市場動向
ナスダック100(USNAS100.I)とS&P500(US500.I) 米国株は2日続落しました。もっとも、パウエルFRB議長が暴走するインフレを鎮静化するために引き締めをしばらく持続するとした一方で、2023年の利下げ転換はないことを示唆した金曜日(8月26日)の売りに比べると、本日は小幅な売りにとどまりました。ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は、前回のFOMC後に「株式市場が上昇している様子には納得せず」、今回は「インフレ率を2%に戻すというFRBのコミットメントの真剣さを人々が理解した」と述べたとのことです。
ハイテク株が市場の足を引っ張り、エヌビディアが2.8%、テスラが1.1%下落しました。 ツイッター(TWTR:xnys)は、イーロン・マスク氏がツイッターの内部告発者を証人として召喚したことで1.1%下落しました。 一方、昨夜はバリュー株の上昇がやや相場を支え、石油・ガス・農業セクターが1-2%上昇しました。これは、OPECプラスの減産の可能性とリビアでの紛争がドル高を相殺し、月曜日に原油価格が4%上昇したことによるものです。農産物セクターは、小麦価格が4.9%上昇、トウモロコシが2.2%上昇(2か月ぶりの高値)と、熱波により米国の作物が予想以上の被害を受けたことが、価格上昇要因となっています。このため、市場はリスクオフのモードに戻り、成長株(金利上昇により将来の収益が目減りする)を売り、キャッシュフローの増加分を、価値が維持されやすいコモディティを買う方向にシフトしています。
米国債(TLT:xnas, IEF:xnas, SHY:xnas)
米国債利回りはイールドカーブ全体で上昇しました。2年債利回りは日中、2007年11月以来の高水準となる3.48%まで上昇した後、上昇幅を縮小し、3bp高の3.42%に落ち着きました。10年債は7bp高の3.11%、2-10年債は3bp高の-32bpと、イールドカーブはスティープ化しました。
香港のハンセン(HSIQ2)と中国のCSI300(03188:xhkg)
ジャクソンホール会議後に米国株式が大きく下落する中、香港と中国の株式は、ハンセン指数が-0.7%、CSI300が-0.4%と比較的落ち着いた取引となりました。先週金曜日、米中両国の規制当局が監査資料の閲覧について合意したことは、公式発表の前に既に認識されていたため、月曜日に中国のインターネット株の新たな買いにつながることはありませんでした。また、米中両国の規制当局の解釈が異なっている様子で、合意内容が双方にとって満足のいく形で実施されるかどうかは不透明です。美団(03690:xhkg)は第2四半期、ハンセンテック指数が1.2%下落した中でも堅調な業績を維持し、2.6%上昇しました。
中国の工業部門企業利益前年同期比14.5%減(6月は1.1%増)、前月比11.3%減と低迷しました。 これは主に上流部門に起因するものです。 石炭鉱業株は当初低迷しましたが、後場に入り上昇し、香港と本土の取引所では高値圏で取引を終えました。中国の自動車メーカー、吉利汽車(00175:xhkg)は1.7%上場しました。同社のEVブランド「Zeekr」シリーズが、1回の充電で1000キロ以上の走行距離を実現する、中国の電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)の新型電池を初めて採用すると発表したことによるものです。 中国最大の半導体メーカー、中芯国際集成電路製造(SMIC) (00981:xhkg) は2.1%下落、天津に12インチウェハーを製造する工場の建設に75億米ドルを投じると発表しました。ロイター通信が、中国人民銀行と銀行規制当局が銀行に対して、資金を金融投資に回すよりも実体経済を支えるための融資拡大を要請していると報じたため、中国の銀行は弱い値動きとなりました。
米ドル/円の弱さにより日銀に再び圧力
ジャクソンホール会議でのパウエル議長のタカ派的な講演を受け、FF金利に対するマネーマーケットの見方にはほとんど変化がないにも関わらず、米ドル/円は7月の記録的な高値を試すところまで戻りました。FF金利のピークは依然として3.8%とみられていますが、一部のメンバーはインフレに対抗するために4%以上の水準が必要であると示唆し始めています。9月の予想ドットプロットが注目されますが、その前に雇用統計と消費者物価指数も控えています。FRBがさらなる引き締め政策をとり、米国の10年債利回りが上昇すれば、日銀のイールドカーブ・コントロール政策によって日本の利回りが依然として低い水準に抑制されている中、米ドル/円は高値を更新する可能性が高いと思われます。一方、米国のデータが下振れした場合、米ドル/円の下値余地は非常に大きくなります。
原油価格(CLU2 & LCOV2)
OPECの減産やリビアの生産停止による供給減が懸念される中、原油価格は1か月ぶりの高値を付けました。ブレント原油先物は、アジアの朝方に若干軟化したものの、1バレル105ドルを超えて上昇し、WTI原油は1バレル97ドルまで上昇しました。これは先週、港湾施設の破損により、カザフスタンからの原油輸出が数か月にわたって影響を受ける可能性があるというニュースを受けたものです。一方、2015年の核合意の復活を巡るイランと米国の交渉は数週間長引く可能性があり、差し迫った供給急増の懸念は緩和されました。
