グローバリゼーションが塗り替えられる可能性の中、エネルギーと金属の確保が重要 グローバリゼーションが塗り替えられる可能性の中、エネルギーと金属の確保が重要 グローバリゼーションが塗り替えられる可能性の中、エネルギーと金属の確保が重要

グローバリゼーションが塗り替えられる可能性の中、エネルギーと金属の確保が重要

株式 10 minutes to read
PG
ピーター・ガンリュー

株式戦略責任者(Saxo Group)

サマリー:  株式市場は24日のウクライナ攻撃に不意を突かれ、株価が急落しました。ロシア株は、深刻な経済制裁への懸念から26%下落しました。24日の取引では、エネルギーセクターと鉱業セクターが相対的なヘッジとして最も有効であることが示されています。これらは、今後、インフレ圧力を乗り切るうえで株式ポートフォリオ内で重要な役割を果たすとともに、地政学的リスクの高まりに対するリスク分散にもなるはずです。東欧・ロシアへのエクスポージャーが最も高いのはどの銘柄か、また、S&P 500指数が現在の水準からどの程度上昇する可能性があるかを見ていきます。また、当社の防衛テーマバスケットについても取り上げます。さらに、個人投資家はまず資産配分を考え、それから個別株を検討すべきだということについてもお話しします。


コモディティは安全保障リスクの中の「手ごわい」セーフヘブンだ

欧州をはじめとする世界経済は、エネルギー危機やコモディティの需給逼迫に直面していた中で、ウクライナ侵攻により、突如として、短期的・長期的なエネルギー・金属の確保に関する深刻な状況へと陥りました。24日のポッドキャストSaxo Market Callでお伝えした通り、この紛争および金融市場の次なるステップは、欧米(特に欧州)が、天然ガスや工業用金属などの主要資源への報復のリスクを冒しながら、ロシアに対する厳しい制裁を通じて自国経済にどこまで損害を与えることを厭わないかということです。欧州では、ロシアの天然資源に依存するオランダ、ドイツ、イタリアの株式市場で、こうした脆弱性が露呈しています。ウクライナ情勢を背景にインフレ率は高止まりする見込みであり、セーフヘブンへの資金流入により、名目金利が低下し、実質金利は大幅なマイナスになりそうです。インフレ圧力は引き続き利益率と株価のバリュエーションに悪影響を及ぼすでしょう。

24日のウクライナにおける行動から派生したことの1つは、グローバリゼーションが塗り替えられる可能性があるということです。というのも、最初にパンデミック、そして今度はウクライナ情勢により、エネルギーや工業生産の確保という面で先進諸国の経済がいかに脆弱であるかが示されてきたからです。グローバルなサプライチェーンの変革プロセスはすでに始まっていますが、さらに加速する可能性があると我々は考えています。この再編の中で、アフリカは資源アクセスを巡る重要な拠点・争いの場となる可能性があります。また、インドのような国はグローバルなサプライチェーンの変革から大きな恩恵を受ける可能性があります。

23日に書いたように、エネルギー株は地政学的リスクと継続的なインフレ圧力に対するヘッジとして有効だということが既に実証されており、今後も有効であるはずです。24日の取引では、欧州のエネルギーセクターが最も好調に推移している一方、金融セクター、一般消費財セクター(自動車メーカーなど)は下落を主導しています。素材セクターでは、建設資材、紙・林産品、化学が大幅に下落した一方、金属・鉱業は鉄鋼メーカーの主導で小幅な下落にとどまり、鉱山会社とアルミ製錬企業は上昇しています。個人投資家がエネルギーや鉱業に投資するのに最適な方法は、幅広いETFを利用することです。

ロシアの株式はウクライナ侵攻により特に大きな打撃を受け、ロシアの主要株価指数は現地通貨で26%下落しました。関連するロシア資産を持つ欧州企業も打撃を受けています。以下の表は、東欧・ロシアへのエクスポージャーが最も高い米国・欧州の上場株式を示しています。米ドルベースでは、ロシアの株式市場は9月の高値から62%下落し、株価は2013年以降の平均を25%下回りました。

