サマリー: 株式市場の乱高下はFXトレーダーの注意をそらし、リスクと相関する米ドルペアはセンチメントの変動に揺さぶられましたが、ドル円トレーダーは最も重要な継続的背景要因を見失ってはいません。米国債利回りは依然として高水準でサイクルの高値に近いため、米国債利回りがこの水準かそれ以上にとどまっている限り、米ドルが幅広く下落することはないと考えられます。他には、オフショア人民元(CNH)安が広がっていることに注目されます。
FXトレーディングの焦点:リスクセンチメントのノイズの中、シグナルは米国債利回り
米国株は昨日一時、今週初めの安値から約9%上昇しましたが、それと同時に、米ドルが、特にリスク相関の高い通貨に対して変動しました。一方、ドル円は今朝、ベンチマークの米10年国債利回りが今回のサイクルにおいて小幅高をつけ、米国債利回りの上昇が焦点となっているため、昨日の日中の急激な変動以外、ほとんど動きを見せていません。実際、米国債利回りが現状またはそれを上回る水準にとどまる限り、リスクセンチメントが持続的に変化するとは考えられないため、米ドルのトレーダーは米国債の動向を注視する必要があります。
黒田日銀総裁は「過度」で「一方的」な円の動きをけん制する一方、円安と安定は日本経済にとってプラスに作用すると説明し、円をサポートするような発言はありませんでした。また、別の日銀関係者は、現在のマイナス短期金利とイールドカーブ・コントロール(YCC)政策を擁護し、インフレ率は今年末まで上昇を続けるとしても、その後、低下するとの見方を示しました。ドル円レートがどの時点で一方的で過度だと判断され、市場に効果が限定的と思われる資金が投入されることになるのか、市場全体が注目しています。その水準は150.00円を大きく上回らない時点と考えられますが、注目されるところです。
アジアの他の地域では、米ドル/オフショア人民元が本日(10月19日)、サイクルハイを記録し、本日の米ドル上昇が本格化する前のセッションの早い段階でその動きが見られたことから、オフショア人民元安の拡大が注目されています。オフショア人民元の他のクロスを見てもやはり動きがあり、この動きが拡大すると、中国からのデフレ輸出が懸念され、世界市場の不安要因となる可能性があります。
チャート:英ポンド/米ドル
英ポンド/米ドルは、直近の2回の上昇で1.1500の手前、直近では1.1450の手前で抵抗線に跳ね返され、下方調整しています。次の下値の焦点は、1.1150付近、そして心理的な1.1000レベル、名目上の安値1.0923となります。新たに広範なリスクオフの動きが出てくれば、1.0800以下の水準がすぐに視野に入ってくる可能性があります。当社は、ポンドのファンダメンタルな見通しは安定化していると主張してきましたが、その安定性は必ずしもポンド高につながるわけではありません。本稿執筆中にも、英国下院のPMQ(首相質問)セッションは混乱しており、リズ・トラス首相が在任期間の最後の数週間、あるいは数日を迎えるかもしれないという大きな圧力にさらされている様子が見て取れます。最近の英国債市場とポンド相場の混乱が、財務危機を招きかねなかった施策の大部分の撤回を求めたことから見ても、財政緊縮の必要性が今のところ優先課題となっていることを意味します。ジェレミー・ハント新財務相は、銀行やエネルギー企業の利益に課税する可能性を示唆するなど、財政再建策を検討していると伝えられています。トラス首相が生き残れるかどうかは、現在の状況にとってほとんど重要ではないかもしれません。また、イングランド銀行が市況の悪化を相殺する有効な施策を取れず、英国の厳しい景気後退が予想される中、厳しい財政状況はポンドにとってマイナスであるということに留意しなければなりません。
表:G10諸国通貨とオフショア人民元(CNH) - トレンドの推移と強弱
日本円は依然として主要通貨の中で最も弱いが、オフショア人民元安も広がってきており、より影響の大きい展開です。豪ドルもその影響を受けるかどうかが気になるところです。