S&P500のバリュエーションを説明するマクロ要因 S&P500のバリュエーションを説明するマクロ要因 S&P500のバリュエーションを説明するマクロ要因

S&P500のバリュエーションを説明するマクロ要因

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ピーター・ガンリュー

株式戦略責任者

サマリー:  今回の記事では、1994年~2022年のS&P500の益回りの分散を説明する上で、米国の住宅市場、消費者信頼感、マネーサプライの変化、米国2年債利回り、失業率、時間当たり賃金、貸出基準に関するマクロ変数が最も重要な変数であることを示します。当社の益回りモデルでは、ITバブル期および新型コロナのパンデミック期が長期間あり、その間の予想益回りは実際の益回りを大幅に上回ります。これらの期間には、マクロ的な背景では説明できない強力な投資家心理と楽観主義が原動力となることを示しています。


株価評価には米国住宅市場と消費者信頼感が重要

我々がS&P500の益回りモデルの構築を始めた時は、益回りの変動を説明できる要因を見つけることを目的としていました。当社の最初のモデルでは、EBIT利益率、売上高成長率、売上高設備投資比率など、S&P500企業の総合的なファンダメンタルズを主に利用して、直近12ヶ月の益回りをターゲットとしていました。このモデルは、直近12ヶ月の益回りがあまりにも変動が大きく遅行性であるなどの理由で、不完全とされました。さらに重要な点として、S&P500の企業のファンダメンタルズは経済的に利益と関連性があるため、企業の外部変数によって左右される興味深いモデルにならないのです。

最終的なモデルでは、総合的なファンダメンタルズのデータから、株式市場以外の金融市場や米国経済に関する時系列データに切り替えました。また、益回りを直近12ヶ月の実績益回りから12ヶ月先の予想益回りに変更しました。予想益回りの方が安定的であり、株式市場がどのように動くかに関する変数の将来予測性も興味深いからです。最初は単純な線形回帰モデルから始めましたが、益回りの変動ではなく益回りをモデル化しているため、残差の自己相関を取り除くことができませんでした。これは、線形回帰モデルの仮定への重要な違反となります。その結果、残差の仮定や基礎的なデータ分布という点で厳密性が低いランダムフォレストモデルに行き着きました。最終的なモデルは、米国経済と金融市場の様々な側面を表す25の特徴量から構成されています。

このランダムフォレストモデルから、特徴量の重要度を計算することができます。以下の特徴量(上から重要度が高い順)は、モデルのアウトプットに基づき、S&P500の12ヶ月先の益回りの半分を説明するものです。最も重要な2つの特徴量は、米国住宅市場の景況感を測るNational Association of Home Builders Market(NAHB)Indexと、消費者信頼感です。現在、これら2つの指標は過去の平均を上回っていますが、どちらも消費者を圧迫する金融引き締め(および住宅ローン金利の上昇)とインフレ率の上昇というリスクにさらされています。S&P500の益回りを説明する上で3番目に重要な特徴量は、米国住宅価格の年間変動です。言い換えると、米国住宅市場は、米国の株価のバリュエーションにとって非常に重要だということです。

  • National Association of Home Builders Market Index
  • Conference Board Consumer Confidence
  • S&P CoreLogic Case-Shiller US National Home Price Index(前年比)
  • 米国の民間、非農業部門の時間当たり平均賃金(前年比)
  • FRBのM2(前年比)
  • 米国U6失業率
  • 大企業向け貸出基準「厳格化」と「緩和化」の国内回答割合の差(%)
  • 米国2年債利回り
     
Source: Bloomberg

S&P500の益回りは適正か?

モデル適合をもとに、米国経済の背景を踏まえて、現在のS&P500の12ヶ月の益回りが適正であるかどうかを確認することができます。現在のS&P500の12か月先の益回りは5.15%で、PERでは19.4倍です。モデルによれば、過去の益回りと特徴量との関係に基づいて、益回りは5.31%、PERでは18.8倍となるはずであり、ミスプライスはわずか3%です。つまり、現在のマクロ指標を考慮すると、S&P500は、効率的な市場に期待されるように正しく値付けされていると言えます。

最も重要な特徴量の値を主に悪化方向へ変更した場合、新たな予想はどうなるでしょうか?

  • National Association of Home Builders Market Index(79から70)
  • Conference Board Consumer Confidence(107.2から100)
  • S&P CoreLogic Case-Shiller US National Home Price Index(前年比)(19.2から10)
  • 米国の民間、非農業部門の時間当たり平均賃金(前年比)(6.7から5)
  • FRBのM2(前年比)(11から7)
  • 米国U6失業率(6.9から6.5)
  • 大企業向け貸出基準「厳格化」と「緩和化」の国内回答割合の差(%)(-14.5から0)
  • 米国2年債利回り(2.5で変わらず)

上記のような変更に基づいて、他の変数を一定とすると、モデルで予想される益回りは18.2倍となり、現在の水準を6%下回ります。

 
株式市場の過剰反応

マクロ変数を用いてS&P500の益回りをモデル化するにあたり最も興味深いのは、ITバブル期と最近のパンデミック期に、益回りが一貫してモデルの益回りを下回っていることです。これら2度の期間の米国株式市場は、基礎的なマクロ指標以外のものを反映しています。どちらの期間も、行き過ぎた投資家心理と楽観主義が実体以上の過剰な反応につながったことが株価の原動力となりました。実際の益回りとモデルの益回りとの差は、センチメント主導の楽観的な時期には長期にわたって一貫してマイナスですが、上昇余地がある時はこの差も短期的に反転します(実際の益回りがモデルの予想値を上回る)。

マクロ経済の背景に比べて株式市場が過剰反応し、益回りが高くなりすぎた時期が4回あります。その時期は、ITバブル崩壊後に株式市場が最終的に底を打つ前の2002年後半~2003年前半、金融危機中の2008年~2009年、ユーロ危機中の2011年後半、そして最後に、景気が悪化する中でFRBの金利政策が失敗した2018年後半です。このような期間には、株式市場の動きは、リスク削減と流動性の制約に左右されることが多く、経済データによって裏付けられる以上に売りが加速するのです。

重要な特徴量は常に変化する

最終的なモデルは、相互検証を用いてハイパーパラメータが最適化されるランダムフォレストモデルです。モデル適合は、これらの最適化されたパラメータを用いたサンプル内データに基づいています。この考えは、益回りの将来価値を予想するのではなく、分散を説明するというものです。相互検証では、モデル誤差は、サンプル内の適合で見られる誤差(実際の益回りとモデルの益回りの差)よりもかなり大きくなります(3倍)。データを見ると、モデルが益回りの分散を説明できる能力は、モデル適合後に急低下することが分かりますが、これは驚くべきことではありません。

益回りを左右する要因は時間の経過とともに変化し、動的であるため、このモデルは本質的に不安定なものなのです。つまり、この記事内の結論は現時点では有効ですが、来年にかけて変化し始めるということです。米国住宅市場は、1994年以前と比べて1994年以降の方が、米国経済において大きな役割を果たすようになっています。このことは、1994年~2022 年の益回りを説明する上では米国住宅市場が重要だということを示していると言えそうです。時間の経過とともに、他の変数の重要度が高まると予想されます。

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