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Chief Investment Strategist
サマリー: 米国10年債利回りがここ1年で最高の水準に上昇したことを背景に、今年の成長株は絶不調のスタートを切りました。成長株が金利上昇にいかに敏感であるかが示されています。ここでは、投資家にとってなぜ金利感応度が重要なのか、いかにして株式デュレーションのリスクを軽減するかについて検討します。また、最近のSea Ltdの株価急落についても取り上げます。Tencentが保有株を30億ドル分減らしたとの発表を受けて、Sea Ltd株は5日、下落幅をさらに拡大しました。
成長株の足かせとなっている米国の金利上昇
今年に入ってからNasdaq 100が4%下落している一方、米国10年債利回りは22ベーシスポイント上昇しています。5日夜に公表されたFOMC議事録で、昨年12月のプレスリリースと比べてFRBがインフレにやや神経質になったことが示されたため、金利上昇圧力が一層強まりました。株式デュレーション(金利感応度)は、1を逆方向の動きとすると、Nasdaq 100については約18、バブル株バスケットについては約50になります。これに関しては、5日のエクイティノートで述べました。ここでは全ての動きが金利上昇に左右されると仮定していますが、高次元の複雑な状況においては当然その通りにはなりません。
昨年は、年初の金利上昇局面でNasdaq 100指数が冴えない展開となった時を始めとして、成長株の物色にテーマが戻った11月にも、我々は再三にわたり金利感応度について説明しました。現在の企業の株価評価になるために予想されるフリーキャッシュフローが大きいほど、株式デュレーションは高くなります。株式デュレーションとは実のところ何であり、なぜそれが株式ポートフォリオにとって重要なのでしょうか?
株式デュレーションとその重要性
株式デュレーションとは、他の変数を一定とした場合、該当する10年債利回り(キャッシュフローの計算に用いられる通貨による)が100ベーシスポイント変動することによるインパクトを推計したものです。私は最近、割引キャッシュフローモデルに基づいて、Adobeの株式デュレーションを約25と推計していました。この数字は、今週の所見に基づいて推計された42より低い値です。このことは、単なる金利変動以上のことが起こっているという当社の主張を裏付けています。我々が5日に強調した通り、根強いインフレ見通しにより、投資家がポートフォリオに別のタイプの銘柄を加えることから、ポートフォリオの変更が促され、成長株が打撃を受ける可能性があります。
株式デュレーションの概念を理解し、それを測定しようとすることが重要なのは、それにより金利リスクという考えが身に付くためです。金利リスクが株価に影響を及ぼす理由は、株式はキャッシュを生み出す資産に対する請求権であり、そのため割引将来キャッシュフローに基づいて株価が決定されるからです。無リスクの金利は割引率に直接反映されるのです。つまり金利上昇は割引率の上昇、そして株価評価の低下もしくは安定を意味します。投機的な成長株は株式デュレーションが高いものが多いですが、自己資本と比べて負債による資金調達の度合いが大きい企業も株式デュレーションが高くなります。
多くの個人投資家はほぼ間違いなく投機的な成長株への投資配分が大きすぎるため、知らないうちに金利リスクも大きくなっているのです。ここ1年間述べてきたように、株式デュレーションが低い資産、とりわけインフレヘッジになると思われる資産と成長株とを組み合わせて、ポートフォリオのバランスをとることに着手するのが賢明です。以下のグラフは2020年11月初旬以降の金利感応度を示しています。米国10年債利回りが5ベーシスポイント以上上昇した日には、Nasdaq 100のパフォーマンスはMSCI Worldを大幅に下回っている一方、STOXX 600のパフォーマンスは世界株式を上回っていることが分かります。このことから、米国の金利上昇期には、米国株と欧州株を組み合わせることが優れた方法だと言えます。また、当社の様々なテーマバスケット全体の年初来のパフォーマンスを見ると、コモディティセクター(エネルギー、鉱業、化学、農業、防衛、物流)が株式デュレーションを低下させることができることが示されています。
最後に付け加えると、株価評価の第一人者であるニューヨーク大学のAswath Damodaran教授は、金利上昇が株式に与える影響をまとめた表を2021年3月に公表しています。重要な点は、金利上昇が実質成長率予想の上昇によるものなのか、インフレ率の上昇によるものなのかを見極めることです。もし後者ならば、株価評価にとって明らかに一層のマイナス要因です。
Sea LtdはTencentによる売却と業績不安で打撃
当社は以前、Sea Ltdについて書いたことがありますが、同社株をカバーする株式アナリストや強気派の投資家と比べると、同社についてやや批判的な立場をとっていました。同社は基本的に、ドル箱のモバイルゲーミング分野(数少ない資産への依存度が高い)を資金源としてEコマース分野に積極的に進出しています。しかし、積極的な価格プロモーション戦略をとったことでコストがかさみ、同社のEコマース部門は損失を出しています。Seaは東南アジアで大成功を収め、現在では南米などの遠い拠点にもそのモデルを取り入れています。しかし、ゲーム分野やEコマース分野における同業他社との競争は激化しており、株価は昨年10月の高値から51%下落しています。テクノロジー株が急落した5日には、同社株は6.6%下落しました。
Tencentは5日、30億ドル相当のSea株を売却し保有比率を21.3%から18.7%に引き下げたこと、また議決権が10%未満になることを発表しました。これに先立つ動きとして、中国政府が、新しいテクノロジー規制の下で非競争的行為を減らすため、中国の他のテクノロジー企業に対し様々な業界における保有株の売却を強く求めていたことがありました。Seaは急成長を遂げており、非常に収益性の高い企業になることはほぼ間違いありませんが、投資家は収益性に応じてリスク選好を変えている可能性が高く、Seaのような急成長企業はより早く黒字化することを迫られています。そのため、同社にとって次の決算発表が正念場となります。