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マーケット・ストラテジスト(Saxo Group)
サマリー: 中国政府が再び経済成長を目指す中、資源依存型のオーストラリア経済はコモディティ需要の回復による恩恵が期待でき、2023年も好調なスタートを切りそうです。
中国が3年ぶりの経済再開によってGDP成長率5%という新たな目標に向かって動き出す中、2023年には中国のインフラ投資が加速し、それを支える電力向けの石炭需要も拡大する見通しです。投資家は、石炭と金属セクターへのエクスポージャーの積み増しを開始していますが、その背景には、コモディティの最大消費国である中国が2023年上半期に大規模な調達に動くことによって、資源セクターが恩恵を享受するとの期待があります。すでに金属価格は20~50%上昇しており、需給見通しも依然ひっ迫しています。本稿では、オーストラリアの金属および石炭企業の投資機会を探ります。
中国は電力逼迫を回避するために、燃料炭の生産拡大に動き始めており、2023年の生産量の目標は過去最高となる46億トンを目指しています。一方、2年ぶりにオーストラリア産石炭の輸入を再開しており、国内の石炭需給が逼迫している兆しを示しています。石炭の禁輸が解除されれば、過去最高益を達成し、株価が300%余り上昇した石炭生産のWhitehaven Coalをはじめ、2022年後半以降過熱ぎみだった市場が冷え込む可能性もあります。また、投資家はエネルギー市場の利益を確定し、代わりに金属に資金を振り向け始めている可能性があることを示唆しています。その背景には、当グループのコモディティ戦略責任者であるオール・ハンセンが四半期予想で指摘している通り、金属が高騰する材料が揃っていることがあります。
鉄鋼製造の主原料である鉄鉱石は、中国で10月に付けた安値から50%余り回復しています。また、工業用金属として重要な役割を果たすだけでなくグリーントランスフォーメーションや住宅建設に不可欠な銅は2022年7月の安値から28%上昇したほか、建設、自動車、電子機器の重要な材料となるアルミは2022年9月の安値から23%値を戻しています。このように、資源関連銘柄の株価は軒並み上昇しています。旺盛な需要や供給サイドの投資不足などの基本的要因が中長期的に価格を下支えしています。 こうした中、一部の市場(S&P/ASX 200 等)では資源メジャーの株価上昇がリターンを押し上げており、このトレンドは2023年上半期も継続すると予想されます。銅やアルミを生産するBHP、Rio Tinto、Fortescue Metalsといったコモディティ最大手の株価は、中国経済再開とキャッシュフロー拡大への期待感の高まりを背景に、年初の数週間で軒並み過去最高値を更新しています。2023年の相場を支えるもう一つの材料はドル安の進行です。市場でFRBの利上げペース減速し、今年後半には利下げに転じるとの見方が強まる中、米ドルはすでに10%近く下落しました。ドル建てで取引されるコモディティにとって、ドル安はさらなる支援材料となるでしょう。
オーストラリア株式市場(ASXSP200.I)は、その時価総額の25%を占める鉱業セクターの部門の好調さに支えられ、年初の数週間で史上最高値に迫る水準(あと2%程度)まで上昇しました。スティーン・ヤコブセンや株式アナリストのピーター・ガンリューは今回の四半期予想で、有形資産を主体とする企業(オーストラリアの鉱業会社は有形資産に大きく関与している)と無形資産を主体とする企業(無形資産・ハイテク会社はS&P500指数の時価総額の大きな部分を占めている)の相違に着目しています。また、コンセンサス予想では今年、オーストラリア200(ASX200指数)を構成する企業群全体の利益は前年比32%成長する見通しである一方、S&P500指数は同21%、ハイテク企業の比率が高いNasdaq 100指数は同13%となっています。
ブルームバーグのコンセンサス予想によると、オーストラリアの鉱業セクターの利益成長率は70%を上回る見通しです。金属価格はボラティリティが高く、鉱業セクターの株価も変動しやすい傾向にありますが、コンセンサス予想では、リチウム関連企業に最も高い利益成長率が見込まれており、続いて金、銅、そして鉄鉱石およびその他の金属関連の企業の利益が好調に推移する見通しです。銅、鉄鉱石、アルミニウム関連の銘柄をお探しの場合は、以下の大手鉱業・資源会社にご注目ください。
BHP - BHPは、時価総額が2,490億豪ドルに達する世界最大の鉱業会社です。将来的な事業拡大を見据えて、鉱業大手のOz Mineralsの買収を目指す傍ら、世界最大の肥料会社となることを目指してポタッシュ(肥料)の生産にも乗り出しています。BHPは、世界で最も強力なキャッシュフローを創出してきた実績を誇り、2023年の予想配当利回り(コンセンサス予想)は9.6%に達しています。直近の決算期の売上構成比は、鉄鉱石が48.7%、銅が26.7%、石炭が24.6%を占めています。
Rio Tinto - Rio TintoはBHPに続いて世界第2位の鉱業・資源会社で、評価額は1,780億豪ドルに達します。直近の通期決算の売上構成比は鉄鉱石が58.1%、アルミが21.5%、銅が10.9%、残りはその他の金属が占めています。2023年の予想配当利回り(コンセンサス予想)は7.9%です。
Fortescue Metals - Fortescueは、オーストラリア最大の鉄鋼業に特化した企業で、時価総額は680億豪ドルに上ります。同社は売上の約89%を鉄鉱石、残りを鉄鉱石の海上輸送から得ています。一方、同社は将来的に水素供給事業を世界的に展開する計画を進めています。また、鉄鉱石事業で化石燃料の使用を排除するために62億豪ドル規模のCO2 削減計画を掲げており、ディーゼル船の電動化やトラック輸送のグリーン燃料化に向けた取り組みを進めています。Fortescueの予想配当利回り(コンセンサス予想)は9.3%と、オーストラリアで最も配当利回りの高い企業の一つとなっています。