グローバリゼーションの再構築:ベトナムは最大の勝者 グローバリゼーションの再構築:ベトナムは最大の勝者 グローバリゼーションの再構築:ベトナムは最大の勝者

グローバリゼーションの再構築:ベトナムは最大の勝者

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ピーター・ガンリュー

株式戦略責任者

サマリー:  2016年の米国大統領選挙でトランプ氏が勝利して以降、中国は軽工業と貿易戦争で敗北の度合いとそのペースを増しています。結果として2013年以来最大の勝者となったのはベトナムです。コロナ禍がこの2年間続き、最近になってウクライナで戦争が勃発したことで、より強固なグローバル・サプライチェーンの必要性が高まりました。先進国企業はグローバル・サプライチェーンの抜本的な再構築に向けて急速に舵を切っています。こうした中、最大の勝者と言えるのはベトナム、インド、メキシコですが、今回はベトナムとその株式市場に焦点をあてます。


世界貿易は2008年にピークを迎え、世界経済は新たな軌道に乗った

2008年、世界経済はGDPに占める世界貿易の割合が過去最高を記録しましたが、現在、その水準まで回復するに至ってはいません。今にして思えば、それは世界金融危機や、その後のユーロ危機と先進国の成長鈍化を伴う危機の数年で生じたノイズが発する重要な信号でした。中国は台頭しており、その膨大な刺激策によって2009年に世界経済を不況から脱出させましたが、現在の構図に向けた動きはその時点で既に始まっていました。

2013年以降、世界経済でグローバル・サプライチェーンの再構築が始まりました。中国は、1989年から2013年までの24年間に賃金が年率15%上昇し、軽工業における競争優位の一部を失い始めました。中国の賃金は2013年以降年率9.8%で上昇しています。中国指導部は、ベトナム、インド、メキシコなどに市場シェアを奪われつつあることに注目し、当初は輸出主導型から内需主導型への転換に政策の舵を切りました。最近では、この戦略は、高度な産業用部品の自立生産体制を推進するという目標に重きを置く自立戦略によって、洗練されたものとなっています。

2013年以降、米国と欧州の企業は、軽工業製造拠点を中国から移すなど、製造ネットワークを徐々に分散させる動きを見せていました。トランプ氏は2016年に米国の大統領に選出された際、中国との貿易戦争の準備ができており、すでに進行中だった変化を加速しただけ、というのが実態です。2017年11月、トランプ大統領はAPEC CEOサミットでスピーチを行い、「平和で繁栄し自由なインド太平洋」を提唱する将来の輪郭を描きました。この演説に対して中国政府は警戒の度合いを高め、対応策の作成に動きました。それ以来、世界経済の再構築は加速しています。


コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻で、脱グローバリゼーションが加速

ジャスト・イン・タイムによるサプライチェーンの過剰最適化に執拗に注力したことと、規模の経済で意思決定を行いつつ在庫を絞ったことは、長期間にわたりわずかな利益しか生まず、パンデミックのようなテールリスクと考えられる事象が生じた際には、その利益も消失してしまいました。今回のコロナ禍はそうしたことを企業に示しています。中国のゼロ・コロナ政策は、2年前から深刻な供給制約を引き起こしており、ロックダウンは、製造工程のすべてを1つの工場または1つの国に置くことが危険なゲームである理由を示しています。企業にとっての新しいキーワードは「レジリエンス」です。

世界がコロナ禍から回復しつつある中、ロシアがウクライナへの侵攻を決定したため、経済は別の脆弱性に包まれました。世界の商品市場は、金属から世界の人口を養う小麦の供給に至るまで混乱に陥ったのです。ロシアの戦車がウクライナ国境を越えた2022年2月24日は、技術、国家戦略、グローバル・サプライチェーンの新しい動きが勢いづいた重要な日として歴史に刻まれるでしょう。ブラックロックのCEO・共同創業者ラリー・フィンク氏は先週、フィナンシャルタイムズに「ウクライナ戦争はグローバリゼーションの終焉を意味する」と語りましたが、こうした観測を持つのが14年ほど遅かったと言えましょう。我々は、構築を試み、1980年に始動し、2001年の中国のWTO加盟で加速したグローバリゼーションは、無傷のまま存続し得ると見せかけてきました。過去2年間の出来事で、世界の大きな変化に拍車がかかるでしょう。そんななか、ベトナムは最大の勝者の一人になると考えます。

グローバル・サプライチェーンの再構築で生まれる最大の勝者はベトナム

米国のコンサルティング会社カーニーは、世界金融危機以降の米国製造業のリショアリングを追跡するリショアリング指数を持っています。最新のレポートでは、米国の製造業が2008年以降米国回帰し、2013年以降それが加速している様子を取り上げています。中国はパンデミック発生前から対米輸出で急速に市場シェアを失いつつあり、その一方でアジアの低コスト国が市場シェアを獲得し、ベトナムが最大の勝者となっています。経済複雑性観測所(OEC)によると、2020年には、米国がベトナムの総輸出の25.6%を占める最終輸出先であり、2013年の17.3%から増加しました。中国は2020年の総輸出の16.5%を占める輸出先であり、ベトナムが放送機器、集積回路、電話、繊維履物、衣類、家具などの主要部品を米国と中国に供給する国になりつつあることを示しています。

Source: OEC

ベトナムの株式は2013年初めから好調で、パンデミック期間中の安値からの目覚ましい回復で年率9.7%上昇しました(Xtrackers FTSE Vietnam Swap UCITS ETFの下図チャート参照)。チャートを見ると、ベトナム株式は2008-12年に69%という激しい下落を記録したあと、ほぼ10年間にわたる上昇相場が続いていることが分かります。2013年はベトナム株式の風向きが変わった年でした。ベトナムの成長軌道は明るく見えますが、この勢いに乗るには遅すぎるのでしょうか。

Source: Saxo Group

2010-22年の12年間をみると、ベトナムの収益はMSCIワールドを下回っており、50%しか伸びていません。MSCIワールドの収益は180%伸びています。ベトナムに多くの利益をもたらしたのは米国と中国ですが、両国間で貿易戦争が生じた最新の期間に絞ってみると、収益の伸びはMSCIワールドのわずか80%の伸びに対し、ベトナムは170%も伸びていることがわかります。ベトナム株式の配当利回りはわずか1%なので、割安とは言えませんが、この株式評価は2016年初頭以降、収益が年率18%もの高成長を実現したことがベースとなっていることを考慮すべきと考えます。

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