ドル円(USDJPY)

ドル円(USDJPY)

FX
山中 康司

アナリスト/アセンダント代表

サマリー:  今週も先週に続いてドル円を取り上げました。ドル円は先週以降も雇用統計の上振れ、CPIの下振れと荒っぽい値動きを続けています。そうした中で忘れてはいけないのが米国のインフレ目標は2%であるということです。クリーブランド連銀総裁はタカ派ではあるものの、メスター総裁の発言は今後の米国の金融政策を考える上でヒントになると思います。同総裁の発言から米国の金融政策を考えた上でドル円のここからの動きを考えます。


今週もドル円(USDJPY)と米国個別株CFDを2つ取り上げます。

ドル円(USDJPY)

ドル円(USDJPY)は前回の振り返りでも書いた通り米ドルに関して景気後退懸念があるいっぽうで強い材料もありと、強弱がミックスした状況で相変わらず上下の振れが激しい状況が続いています。9月FOMCに向けてFRBも数字を見て判断すると言っている以上、市場参加者は数字を見て一喜一憂です。

7月最終週以降だけでも2期連続のマイナス成長となったGDPに追い打ちをかけるようにペロシ下院議長の訪台で130円台前半まで押した直後に複数の地区連銀総裁がタカ派発言を行ったことで急反転。強い雇用統計で135円台半ばまで上伸したと思ったら予想よりも低いCPIで132円目前まで下げと、ジェットコースター相場が続いています。

ここでは素直に数字をどのように取るかですが、米国政府もFRBも景気を犠牲にしてもインフレを抑える姿勢を明確にしています。そしてタカ派な地区連銀総裁の発言の中でもFOMC投票権のあるメスター・クリーブランド連銀総裁の直近の発言は今後のFRBの金融政策の方向性のヒントになります。

「目標2%への回帰には4%超の水準が適切」

もともと米国のインフレ目標は2%です。ピークアウトしたといってもまだCPIは8.5%ですから、現時点で緩和云々の話をすることは時期尚早という点はタカ派メンバーで無くてもFOMCメンバー共通の認識であると言えるでしょう。ただ4%という水準はタカ派過ぎでしょうから、3.5%程度という従来の見方でよさそうです。

「来年上半期まで引き締め、その後いったん停止」

時期については数字次第だと思いますが、ピーク金利に到達するのが来年6月までという意味では無さそうで、ピークの次期はより早いタイミングで迎えるもののバランスシート縮小も含めての引き締めは2023年6月頃まで続くという感じでしょうか。

「緩和は2%台回帰を数か月確認する必要」

緩和の次期は金利市場関係者が来年半ばという見方に対する否定です。インフレ目標水準まで下がらない限り緩和には転換しないという点では、インフレ退治が第一ということが現在のFRBの方針と取ってよいでしょう。

クリーブランド連銀のメスター総裁はタカ派ではあるものの、基本的な方針はFRBの主流派とかけ離れたものでは無く、金融政策については引き締め以外は今は考える必要は無いとしたほうがシンプルで良いのではないでしょうか。

そうなると、景気後退を見てもインフレである限り引き締めとなるわけですから、欧州だけでなく米国でもスタグフレーションという展開に向かいそうで、そうなると最終的には株式市場は下げ、その動きを見てリスクオフの円買いという流れになりやすいというのが中長期的な見方です。短期的には日米金利差拡大によるドル買いが続きそうですが、金利同様にどこかでドルもピークをつける、あるいは139円台で既につけたと考えられます。

短期的にはテクニカルな観点で考えます。日足チャートをご覧ください。

 
20220811_USDJPY
(チャート提供:サクソバンク証券)

ここでは5月24日安値以降の動きを考えます。同安値と7月高値139.382との78.6%(61.8%の平方根)押しが129.140です。また7月高値を起点とした逆N波動(水色点線)を考えた場合、61.8%エクスパンションが130.011、78.6%(61.8%の平方根)エクスパンションが128.498となっています。大台130円を最初のターゲットに128円台後半を中期的なターゲットとしやすいと見てよいでしょう。

短期的には高値は139円台前半で既に見たと考えられるため。今後は調整のドル売り・円買いを想定した戻り売りが出やすくなってきそうです。

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