ポートフォリオの金利感応度は? ポートフォリオの金利感応度は? ポートフォリオの金利感応度は?

ポートフォリオの金利感応度は?

株式 10 minutes to read
PG
ピーター・ガンリュー

株式戦略責任者(Saxo Group)

サマリー:  米国10年債利回りがここ1年で最高の水準に上昇したことを背景に、今年の成長株は絶不調のスタートを切りました。成長株が金利上昇にいかに敏感であるかが示されています。ここでは、投資家にとってなぜ金利感応度が重要なのか、いかにして株式デュレーションのリスクを軽減するかについて検討します。また、最近のSea Ltdの株価急落についても取り上げます。Tencentが保有株を30億ドル分減らしたとの発表を受けて、Sea Ltd株は5日、下落幅をさらに拡大しました。


成長株の足かせとなっている米国の金利上昇

今年に入ってからNasdaq 1004%下落している一方、米国10年債利回りは22ベーシスポイント上昇しています。5日夜に公表されたFOMC議事録で、昨年12月のプレスリリースと比べてFRBがインフレにやや神経質になったことが示されたため、金利上昇圧力が一層強まりました。株式デュレーション(金利感応度)は、1を逆方向の動きとすると、Nasdaq 100については約18、バブル株バスケットについては約50になります。これに関しては、5日のエクイティノートで述べました。ここでは全ての動きが金利上昇に左右されると仮定していますが、高次元の複雑な状況においては当然その通りにはなりません。

Source: Saxo Group
Source: Bloomberg

昨年は、年初の金利上昇局面でNasdaq 100指数が冴えない展開となった時を始めとして、成長株の物色にテーマが戻った11月にも、我々は再三にわたり金利感応度について説明しました。現在の企業の株価評価になるために予想されるフリーキャッシュフローが大きいほど、株式デュレーションは高くなります。株式デュレーションとは実のところ何であり、なぜそれが株式ポートフォリオにとって重要なのでしょうか?

株式デュレーションとその重要性

株式デュレーションとは、他の変数を一定とした場合、該当する10年債利回り(キャッシュフローの計算に用いられる通貨による)が100ベーシスポイント変動することによるインパクトを推計したものです。私は最近、割引キャッシュフローモデルに基づいて、Adobeの株式デュレーションを約25と推計していました。この数字は、今週の所見に基づいて推計された42より低い値です。このことは、単なる金利変動以上のことが起こっているという当社の主張を裏付けています。我々が5日に強調した通り、根強いインフレ見通しにより、投資家がポートフォリオに別のタイプの銘柄を加えることから、ポートフォリオの変更が促され、成長株が打撃を受ける可能性があります。

株式デュレーションの概念を理解し、それを測定しようとすることが重要なのは、それにより金利リスクという考えが身に付くためです。金利リスクが株価に影響を及ぼす理由は、株式はキャッシュを生み出す資産に対する請求権であり、そのため割引将来キャッシュフローに基づいて株価が決定されるからです。無リスクの金利は割引率に直接反映されるのです。つまり金利上昇は割引率の上昇、そして株価評価の低下もしくは安定を意味します。投機的な成長株は株式デュレーションが高いものが多いですが、自己資本と比べて負債による資金調達の度合いが大きい企業も株式デュレーションが高くなります。

多くの個人投資家はほぼ間違いなく投機的な成長株への投資配分が大きすぎるため、知らないうちに金利リスクも大きくなっているのです。ここ1年間述べてきたように、株式デュレーションが低い資産、とりわけインフレヘッジになると思われる資産と成長株とを組み合わせて、ポートフォリオのバランスをとることに着手するのが賢明です。以下のグラフは202011月初旬以降の金利感応度を示しています。米国10年債利回りが5ベーシスポイント以上上昇した日には、Nasdaq 100のパフォーマンスはMSCI Worldを大幅に下回っている一方、STOXX 600のパフォーマンスは世界株式を上回っていることが分かります。このことから、米国の金利上昇期には、米国株と欧州株を組み合わせることが優れた方法だと言えます。また、当社の様々なテーマバスケット全体の年初来のパフォーマンスを見ると、コモディティセクター(エネルギー、鉱業、化学、農業、防衛、物流)が株式デュレーションを低下させることができることが示されています。

