テクノロジーの先へ:第2四半期決算が示した、広がるAI投資テーマ
重要なポイント:
- AIは、より幅広い設備投資サイクルへと発展:データセンターには、重機、発電設備、送電網インフラ、冷却設備、不動産、そして多額の外部資金が必要です。
- その動きは企業決算で一段と鮮明に:GEベルノバは上期に50億米ドル超のデータセンター関連受注を開示しました。イートンはデータセンター関連売上高が約65%増加し、デジタル・リアルティとトレイン・テクノロジーズも、それぞれリースと業務用空調需要の力強い伸びを示しました。
- 投資対象セクターの広がりは、必ずしもリスク分散を意味しない:各社は異なる業種に属していますが、増分需要の多くは、最終的にハイパースケーラーによる継続的な投資に依存しています。
ここ数年、AIへの投資といえば、主にテクノロジー分野を意味していました。エヌビディア、半導体、メモリー、ネットワーク、そしてハイパースケーラーそのものです。
しかし昨今では、その定義では狭すぎるようになっています。
AIデータセンターは、GPUだけでは稼働しません。建設し、送電網に接続し、冷却し、安定した電力で支え、資金を調達する必要があります。こうした要件は、従来ならAI関連株とはみなされなかった企業の決算にも、ますます表れています。
ディアとキャタピラー:データセンター建設を支える重機と建設需要
ディアの直近の建設・林業部門の売上高は、前年同期比18%増加しました。米国のインフラ投資とAIデータセンター建設が、その一因となっています。
キャタピラーにも同様の傾向が見られました。建設機械部門の売上高は35%増、エネルギー・運輸部門は17%増となりました。エンドユーザー向けの大型発電機セットとタービンの販売が大きく伸び、経営陣はデータセンター需要を重要な成長要因として挙げています。
投資家の視点:当社の見方では、これらの決算は、AIインフラへの投資が伝統的な産業企業の業績にも影響する規模へ拡大していることを示しています。ただし、ディアもキャタピラーもAIに特化した投資対象ではありません。農業、鉱業、建設、そして幅広い景気循環が、引き続き重要な業績要因です。
AIインフラの拡大は、発電と送電網のテーマにもなりつつあります。
GEベルノバは、2026年上期に50億米ドルを超えるデータセンター関連受注を計上しました。これはすでに2025年通年の同受注額の2倍を超えています。第2四半期の受注全体は、オーガニックベースで88%増加しました。
ドミニオン・エナジーの決算は、需要側の裏付けを示しています。同社のバージニア事業は世界最大級のデータセンター市場の一つで事業を展開しており、同部門の第2四半期の調整後営業利益は22%増の6億7,000万米ドルとなりました。データセンター需要の拡大が、電力負荷の伸びに寄与しています。
投資家の視点:当社は、利用可能な電力が今後のAIインフラ拡大を左右する主要な制約の一つになりつつあると考えています。これは、発電、送電、公益事業投資への需要を支える可能性があります。一方で、この成長に対応するには多額の設備投資が必要であり、規制や資金調達コストによって、最終的に株主リターンへ結び付く度合いが左右されます。
イートンとトレイン・テクノロジーズ:演算密度の上昇で電力・冷却インフラの需要が拡大
電力がデータセンターに届いた後は、消費電力が一段と高まるサーバーへ安定的に配電しなければなりません。また、こうしたサーバーは大量の熱を発生させます。
イートンは、第2四半期にデータセンター関連売上高が前年同期比約65%増、同受注が約85%増となりました。同社は、データセンター内で使用されるスイッチギア、遮断器、配電システムなどを提供しています。
トレイン・テクノロジーズでは、米州の業務用HVAC受注が50%増、応用機器の受注が約130%増となりました。受注残高は70%増の121億米ドルに達しています。同社はAI関連売上高を単独では開示していませんが、データセンター向け冷却設備は業務用需要を支える重要な要因です。
投資家の視点:これらの決算は、AIを支える目立ちにくいインフラ、特に電力管理と冷却設備の重要性が高まっていることを示唆しています。リスクとしては、高い成長期待がすでに株価に織り込まれている可能性があること、そして受注の伸びがデータセンター建設の継続に依存していることが挙げられます。
デジタル・リアルティとブラックストーン:データセンター需要が不動産・インフラ資産を下支え
AI関連投資の拡大を背景に、データセンター向け不動産やデジタルインフラ資産への需要が高まっています。
デジタル・リアルティの第2四半期売上高は前年同期比29%増となりました。年間換算で3億700万米ドルの新規契約を締結し、四半期末のリース受注残高は過去最高の19億米ドルに達しました。契約更新時の現金ベース賃料上昇率は25.4%でした。
ブラックストーンの事例も同様の傾向を示しています。同社によると、第2四半期に価値が上昇した上位10件の投資のうち9件がAI関連で、QTSデータセンターなどのデジタルインフラ資産も含まれていました。
投資家の視点:こうした動きは、計算能力と電力インフラを同時に確保できるエリアへの需要が急速に高まっていることを示しています。一方で、データセンター不動産は極めて資本集約的な事業であり、金利環境や電力供給能力、将来的な利用率の前提に大きく左右されることになります。
ゴールドマン・サックスとバンク・オブ・アメリカ:AIインフラ整備には巨額の資金が必要
データセンター投資の規模が拡大するにつれ、AIサイクルは銀行や資本市場にとっても重要性を増しています。
ゴールドマン・サックスの第2四半期の投資銀行業務手数料は55%増の34億米ドルとなりました。ただし、AI関連取引による寄与額は個別に開示していません。
バンク・オブ・アメリカは、2025年以降、AI関連企業による債券・株式市場での資金調達を、約5,000億米ドル支援したとしています。
企業がデータセンター、GPU、発電設備、周辺インフラへの投資資金を手当てするなか、資金調達機会は融資、債券発行、株式による資金調達、ストラクチャード・ファイナンス、アドバイザリー業務へと広がっています。
投資家の視点:私たちは、AIが株式市場のテーマであるだけでなく、資本市場全体を動かすテーマへと発展しつつあると考えています。ただし、銀行業界におけるAIの恩恵は設備投資関連企業ほど直接的ではありません。銀行の収益は依然として金利環境、信用状況、市場取引の活発さ、そしてM&Aや資金調達を含む取引環境全般に大きく左右されるためです。
企業決算が投資家に示していること
企業決算は、AI投資がもはや半導体やソフトウェアだけの話ではないことを示しています。
私たちは、AI投資テーマは「テクノロジー銘柄への投資」から、「AIを支えるための設備投資サイクルへの投資」へと転換してきていると捉えています。
ただし、注意すべき点もあります。業種が異なる企業へ投資しているように見えても、その収益拡大の源泉をたどると、最終的にはAI向け支出を続けるハイパースケーラーに行き着くケースが増えているからです。