FXアップデート:英国政府のポンド安定化策

FXアップデート:英国政府のポンド安定化策

FX
ジョン・ハーディ

グローバルマクロ戦略責任者

サマリー:  トラス政権の、財政破綻を招きかねない新政策に少なからず起因する、英国債市場の大暴落と深刻なポンド変動を受け、ジェレミー・ハント新財務相はトラスノミクスの主要政策の大部分を撤回して英国債とポンドの安定化を図るようです。これまでの取り組みにより、ユーロ/英ポンドレートはすでに安定しており、市場がこれ以上、ポンドからプラス要因を引き出せるかどうかは難しいところです。


FXトレーディングの焦点:英国政府によるポンド安定化の取り組み、今週の米ドル

英国では、クワーテング前財務相が打ち出した減税策のほぼ全てが撤回され、急遽発表されたエネルギー補助金も見直されることにより、英国債市場と通貨がさらに安定するとの期待から、ポンドは本日(10月17日)、急上昇しました。それは奏功するかもしれませんが、その安定は必ずしも持続的なポンド高を意味するわけではありません。英国債とポンドに対する信認を問う次の重要な機会は、本日午後のジェレミー・ハント新財務相の演説です。演説に先立ち、ハント財務相は、320億ポンドの税収減を回避し、またエネルギー補助金は来年の4月までは継続するがそれ以降は見直すとの方針を示しました。

それ以外にも、先週木曜日(10月13日)の米消費者物価指数の発表をきっかけに、投機筋の動きや、プロテクションのためのデリバティブを用いたヘッジによる膨大な利益確定などでセンチメントが異常に高揚して以来、大荒れの数日間となっています。金曜日に突然、センチメントの崩壊が回復したのは特定の事象に起因するものではなく、今週から決算シーズンが本格化し、また米FRBからの引き締めのメッセージが続く中で、市場がまだ非常に不安定な状態であることを示唆しています。金曜日の終値が悲惨なものであったにも関わらず、本日のセンチメントが改善したのは、金曜日にイングランド銀行が緊急のQEオペを終了させた後、ポンドが安定し、英国債がそれによって支えられたためと思われます。

今週は米国の経済指標の発表が少ないですが、米国の住宅関連のデータが、今後数か月の間に形成されるリセッションに向けて急速に悪化していることを示唆する可能性が高いとみられます。10月の全米住宅建設業協会(NAHB)調査は明日(10月18日)、9月の住宅着工件数/建築許可件数は水曜日(10月19日)に発表されます。この住宅サイクル指標のひとつである住宅価格は、金融危機の前よりも急速に下落しており、ケース・シラー住宅価格指数(20都市)によると、7月は今回のサイクルで初めて住宅価格が全面的に下落しました(-0.44%)。今年初めの住宅価格上昇のピーク(2月、3月は月2%を大きく超えていました)からわずか数か月での下落です。この驚くべき反転はもちろん住宅ローン金利の急上昇によるもので、米国の標準的な30年固定型住宅ローンは、今年初めの約3.25%から現在では7.2%という途方もない水準まで上昇しています。前回の住宅ローン危機では、30年物住宅ローンの金利は2003年の5.0%付近を底に6.5%以上に上昇することなく危機に突入し、リスクの高いローンの破綻が危機の要因でしたが、それとは大幅に異なる状況です。

チャート:ユーロ/英ポンド

週が明けて、英国政府が教訓を学び、国債市場危機を回避すべく、トラス新政権の歳出・減税計画をほぼ撤回し、利回りが急速に低下している市場と、先週のクワーテング前財務相の辞任により既にユーロに対してポンドが安定している状況に、市場は一息ついているようです。本日のジェレミー・ハント新財務相の演説(14:30GMT)後のセンチメントにより、ポンドがどのような方向に向かうのかが注目されます。ユーロ/英ポンドが以前のレンジを完全に回復するとすれば、0.08625-0.8575にまだ若干、支持線が残っています。エネルギー価格の低下に伴う英国と欧州のセンチメントと成長見通しがより大きく反転しない限り、ポンドが大きく上昇するとは考えにくく、ベストケースシナリオでも、ポンドがクロスや対ユーロで安定するにとどまると予想されます。
 