最後に付け加えると、株価評価の第一人者であるニューヨーク大学のAswath Damodaran教授は、金利上昇が株式に与える影響をまとめた表を20213月に公表しています。重要な点は、金利上昇が実質成長率予想の上昇によるものなのか、インフレ率の上昇によるものなのかを見極めることです。もし後者ならば、株価評価にとって明らかに一層のマイナス要因です。

Source: Aswath Damodaran

Sea LtdTencentによる売却と業績不安で打撃

当社は以前、Sea Ltdについて書いたことがありますが、同社株をカバーする株式アナリストや強気派の投資家と比べると、同社についてやや批判的な立場をとっていました。同社は基本的に、ドル箱のモバイルゲーミング分野(数少ない資産への依存度が高い)を資金源としてEコマース分野に積極的に進出しています。しかし、積極的な価格プロモーション戦略をとったことでコストがかさみ、同社のEコマース部門は損失を出しています。Seaは東南アジアで大成功を収め、現在では南米などの遠い拠点にもそのモデルを取り入れています。しかし、ゲーム分野やEコマース分野における同業他社との競争は激化しており、株価は昨年10月の高値から51%下落しています。テクノロジー株が急落した5日には、同社株は6.6%下落しました。

Tencent5日、30億ドル相当のSea株を売却し保有比率を21.3%から18.7%に引き下げたこと、また議決権が10%未満になることを発表しました。これに先立つ動きとして、中国政府が、新しいテクノロジー規制の下で非競争的行為を減らすため、中国の他のテクノロジー企業に対し様々な業界における保有株の売却を強く求めていたことがありました。Seaは急成長を遂げており、非常に収益性の高い企業になることはほぼ間違いありませんが、投資家は収益性に応じてリスク選好を変えている可能性が高く、Seaのような急成長企業はより早く黒字化することを迫られています。そのため、同社にとって次の決算発表が正念場となります。

Source: Saxo Group

口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。 

最短3分で入力完了!

【ご留意事項】

■当資料は、サクソバンクグループのアナリストによるマーケット分析レポートの転載、もしくは外部のアナリストからの寄稿となっております。
■当資料は、いずれも情報提供のみを目的としたものであり、特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
■当資料は、作成時点において執筆者またはサクソバンク証券(以下「当社」)が信頼できると判断した情報やデータ等に基づいていますが、執筆者または当社はその正確性、完全性等を保証するものではありません。当資料の利用により生じた損害についても、執筆者または当社は責任を負いません。 
■当資料で示される意見は執筆者によるものであり、当社の考えを反映するものではありません。また、これら意見はあくまでも参考として申し述べたものであり、推奨を意味せず、また、いずれの記述も将来の傾向、数値、投資成果等を示唆もしくは保証するものではありません。 
■当資料に記載の情報は作成時点のものであり、予告なしに変更することがあります。 
■当資料の全部か一部かを問わず、無断での転用、複製、再配信、ウェブサイトへの投稿や掲載等を行うことはできません。
■上記のほか、当資料の閲覧・ご利用に関する「免責事項」をご確認ください。 
■当社が提供するデリバティブ取引は、為替相場、有価証券の価格や指数、貴金属その他の商品相場または金利等の変動によって損失を生じるおそれがあります。また、お預けいただく証拠金額に比べてお取引可能な金額が大きいため、その損失は、預託された証拠金の額を上回る恐れがあります。
■当社が提供する外国証券取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。手数料については、「取引金額×一定料率」又は「取引数量×一定金額」で求めた手数料が一回の取引ごとに課金されます。ただし手数料の合計額が当社の定める最低手数料に満たない場合は、手数料に代えて最低手数料を徴収させていただきます。また取引所手数料等の追加費用がかかる場合があります。 
■取引にあたっては、取引説明書および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。 
■当社でのお取引にかかるリスクやコスト等については、 こちらも必ずご確認ください。

サクソバンク証券株式会社
Saxo Bank Securities Ltd.
Izumi Garden Tower 36F
1-6-1 Roppongi Minato-ku
Tokyo 106-6036
〒106-6036 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデンタワー36F