Source: Bloomberg
Source: Bloomberg
Source: Bloomberg

現在の金融市場は予測不可能な状況にあり、リスク(定量化できる概念)と対立する不確実性という概念 (定量化できない概念)を内包しています。そのため、株価がどこで新たな均衡を保つのか、誰にも結果は分かりません。簡単な目安は、S&P500と200日移動平均線のスプレッドに注目することです。このスプレッドは、パンデミックによる急落中に安値で-29%に達しています。今回の影響がそれより少ない-20%程度に抑えられるとすると、S&P500は3,500程度となり、パンデミック前の水準をわずかに上回ります。欧州の株式市場の中には、既に2年分の株式リターンを消し去り、パンデミック直前の水準に戻っているところもあります。

Source: Saxo Group

2022年の最も優れたテーマになる可能性がある防衛テーマバスケット

当社の防衛のテーマバスケットは、23日時点では年初来で横ばいとなっています。これは、投資家が軍事支出の増加を見込んで、欧米の防衛関連企業を選好したからです。ウクライナ情勢により、今後数年間の軍事支出が増加すると予想されます。そのため、防衛テーマバスケットは、コモディティバスケットと並んで今年の最も優れたバスケットになる可能性があります。以下の表は当社の防衛バスケットの構成銘柄を示していますが、推奨銘柄を示すものではなく、ヒントにするべきものです。これは、防衛予算に対するエクスポージャーが最も大きい企業の一覧です。

NameMkt Cap (USD mn.)Sales growth (%)EBITDA growth (%)Diff to PT (%)5yr return
Raytheon Technologies Corp137,65313.8319.713.555.9
Airbus SE100,8434.5234.228.275.2
Boeing Co/The114,5137.192.832.918.4
Lockheed Martin Corp105,9082.55.65.066.9
Northrop Grumman Corp60,268-3.129.25.470.8
General Dynamics Corp60,0581.41.49.027.7
L3Harris Technologies Inc42,442-2.139.413.2112.5
TransDigm Group Inc34,7812.917.417.9203.2
BAE Systems PLC25,5011.329.55.120.5
Rolls-Royce Holdings PLC13,286-3.9NA10.1-53.2
Thales SA20,246-1.72.921.53.0
Howmet Aerospace Inc14,163-5.54.818.842.0
Dassault Aviation SA10,782-14.4-28.012.213.5
Elbit Systems Ltd7,70112.130.3-5.340.4
Kongsberg Gruppen ASA5,6857.229.911.5179.8
Leonardo SpA4,0711.3-7.935.3-45.7
Rheinmetall AG4,8242.4NA16.956.4
Saab AB2,98610.561.147.0-32.5
Ultra Electronics Holdings PLC2,9350.04.4-1.585.1
QinetiQ Group PLC1,9897.2-9.132.04.1
Babcock International Group PLC2,0860.2-94.420.2-60.3
Chemring Group PLC993-2.3-2.533.345.6
INVISIO AB52911.5-26.784.471.3
Avon Protection PLC4250.7-98.866.710.9
Avio SpA303-17.7-40.449.41.3
Aggregate / median values774,9691.34.817.940.4

Source: Bloomberg and Saxo Group

ポートフォリオをどうするか?