考慮すべき事項
ボラティリティ・インデックスが9週間ぶりの高水準に上昇し、ボラティリティがさらに上昇することを示唆。米国債利回りの急上昇によりファンダメンタルズがそれを裏付け。
ジャクソンホール会議でのパウエル議長の8分間の講演後、ボラティリティ・インデックスは過去9週間で最も高い水準まで上昇し、上昇トレンドのパターンを形成し、市場のボラティリティがさらに上昇することを示唆しています。当社は、市場が、より長期にわたる金利上昇とインフレを織り込み始めたばかりだと考えています。債券市場で利回りが再び急上昇していることが、このことを裏付けています。しかし警戒すべきなのは、先物市場は依然として、FRBが2023年に利下げに転じるとみていることです。FRBが利下げに転換することはないことを示唆しているにも関わらず、です。FRBがさらにタカ派的な発言をし、予想以上の利上げを実施すれば、市場の変動性がさらに高まり、成長セクターや金利に敏感な銘柄への売りが圧力となる可能性が高いと思われます。
シェルCEO、欧州のガス危機の長期化に警鐘
英石油大手シェルのベン・ファン・ブールデンCEOは、ノルウェーのONS会議からコメントを発表し、欧州は今後、冬のガス不足が繰り返される可能性があることを示唆しました。これは、欧州が冬の需要に対して既に備蓄しているという報道を否定するものであり、長期的には幅広いエネルギー供給への移行が引き続き最重要課題であるという当社の考えを裏付けるものです。短期的には、需要破壊が唯一の解決策と考えられ、ファン・ブールデンCEOは計画停電や節電の必要があることを強調しました。
ユーロ圏のインフレとノルドストリームのメンテナンスがECBにとってのカギ
ここ数日のユーロ圏のガス価格や電力コストに関する広範な報道を見ても、ユーロ圏のインフレの方向性に疑問の余地はないでしょう。しかし、7月にユーロ圏のインフレ率が過去最高の8.9%に達した後、8月に石油販売価格が低下したことを考えると、多少の軟化はあるかもしれません。ガスプロムが今週もノルドストリーム・パイプラインのメンテナンスを行うことを発表したため、ドイツでは依然としてガス供給への懸念が残っています。食品価格も再び上昇しており、第4四半期のヘッドライン・インフレ率のさらなる上昇も否定できません。欧州中央銀行による75bpの利上げを求める声はすでに高まっており、今週発表予定の消費者物価指数で強さが確認されれば、利上げ支持の声が高まる可能性があります。しかし、ノルドストリームが3日間の定期保守を終えて予定通り供給が再開され、示唆されているような能力増強の可能性もあれば、今後数か月の間に欧州のガス価格が大幅に下落し、光熱費が軽減される可能性があります。
ECBレーン氏、大幅利上げに慎重姿勢
ECBのチーフエコノミスト、レーン理事は月曜日(8月29日)、大幅な利上げではなく、段階的かつより安定したペースでの利上げが重要だと述べました。これは、9月の会合で75bpsの利上げを求める声を押し戻し、金融システムが金利変動を吸収できるようにすることを主張したものです。さらに、インフレについてレーン氏は、長期的なインフレ期待は依然として目標の2%に近いとしながらも、短期的なインフレ期待はかなり高まっていると述べました。
BYD、上期業績は事前発表の上限値
中国の自動車メーカー、比亜迪(01211)の上半期の売上高が前年同期比66%増の1510億人民元となりました。 セグメント別では、自動車が前年同期比130%増、携帯端末が同4.8%減となりました。純利益は206%増の35億9500万元となり、事前発表の28億〜36億元の上限に達しました。2022年の2度にわたる値上げとサプライチェーンの混乱にもかかわらず、台数の伸び(第2四半期の新エネルギー乗用車は35万3000台、前年同期比265%増)は市場予想を上回りました。 同社のEV市場シェアは29%(2021年17%)に上昇しています。
ウラン企業など原子力関連企業が再び脚光を浴びる
イーロン・マスク氏は、ヨーロッパがエネルギー危機に直面する中、各国は既存の原子力発電所を停止すべきではないと述べました。「よく設計された原子力発電所があるなら、それを停止すべきではない。特に今は」と、ノルウェーでのエネルギー会議の中でマスク氏は述べましたた。その結果、グローバルXウランETFは月曜日に7.4%上昇し、米国のウラン株の上昇に支えられ、6月8日以来の高値となりました。アジア太平洋地域のウラン株で注目すべきは、オーストラリアのパラディン、ディープ・イエロー、ボス・エナジー、日本の関西電力、東京電力、三菱重工業などです。韓国では、斗山エナビリティ、韓国電力公社(KEPCO)、ヨーロッパでは、イエロー・ケーキとカザトムプロムに注目します。
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