Source: Saxo Group

表:G10諸国通貨とオフショア人民元(CNH)のFXボード - トレンドの推移と強弱

米ドル/オフショア人民元が7.20を超えてサイクル高値を更新している限り、弱い円とオフショア人民元が引き続き注目されます。日銀の黒田総裁は、インフレ率は年末にかけては上昇するものの来年以降は2%を下回ると述べ、緩和政策へのコミットメントを維持しています。その他、豪ドルはオーストラリア準備銀行(RBA)のハト派的姿勢からG10諸国の小規模国通貨の中では弱く、ニュージーランドの第3四半期の消費者物価指数(CPI)の発表を控え、リスクセンチメントがディフェンシブに傾いています。
 
Source: Bloomberg and Saxo Group

表:FXボード - 通貨ペアのトレンドスコアボード

FXのボラティリティはここ最近、非常に高く、G10諸国通貨ペアはいずれも「ホットオレンジ」のカテゴリーとなっています。これは、過去1,000取引日のレンジのうち、最も変動が激しい10%にあることを意味しています。また、全面的なポンド高にも注目です。そのほとんどは、ポンドが非常に低い水準から反発したことによるもので、ポンドが横ばい推移となればその状況が解消します。英ポンド/米ドルはポジティブなトレンドに転換しようとしており、英ポンド/米ドルのチャートでは1.1500が次の重要なエリアとなっています。
 
Source: Bloomberg and Saxo Group

今後の予定

12:00 – 米国10月NY連銀製造業景気指数(エンパイア・ステイト景気指数)
14:30 – 英国ハント新財務相演説
15:00 - ECBレーン理事発言
21:45 – ニュージーランド第3四半期消費者物価指数
00:30- オーストラリア準備銀行議事録
02:00 – 中国9月鉱工業生産
02:00 – 中国小売売上高
02:00 – 中国第3四半期GDP

口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。 

最短3分で入力完了!

コンテンツ免責事項

本ウェブサイトで提供される情報は、金融商品の売買を勧誘、推奨、または承認するものではなく、金融、投資、または取引に関するアドバイスを目的としたものではありません。当社およびサクソバンクグループの各法人は、執行専用のサービスを提供しており、すべての取引および投資はご自身の判断に基づいて行われます。分析、調査、および教育コンテンツは情報提供のみを目的としており、アドバイスや推奨として解釈されるべきではありません。

当社のコンテンツは、著者の個人的な見解を反映している場合があり、予告なく変更されることがあります。特定の金融商品の言及は、例示目的であり、金融リテラシーの向上を目的としています。投資調査として分類されるコンテンツはマーケティング資料であり、独立した調査の法的要件を満たすものではありません。

投資判断を行う際には、ご自身の財務状況、ニーズ、目標を十分に考慮し、必要に応じて独立した専門家のアドバイスを受けるかどうかの判断も含め、自己責任であることをご理解ください。当社は、提供される情報の正確性または完全性を保証するものではなく、この情報の利用により生じた誤り、脱漏、損失または損害について一切の責任を負いません。

サクソバンク証券株式会社
Saxo Bank Securities Ltd.
Izumi Garden Tower 36F
1-6-1 Roppongi Minato-ku
Tokyo 106-6036
〒106-6036 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデンタワー36F