リスク分散に関しては、過去の記事で詳しく述べてきた通り、多くの場合、マーケットタイミングは解決策になりません。なぜなら、運良くうまく売り抜けたとしても、再び買いに入るタイミングが分からないからです。多くの個人投資家は株式ポートフォリオだけを保有しています。それでは、株式のポジションが様々な業種に分散されているとしても、リスク分散という点で非常に無防備だと言えます。というのは、危機においては株式の全てが密接に関連し合うからです。

テールリスクを最小限に抑えながら高いリスク調整後リターンを目指すポートフォリオでは、短期国債(実質利回りがマイナスでも良い)、グローバル株式、物価連動国債、モーゲージ債、金、コモディティ(23種のコモディティから構成されるブルームバーグのコモディティ指数)への配分を大きくするべきです。投資家は、資産配分を十分に分散した上でならば、サイバーセキュリティ、コモディティセクター、物流、防衛など、前述のテーマに関する特定のアプローチのために個別株を追加してもかまいません。旅行関連株は、今年に入って好調に推移していましたが、今回の危機で大きな打撃を受け始めると見られます。また、半導体は価格決定力があり、見通しは良好ですが、半導体のリスクプレミアムはさらに上昇する可能性があります。

口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。 

最短3分で入力完了!

【ご留意事項】

■当資料は、サクソバンクグループのアナリストによるマーケット分析レポートの転載、もしくは外部のアナリストからの寄稿となっております。
■当資料は、いずれも情報提供のみを目的としたものであり、特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
■当資料は、作成時点において執筆者またはサクソバンク証券(以下「当社」)が信頼できると判断した情報やデータ等に基づいていますが、執筆者または当社はその正確性、完全性等を保証するものではありません。当資料の利用により生じた損害についても、執筆者または当社は責任を負いません。 
■当資料で示される意見は執筆者によるものであり、当社の考えを反映するものではありません。また、これら意見はあくまでも参考として申し述べたものであり、推奨を意味せず、また、いずれの記述も将来の傾向、数値、投資成果等を示唆もしくは保証するものではありません。 
■当資料に記載の情報は作成時点のものであり、予告なしに変更することがあります。 
■当資料の全部か一部かを問わず、無断での転用、複製、再配信、ウェブサイトへの投稿や掲載等を行うことはできません。
■上記のほか、当資料の閲覧・ご利用に関する「免責事項」をご確認ください。 
■当社が提供するデリバティブ取引は、為替相場、有価証券の価格や指数、貴金属その他の商品相場または金利等の変動によって損失を生じるおそれがあります。また、お預けいただく証拠金額に比べてお取引可能な金額が大きいため、その損失は、預託された証拠金の額を上回る恐れがあります。
■当社が提供する外国証券取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。手数料については、「取引金額×一定料率」又は「取引数量×一定金額」で求めた手数料が一回の取引ごとに課金されます。ただし手数料の合計額が当社の定める最低手数料に満たない場合は、手数料に代えて最低手数料を徴収させていただきます。また取引所手数料等の追加費用がかかる場合があります。 
■取引にあたっては、取引説明書および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。 
■当社でのお取引にかかるリスクやコスト等については、 こちらも必ずご確認ください。

サクソバンク証券株式会社
Saxo Bank Securities Ltd.
Izumi Garden Tower 36F
1-6-1 Roppongi Minato-ku
Tokyo 106-6036
〒106-6036 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデンタワー36F