お問い合わせ

国・地域を選択

日本
日本

【重要事項及びリスク開示】

■外国為替証拠金取引は各通貨の価格を、貴金属証拠金取引は各貴金属の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、売買の状況によってはスワップポイントの支払いが発生したり、通貨の金利や貴金属のリースレート等の変動によりスワップポイントが受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■外国為替オプション取引は外国為替証拠金取引の通貨を、貴金属オプション取引は貴金属証拠金取引の貴金属を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。また、オプションの売り側は権利行使に応える義務があります。
■株価指数CFD取引は株価指数や株価指数を対象としたETFを、個別株CFD取引は個別株や個別株関連のETFを、債券CFD取引は債券や債券を対象としたETFを、その他証券CFD取引はその他の外国上場株式関連ETF等を、商品CFD取引は商品先物取引をそれぞれ原資産とし、それらの価格の変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、建玉や売買の状況によってはオーバーナイト金利、キャリングコスト、借入金利、配当等調整金の支払いが発生したり、通貨の金利の変動によりオーバーナイト金利が受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■上記全ての取引においては、当社が提示する売価格と買価格にスプレッド(価格差)があり、お客様から見た買価格のほうが売価格よりも高くなります。
■先物取引は各原資産の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。
■外国株式・指数オプション取引は、対象とする有価証券の市場価格や対象となる指数、あるいは当該外国上場株式の裏付けとなっている資産の価格や評価額の変動、指数の数値等に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、対象とする有価証券の発行者の信用状況の変化等により、損失が発生することがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。さらに、外国株式・指数オプションは、市場価格が現実の市場価格等に応じて変動するため、その変動率は現実の市場価格等に比べて大きくなる傾向があり、意図したとおりに取引ができず、場合によっては大きな損失が発生する可能性があります。また取引対象となる外国上場株式が上場廃止となる場合には、当該外国株式オプションも上場廃止され、また、外国株式オプションの取引状況を勘案して当該外国株式オプションが上場廃止とされる場合があり、その際、取引最終日及び権利行使日が繰り上げられることや権利行使の機会が失われることがあります。対象外国上場株式が売買停止となった場合や対象外国上場株式の発行者が、人的分割を行う場合等には、当該外国株式オプションも取引停止となることがあります。また買方特有のリスクとして、外国株式・指数オプションは期限商品であり、買方がアウトオブザマネーの状態で、取引最終日までに転売を行わず、また権利行使日に権利行使を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。また売方特有のリスクとして、売方は証拠金を上回る取引を行うこととなり、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。売方は、外国株式・指数オプション取引が成立したときは、証拠金を差し入れ又は預託しなければなりません。その後、相場の変動や代用外国上場株式の値下がりにより不足額が発生した場合には、証拠金の追加差入れ又は追加預託が必要となります。また売方は、権利行使の割当てを受けたときには、必ずこれに応じなければなりません。すなわち、売方は、権利行使の割当てを受けた際には、コールオプションの場合には売付外国上場株式が、プットオプションの場合は買付代金が必要となりますから、特に注意が必要です。さらに売方は、所定の時限までに証拠金を差し入れ又は預託しない場合や、約諾書の定めによりその他の期限の利益の喪失の事由に該当した場合には、損失を被った状態で建玉の一部又は全部を決済される場合もあります。さらにこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。外国株式・指数オプション取引(売建て)を行うにあたっては、所定の証拠金を担保として差し入れ又は預託していただきます。証拠金率は各銘柄のリスクによって異なりますので、発注前の取引画面でご確認ください。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、取引証拠金を事前に当社に預託する必要があります。取引証拠金の最低必要額は取引可能な額に比べて小さいため、損失が取引証拠金の額を上回る可能性があります。この最低必要額は、取引金額に対する一定の比率で設定されおり、口座の区分(個人または法人)や個別の銘柄によって異なりますが、平常時は銘柄の流動性や価格変動性あるいは法令等若しくは当社が加入する自主規制団体の規則等に基づいて当社が決定し、必要に応じて変更します。ただし法人が行う外国為替証拠金取引については、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用いて通貨ペアごとに算出(1週間に1度)した比率を下回らないように当社が設定します。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、損失が無制限に拡大することを防止するために自動ロスカット(自動ストップロス)が適用されますが、これによって確定した損失についてもお客様の負担となります。また自動ロスカットは決済価格を保証するものではなく、損失がお預かりしている取引証拠金の額を超える可能性があります。
■外国証券売買取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。
■取引にあたっては、契約締結前交付書面(取引説明書)および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。

サクソバンク証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
手数料:各商品の取引手数料についてはサクソバンク証券ウェブサイトの「取引手数料」ページや、契約締結前交付書面(取引説明書)、取引約款等をご確認ください。