お問い合わせ

国・地域を選択

日本
日本

【重要事項及びリスク開示】

■外国為替証拠金取引は各通貨の価格を、貴金属証拠金取引は各貴金属の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、売買の状況によってはスワップポイントの支払いが発生したり、通貨の金利や貴金属のリースレート等の変動によりスワップポイントが受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■外国為替オプション取引は外国為替証拠金取引の通貨を、貴金属オプション取引は貴金属証拠金取引の貴金属を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。また、オプションの売り側は権利行使に応える義務があります。
■株価指数CFD取引は株価指数や株価指数を対象としたETFを、個別株CFD取引は個別株や個別株関連のETFを、債券CFD取引は債券や債券を対象としたETFを、その他証券CFD取引はその他の外国上場株式関連ETF等を、商品CFD取引は商品先物取引をそれぞれ原資産とし、それらの価格の変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、建玉や売買の状況によってはオーバーナイト金利、キャリングコスト、借入金利、配当等調整金の支払いが発生したり、通貨の金利の変動によりオーバーナイト金利が受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■上記全ての取引においては、当社が提示する売価格と買価格にスプレッド(価格差)があり、お客様から見た買価格のほうが売価格よりも高くなります。
■先物取引は各原資産の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。
■外国株式・指数オプション取引は、対象とする有価証券の市場価格や対象となる指数、あるいは当該外国上場株式の裏付けとなっている資産の価格や評価額の変動、指数の数値等に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、対象とする有価証券の発行者の信用状況の変化等により、損失が発生することがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。さらに、外国株式・指数オプションは、市場価格が現実の市場価格等に応じて変動するため、その変動率は現実の市場価格等に比べて大きくなる傾向があり、意図したとおりに取引ができず、場合によっては大きな損失が発生する可能性があります。また取引対象となる外国上場株式が上場廃止となる場合には、当該外国株式オプションも上場廃止され、また、外国株式オプションの取引状況を勘案して当該外国株式オプションが上場廃止とされる場合があり、その際、取引最終日及び権利行使日が繰り上げられることや権利行使の機会が失われることがあります。対象外国上場株式が売買停止となった場合や対象外国上場株式の発行者が、人的分割を行う場合等には、当該外国株式オプションも取引停止となることがあります。また買方特有のリスクとして、外国株式・指数オプションは期限商品であり、買方がアウトオブザマネーの状態で、取引最終日までに転売を行わず、また権利行使日に権利行使を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。また売方特有のリスクとして、売方は証拠金を上回る取引を行うこととなり、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。売方は、外国株式・指数オプション取引が成立したときは、証拠金を差し入れ又は預託しなければなりません。その後、相場の変動や代用外国上場株式の値下がりにより不足額が発生した場合には、証拠金の追加差入れ又は追加預託が必要となります。また売方は、権利行使の割当てを受けたときには、必ずこれに応じなければなりません。すなわち、売方は、権利行使の割当てを受けた際には、コールオプションの場合には売付外国上場株式が、プットオプションの場合は買付代金が必要となりますから、特に注意が必要です。さらに売方は、所定の時限までに証拠金を差し入れ又は預託しない場合や、約諾書の定めによりその他の期限の利益の喪失の事由に該当した場合には、損失を被った状態で建玉の一部又は全部を決済される場合もあります。さらにこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。外国株式・指数オプション取引(売建て)を行うにあたっては、所定の証拠金を担保として差し入れ又は預託していただきます。証拠金率は各銘柄のリスクによって異なりますので、発注前の取引画面でご確認ください。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、取引証拠金を事前に当社に預託する必要があります。取引証拠金の最低必要額は取引可能な額に比べて小さいため、損失が取引証拠金の額を上回る可能性があります。この最低必要額は、取引金額に対する一定の比率で設定されおり、口座の区分(個人または法人)や個別の銘柄によって異なりますが、平常時は銘柄の流動性や価格変動性あるいは法令等若しくは当社が加入する自主規制団体の規則等に基づいて当社が決定し、必要に応じて変更します。ただし法人が行う外国為替証拠金取引については、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用いて通貨ペアごとに算出(1週間に1度)した比率を下回らないように当社が設定します。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、損失が無制限に拡大することを防止するために自動ロスカット(自動ストップロス)が適用されますが、これによって確定した損失についてもお客様の負担となります。また自動ロスカットは決済価格を保証するものではなく、損失がお預かりしている取引証拠金の額を超える可能性があります。
■外国証券売買取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。
■取引にあたっては、契約締結前交付書面(取引説明書)および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。

サクソバンク証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
第一種金融取引業、第二種金融商品取引業
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
手数料:各商品の取引手数料についてはサクソバンク証券ウェブサイトの「取引手数料」ページや、契約締結前交付書面(取引説明書)、取引約款等をご確認ください。