金属のリースレート等の変動によりスワップポイントが受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■外国為替オプション取引は外国為替証拠金取引の通貨を、貴金属オプション取引は貴金属証拠金取引の貴金属を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。また、オプションの売り側は権利行使に応える義務があります。
■株価指数CFD取引は株価指数や株価指数を対象としたETFを、個別株CFD取引は個別株や個別株関連のETFを、債券CFD取引は債券や債券を対象としたETFを、その他証券CFD取引はその他の外国上場株式関連ETF等を、商品CFD取引は商品先物取引をそれぞれ原資産とし、それらの価格の変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、建玉や売買の状況によってはオーバーナイト金利、キャリングコスト、借入金利、配当等調整金の支払いが発生したり、通貨の金利の変動によりオーバーナイト金利が受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■上記全ての取引においては、当社が提示する売価格と買価格にスプレッド(価格差)があり、お客様から見た買価格のほうが売価格よりも高くなります。
■先物取引は各原資産の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。
■外国株式・指数オプション取引は、対象とする有価証券の市場価格や対象となる指数、あるいは当該外国上場株式の裏付けとなっている資産の価格や評価額の変動、指数の数値等に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、対象とする有価証券の発行者の信用状況の変化等により、損失が発生することがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。さらに、外国株式・指数オプションは、市場価格が現実の市場価格等に応じて変動するため、その変動率は現実の市場価格等に比べて大きくなる傾向があり、意図したとおりに取引ができず、場合によっては大きな損失が発生する可能性があります。また取引対象となる外国上場株式が上場廃止となる場合には、当該外国株式オプションも上場廃止され、また、外国株式オプションの取引状況を勘案して当該外国株式オプションが上場廃止とされる場合があり、その際、取引最終日及び権利行使日が繰り上げられることや権利行使の機会が失われることがあります。対象外国上場株式が売買停止となった場合や対象外国上場株式の発行者が、人的分割を行う場合等には、当該外国株式オプションも取引停止となることがあります。また買方特有のリスクとして、外国株式・指数オプションは期限商品であり、買方がアウトオブザマネーの状態で、取引最終日までに転売を行わず、また権利行使日に権利行使を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。また売方特有のリスクとして、売方は証拠金を上回る取引を行うこととなり、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。売方は、外国株式・指数オプション取引が成立したときは、証拠金を差し入れ又は預託しなければなりません。その後、相場の変動や代用外国上場株式の値下がりにより不足額が発生した場合には、証拠金の追加差入れ又は追加預託が必要となります。また売方は、権利行使の割当てを受けたときには、必ずこれに応じなければなりません。すなわち、売方は、権利行使の割当てを受けた際には、コールオプションの場合には売付外国上場株式が、プットオプションの場合は買付代金が必要となりますから、特に注意が必要です。さらに売方は、所定の時限までに証拠金を差し入れ又は預託しない場合や、約諾書の定めによりその他の期限の利益の喪失の事由に該当した場合には、損失を被った状態で建玉の一部又は全部を決済される場合もあります。さらにこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。外国株式・指数オプション取引(売建て)を行うにあたっては、所定の証拠金を担保として差し入れ又は預託していただきます。証拠金率は各銘柄のリスクによって異なりますので、発注前の取引画面でご確認ください。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、取引証拠金を事前に当社に預託する必要があります。取引証拠金の最低必要額は取引可能な額に比べて小さいため、損失が取引証拠金の額を上回る可能性があります。この最低必要額は、取引金額に対する一定の比率で設定されおり、口座の区分(個人または法人)や個別の銘柄によって異なりますが、平常時は銘柄の流動性や価格変動性あるいは法令等若しくは当社が加入する自主規制団体の規則等に基づいて当社が決定し、必要に応じて変更します。ただし法人が行う外国為替証拠金取引については、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用いて通貨ペアごとに算出(1週間に1度)した比率を下回らないように当社が設定します。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、損失が無制限に拡大することを防止するために自動ロスカット(自動ストップロス)が適用されますが、これによって確定した損失についてもお客様の負担となります。また自動ロスカットは決済価格を保証するものではなく、損失がお預かりしている取引証拠金の額を超える可能性があります。
■外国証券売買取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。
■取引にあたっては、契約締結前交付書面(取引説明書)および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。

サクソバンク証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
第一種金融取引業、第二種金融商品取引業
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
手数料:各商品の取引手数料についてはサクソバンク証券ウェブサイトの「取引手数料」ページや、契約締結前交付書面(取引説明書)、取引約款等をご確認ください。