FXトレーディングの焦点:ジャクソンホール会議はパウエル議長の講演だけでは…
金曜日(8月26日)のジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演を通じ、FRBへの期待に対する市場の反応を見ると、市場にとっては大きな材料はなかったと言えます。パウエル議長は講演において、9月の会合での金利決定は、データ「全体」次第であることを強調したため、期待されたほどの大きな変化はないと解釈されたのです。(講演の1時間半前に発表された米個人消費支出(PCE)は予想よりやや弱く、8月のミシガン大学消費者信頼感指数確報値では、期待インフレ率が0.1%低下していました)。9月21日のFOMCでの金利決定では、今週金曜日の雇用・所得統計と、9月13日の消費者物価指数の発表がより大きなウエイトを占めることになるでしょう。
より重要な点は、パウエル議長が、インフレサイクルが鎮静化したことを確認するためには、FRBの政策をしばらくの間維持することが重要と強調したことです。注目に値する重要な部分は「物価の安定を回復するには、一定期間、引き締め政策姿勢を維持する必要がある。歴史的に見ても早すぎる緩和政策には強い警戒が必要だ」という見解です。パウエル議長はさらに、ポール・ボルカー氏と1970年代~1980年代初頭に続いた高水準のインフレとの戦いを引き合いに出しています。これを受けて、市場は来年半ば以降のFRBの政策金利予想を引き上げましたが、それは金曜日の終わりに大きく覆されました。FRBによる一層の引き締めは金融情勢の悪化を意味するため、FRBはそれを回避しようとする可能性があり、そうなれば金融情勢・市場センチメントが支えられるという、反射的な悪循環が生じ、それをコントロールすることが困難となる可能性があるという思惑からです。
重要な要因のひとつとして、政策金利の期待値がオーバーナイトで早い段階から急上昇したことが注目されます。これは、
ジャクソンホール会議で土曜日(8月27日)に発表された論文によると、FRBが本格的な量的引き締め(QT)に踏み切るのは難しい(政策調整の第一義的なメカニズムとしてFF金利を重視する必要がある)ことが示唆されたためでしょう。
ブルームバーグの記事ではこの論文について触れています。もし、FRBがバランスシートの縮小計画を緩やかに進めなければならないとしたら、予想されているFRBの引き締め(QTと利上げの総和)が行き過ぎていたことに即座に気付けるでしょうか。興味深い点ですが、FRBがQTを進めようとする可能性があるとしても、決断にはまだ時間がかかりそうです。
チャート:米ドル/円
今週は、米国のデータによって米国債利回りがさらに上昇するかどうか、特に米国のイールドカーブの長期側が、イールドカーブ・コントロール政策の維持を主張する日銀への圧力を強める可能性があるため、米ドル/円に注目しています。米国のイールドカーブの長期側が6月の高値を下回る水準に固定されている限り、イールドカーブの変動とは関係なく、米ドルの流動性に問題がない限り、この通貨ペアが上昇する根拠はないと思われます。また、今週、金曜日の雇用・所得統計を通じて弱い指標が発表された場合、「ダブルトップ」のシナリオ実現に向かう可能性があります。今週は139-140.00円のレンジが重要になりそうです。