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サマリー: 米国の9月の雇用統計がほぼ横ばいの結果であったことを受け、米国債利回りと米ドルは再び上昇しました。投資家の関心は、FRBの引き締め政策がピークに近づいているのか、それとも「どこかに亀裂が入る」までまだ何週間、何か月も続くのかという一点です。ドル円は2週間以上前の145.00円を超える上昇を日本の政策当局が確認して以来、再びその水準を大きく上回る上昇に転じています。木曜日(10月13日)の米国9月消費者物価指数が、今週予定されている注目指標です。
FXトレーディングの焦点:引き締めのピークが近づいている
米国の9月雇用統計と所得統計は注目するほどの内容ではありませんでしたが、それでも市場は強く反応し、米国債利回りはイールドカーブの短期側でサイクルの最高水準に戻り、ドルは米国債利回りの上昇と弱いリスク心理があいまって急上昇しました。こうした反応を引き起こした要因は、米国の失業率が3.5%と過去最低水準まで低下したことだと思われます。このことは、FRBが当面、引き締め政策のメッセージを維持する必要があることを示唆しています。また、8月に0.3%上昇し7.0%となった広義のU-6失業率(米国労働省が発表する6種類の失業率のうち最も広義のもの)も、6.7%と過去最低を更新しています。次に注目されるのは、今週木曜日(10月13日)の9月の消費者物価指数と金曜日(10月14日)の小売売上高です。後者は、消費支出の増加ペースがかなり鈍化していることを示唆しており、コアとなる「自動車とガスを除く」売上高は、今年初めから全般的に前月比で減少しています。
米国が中国への半導体販売の締め付けを強化する方針を打ち出し、ロシアがウクライナの民間人に対し、ロシア本土とクリミア半島を結ぶ唯一の橋であるケルチ橋に何者かが大きな打撃を与えたことから、地政学的不安が急激に高まっています。
チャート:豪ドル/米ドル
RBA(オーストラリア準備銀行)のハト派的な姿勢は、通貨面からオーストラリアのインフレリスクを悪化させ、豪ドルは対米ドルで以前のサイクルの安値0.636を下回る新安値を更新しています。豪ドルが2003年以降、月次で現在の水準を下回ったのは1回だけです。今夜は、ウェストパック消費者信頼感調査、家計消費状況調査(8月は15%上昇!)、NAB企業景況感調査など、オーストラリアについて注目されるデータの発表が予定されています。豪ドル安は幾つかの通貨ペアで顕著になっており、豪ドル/加ドルは新安値まで下落、豪ドル/ニュージーランドドルは重要な1.1250付近を再び試しており、3度目となる今回は下抜けする可能性があります。アジアについては今週、2つの点が注目されます。米国債利回りが現状水準を維持するのか、あるいはさらに上昇するのか、日銀および財務省が沈黙を守っている中、ドル円は迷いつつも150.00円に向かって上昇するのかどうかです。先の介入の意図が、絶対的な水準を守ることではなく、円安のペースを確認することであったなら、その可能性はあります。また、ドル円レートが顕著に上昇し続ける場合、米ドル/オフショア人民元には、以前の高値7.20を超えて上昇する動きはあまりみられないため、新たな高値水準が形成されるかもしれません(9月28日に7.27近くまで上昇したものの、その日は7.20以下に反落して終了しています)。中国の政治日程にとって厄介な時期に、米ドル/オフショア人民元に圧力がかかり、ボラティリティが高まっています。
本稿のタイトルについて:私は、FRB の引き締めがピークに近づいていると考えています。それは米ドルもピークに近づいていることを意味すると思われますが、すでにそこに達しているのか、それともイールドカーブの短期側であと20-50bpの上昇があるのかは、判断がつきかねるところです。また、2001-2003 年の主要なレジームシフトや2008-2014 年の長期にわたったレジームシフトを見ると、米ドル安への転換は新しいトレンドに発展するのに2-3年、あるいはそれ以上かかる可能性があります。現在のサイクルを考えると、1年~1年半後に株式の弱気相場が底を打とうとも、世界が不況のさなかにある中で、米ドルは依然として流動性プレミアムを維持するため、理にかなっていると言えるでしょう。
表:G10諸国通貨とオフショア人民元(CNH)のFXボード - トレンドの推移と強弱
先週のOPECプラスの減産発表後の原油価格の高騰は、カナダドル(CAD)とノルウェー・クローネ(NOK)の下支え要因となっています。豪ドルは、世界的な利回り上昇環境下でのRBAのハト派的な姿勢により、最も下落しています。上記の通り、オンショア人民元(CNY)と日本円を注意深く見守る必要があります。表:FXボード – 通貨ペアのトレンドスコアボード
豪ドル/ニュージーランドドルは、1.1250が一種のブル/ベアラインであるため再び重く見えます(そして、下に近づくとトレンド指標も都合よくマイナスに転じます)。その他、ノルウェー・クローネ/スウェーデン・クローナは原油価格回復を受けて上昇に転じそうであり、ユーロ/英ポンドの新たな「上昇トレンド」には説得力がないように見えます。今後の予定
・13:00 – エバンズ・シカゴ連銀総裁(2023年投票権者)発言
・13:00 – レーンECB理事講演
・17:00 – ブレイナードFRB副議長発言
・22:00 – オーストラリア9月CBA家計消費
・23:30 – オーストラリア10月ウエストパック消費者信頼感指数
・00:30 – オーストラリア9月NAB企業景況感