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最高投資責任者(CIO, Saxo Bank A/S)
サマリー: 本稿では12日公表予定の米3月消費者物価指数(CPI)の動向を踏まえた上で米金融政策の今後の見通し、ならびに投資家が織り込む様々な経済シナリオ(来るべきリセッションから予想以上に根強いインフレの継続、さらには現景気サイクルの長期化にいたる)について考察します。しかし、これらのシナリオが実際にどのように展開されるかについて、市場で十分な検討がなされていないのが現状です
米3月CPI公表を控えて
ブルームバーグのコンセンサス予想はコアCPIは前月比+0.4%、前年同期比+5.6%の上昇と、当グループの予想(前月比+0.4%、前年同期比+5.7%)と概ね一致しています。
インフレ鈍化の主な要因としては、主に中古車価格の下落(過去4ヵ月で-9%近く下落し、2月は前年同月比-13.6%下落)がコアCPI指数の下押し圧力となったことや、ガソリン価格(2月はウクライナ侵攻からわずか1年余りで前年同期比-2.0%下落)や、ここ最近の天然ガス価格の下落(昨年10月から2月までの5ヵ月間で-5%下落し、3月は天然ガスのスポット価格が再び大きく下落)が総合指数の減速につながったことがあります。一方、コアCPIと総合指数のいずれにおいても、輸送サービス、電気、食料の他、著しく遅行する傾向にあり寄与度の高い帰属家賃(2月は前年同期比+8.1%上昇)がインフレ加速に寄与しました。
市場コンセンサスではインフレは今後数か月間にわたって鈍化基調(0.3~0.4%程度低下)を辿り、年末時点のコアCPIは3.7%で着地すると予想されています。
しかし、これは当グループのストラテジーチームの見解とは異なっています。当グループは今年下半期にエネルギー構成品目の価格上昇を見込んでおり、帰属家賃が予想以上に急速に下落しない限り、インフレが持続的に鈍化する可能性は低いと考えています。
市場は「現状維持」との見方に極端に傾く
第1四半期の株式市場の高値と安値のレンジは、銀行破綻に伴う混乱にもかかわらず10%を下回る水準にとどまりました。3月上旬のシリコンバレー銀行の破綻後、FRBの利上げ予想が急速に後退したことから、金融市場の混乱は、市場が急激な利回り低下というネガティブかつ不確実な要素に直面しながらも、実際は強気な見方を維持する要因ともなった可能性があります。つまり、市場は方向感や確信に欠けるトレーダー主導の市場となっているのです。ここで、私が考案した4つのファクター・モデルを用いて事実のみに基づいて市場の動向を探りたいと思います。まず、第1四半期に市場が力強く持ち直した背景には、明らかに3月の銀行危機の後に金融環境が過度に緩和的になったことがあると考えられます。債券市場のボラティリティは長期の平均的な水準に戻っており、向こう18カ月間の米ドルと18か月先のFF金利は年初来低水準を付けています。
しかし、大半の市場参加者が今年下半期のリセッション入りを見越した賭けに出ていることが、こうした市場の動きを促していることを忘れてはなりません。私たちは、下半期のリセッションに賭けた取引や、インフレが持続的に4%を下回るとの見方は時間の経過と共に後退するものと考えています。
全体として、市場参加者は以下3つのシナリオを推し量っているとみられます。(出所:ゴールドマン・サックス)
ゴールドマン・サックスは機関投資家1000社を対象に調査を実施し、現在最も実現可能性が高いと考えられシナリオは、以下3つであると報告しています(パーセンテージは機関投資家の回答率)
リセッション:36%
結論:当グループは、これら3つの基本シナリオのうち、根強いインフレが続くとの見通しを維持するものの、より柔軟に対応するために景気サイクルの動向はさほど考慮していません。持続的なインフレを前提に考えた場合、理論的にはコモディティ(原油・金)のロング、米ドルおよび株式のショート(当グループのストラテジーチームは株式に対して中立のスタンスを継続)するポジションを維持しています。
なお、今週後半にマクロ経済に関する詳細のレポートを発行する予定です。