お問い合わせ

国・地域を選択

日本
日本

【重要事項及びリスク開示】

■外国為替証拠金取引は各通貨の価格を、貴金属証拠金取引は各貴金属の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、売買の状況によってはスワップポイントの支払いが発生したり、通貨の金利や貴金属のリースレート等の変動によりスワップポイントが受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■外国為替オプション取引は外国為替証拠金取引の通貨を、貴金属オプション取引は貴金属証拠金取引の貴金属を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。また、オプションの売り側は権利行使に応える義務があります。
■株価指数CFD取引は株価指数や株価指数を対象としたETFを、個別株CFD取引は個別株や個別株関連のETFを、債券CFD取引は債券や債券を対象としたETFを、その他証券CFD取引はその他の外国上場株式関連ETF等を、商品CFD取引は商品先物取引をそれぞれ原資産とし、それらの価格の変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、建玉や売買の状況によってはオーバーナイト金利、キャリングコスト、借入金利、配当等調整金の支払いが発生したり、通貨の金利の変動によりオーバーナイト金利が受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■上記全ての取引においては、当社が提示する売価格と買価格にスプレッド(価格差)があり、お客様から見た買価格のほうが売価格よりも高くなります。
■先物取引は各原資産の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。
■外国株式・指数オプション取引は、対象とする有価証券の市場価格や対象となる指数、あるいは当該外国上場株式の裏付けとなっている資産の価格や評価額の変動、指数の数値等に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、対象とする有価証券の発行者の信用状況の変化等により、損失が発生することがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。さらに、外国株式・指数オプションは、市場価格が現実の市場価格等に応じて変動するため、その変動率は現実の市場価格等に比べて大きくなる傾向があり、意図したとおりに取引ができず、場合によっては大きな損失が発生する可能性があります。また取引対象となる外国上場株式が上場廃止となる場合には、当該外国株式オプションも上場廃止され、また、外国株式オプションの取引状況を勘案して当該外国株式オプションが上場廃止とされる場合があり、その際、取引最終日及び権利行使日が繰り上げられることや権利行使の機会が失われることがあります。対象外国上場株式が売買停止となった場合や対象外国上場株式の発行者が、人的分割を行う場合等には、当該外国株式オプションも取引停止となることがあります。また買方特有のリスクとして、外国株式・指数オプションは期限商品であり、買方がアウトオブザマネーの状態で、取引最終日までに転売を行わず、また権利行使日に権利行使を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。また売方特有のリスクとして、売方は証拠金を上回る取引を行うこととなり、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。売方は、外国株式・指数オプション取引が成立したときは、証拠金を差し入れ又は預託しなければなりません。その後、相場の変動や代用外国上場株式の値下がりにより不足額が発生した場合には、証拠金の追加差入れ又は追加預託が必要となります。また売方は、権利行使の割当てを受けたときには、必ずこれに応じなければなりません。すなわち、売方は、権利行使の割当てを受けた際には、コールオプションの場合には売付外国上場株式が、プットオプションの場合は買付代金が必要となりますから、特に注意が必要です。さらに売方は、所定の時限までに証拠金を差し入れ又は預託しない場合や、約諾書の定めによりその他の期限の利益の喪失の事由に該当した場合には、損失を被った状態で建玉の一部又は全部を決済される場合もあります。さらにこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。外国株式・指数オプション取引(売建て)を行うにあたっては、所定の証拠金を担保として差し入れ又は預託していただきます。証拠金率は各銘柄のリスクによって異なりますので、発注前の取引画面でご確認ください。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、取引証拠金を事前に当社に預託する必要があります。取引証拠金の最低必要額は取引可能な額に比べて小さいため、損失が取引証拠金の額を上回る可能性があります。この最低必要額は、取引金額に対する一定の比率で設定されおり、口座の区分(個人または法人)や個別の銘柄によって異なりますが、平常時は銘柄の流動性や価格変動性あるいは法令等若しくは当社が加入する自主規制団体の規則等に基づいて当社が決定し、必要に応じて変更します。ただし法人が行う外国為替証拠金取引については、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用いて通貨ペアごとに算出(1週間に1度)した比率を下回らないように当社が設定します。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、損失が無制限に拡大することを防止するために自動ロスカット(自動ストップロス)が適用されますが、これによって確定した損失についてもお客様の負担となります。また自動ロスカットは決済価格を保証するものではなく、損失がお預かりしている取引証拠金の額を超える可能性があります。
■外国証券売買取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。
■取引にあたっては、契約締結前交付書面(取引説明書)および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。

サクソバンク証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
手数料:各商品の取引手数料についてはサクソバンク証券ウェブサイトの「取引手数料」ページや、契約締結前交付書面(取引説明書)、取引約款等をご確認ください。