口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。
最短3分で入力完了!
Chief Investment Strategist
サマリー: FOMCは、7回にわたり利上げを実施する道筋と、中立金利と見なされる水準を上回る最終金利を示しました。これは、インフレが当初考えられていたよりも持続的であること、そして大幅な金融引き締めにより需要が抑制されない限りインフレが収まらないということをFRBが認めたということを示します。この背景にあるのは、世界経済が供給面で厳しい制約を受けていること、供給拡大のための投資に時間がかかること、そしてウクライナでの戦争や中国での新たなロックダウンにより世界的なサプライチェーンの混乱が長期化する可能性があることです。今回の記事では、FF金利の実効レートの上昇期と下降期における米国株式の過去のリターンの推移についても取り上げます。
FOMCのタカ派姿勢でも米国株は下がらず
FOMCは16日、パンデミック開始以降初めてフェデラルファンド(FF)金利を引き上げることを決定しました。全体的なメッセージはこれまでの声明通り、タカ派姿勢を印象付けるものでした。ドットプロット(金利予測分布図)では、今年中に7回の利上げが実施され、最終的な金利は2.75%と、中立金利と見なされている2.38%を上回ることが示されました。Powell議長とFRBは今ではインフレの深刻さを認めています。中立金利を上回る水準に最終金利を誘導していることは、FRBが金融引き締めによる需要の抑制に本腰を入れていることを示します。つまり、有意な期間中にインフレを抑制するには経済の供給面の拡大ペースが十分でないため、需要の抑制が必要であると認めているということです。FOMCは、バランスシートの縮小の開始を従来の6月から5月に前倒しすることも発表しました。今後の見通しにおける2つの主なリスクは、ウクライナでの戦争(およびコモディティの混乱を招くロシアへの制裁)と、世界的なサプライチェーンの混乱の原因となる中国でのロックダウンです。
米国株式市場はFOMCの決定とそれに続くメッセージを好感し、S&P 500は2.3%上昇しました。さらに、ロシアとウクライナとの停戦交渉で前向きな雰囲気が高まっていることや、中国が経済・株式市場を支援するというメッセージを出したことも、良好なセンチメントの支えとなりました。しかし、17日の取引では、原油高をはじめとするコモディティ価格の上昇を受けて、株式市場は上昇分を一部戻しています。とはいえ、米国株にとって、FF金利の引き上げは何を意味するのでしょうか?
利上げ期には米国株のリターンは好調
米国株のリターン、米国債、FF金利実効レートを用いて、過去の関連性を把握することができます。ここで対象とする期間中には589回分の月間データがあり、そのうち約300回はFF金利実効レートが据え置かれた時期または下降期、289回はFF金利実効レートの上昇期にあたります。米国株の月間平均リターンは、FF金利実効レートの上昇期には1.43%であるのに対して、FF金利実効レートの下降期には0.29%です。この平均値の差は、t値で3.15、p値で0.0017となります。無リスクのリターン(米国債のリターン)を差し引いた超過リターンは、FF金利実効レートの上昇期には0.77%、下降期には-0.16%です。この平均値の差は、t値で2.47、p値で0.014となります。言い換えれば、FF金利実効レートの上昇期には、米国株は非常にリターンが高くなり、米国債を上回る超過リターンをもたらすということです。歴史が繰り返されるのであれば、これは株式のリターンにとって良い兆候ですが、1つ注意すべき点は、株価のバリュエーションが過去の平均を上回る水準にとどまっていることです。このため、インフレ見通しとウクライナでの戦争の長期化を背景に、バリュエーションの平均回帰が続けば、逆風が強まることになります。