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サマリー: ロシア軍が成功を収めていないことに対する安心感と、テクノロジー株へのローテーションを伴う平均回帰の動きから、このところ米国の株式市場は上昇してきました。速いペースの金融引き締めと5日のブレイナード理事の発言を踏まえると、金融情勢と株式市場は間もなく、大幅なボラティリティ上昇と株価下落の可能性がある危険ゾーンに突入することになります。今回の記事では、短期間に金融情勢が大幅に引き締められた場合、株価はどうなるのかを過去のデータから検討します。
ブレイナード理事の発言は株式市場の波乱を示唆
ウクライナでの戦争による株価下落とコモディティ市場の混乱を経て、ここ数週間に米国株が上昇してきたことは、当然ながら安心感をもたらし、平均回帰の動きとなりました。しかし、この上昇相場は終わった可能性が高く、テクノロジー株へのローテーションは再び反転し、銀行株、バリュー株、コモディティセクターに資金が流入すると見られます。
FRBのラエル・ブレイナード理事は5日、インフレは低所得世帯には代替効果がなく、偏った打撃を与えるとして、インフレ抑制が「極めて重要だ」という力強いメッセージを発しました。つまり、既に最も安い消費財を購入している世帯では、さらに安価なもので代替できないため、インフレ率の上昇による打撃が大きいということです。また、ブレイナード理事は、急速にバランスシート縮小を進める意向も示しました。FRBが米国経済の最新動向を注視する中、ISMが最近発表した3月のサービス部門データは58.3に上昇しました。経済の供給側はインフレを抑制するのに十分な速さで調整できないため、FRBは需要を抑え込みたい考えです。これは、今後数ヶ月にわたり金融情勢が大幅に引き締められることを意味します。
1971年~2022年のデータによると、米国の3カ月間の金融情勢の差は、株式のリターンと負の相関性があります(金融情勢が引き締められるほど、株式のリターンが低くなる)。以下の表では、Chicago Fed Adjusted Financial Conditions Indexの3カ月間の差を十分位数に分け、それぞれの平均株式リターン、平均株式リターンからインフレを差し引いた値、月間株価ボラティリティを示しています。現在、3カ月間の差は0.45であり、金融情勢の変動という点で、経済が第9十分位数のレンジ上限にあるということです。
現在のような金融引き締め体制では、米国株式の月間の名目リターンは小幅なプラス、インフレ調整後のリターンは小幅なマイナスになるという関連性が示されています。月間の株式のボラティリティも通常期に比べて大幅に高くなります。しかし、さらに金融情勢が引き締められれば、金融情勢の変動という点で、金融引き締めが急速に進んでいることを意味する第10十分位数に進むことになりそうです。過去のデータでは、このような積極的な金融引き締め時には、株式の名目リターンと実質リターンはともに大幅なマイナスとなり、ボラティリティは通常よりも大幅に高くなるという関連性が示されています。ブレイナード理事は5日、金融情勢が一段と大幅に引き締められる可能性があることを示唆しました。そのため、今後、株式市場はさらに波乱の展開となる危険ゾーンに突入する可能性がかなり高いと見られます。
株式のテーマに関しては、我々はコモディティ、防衛、サイバーセキュリティ、物流(ただし、コンテナ料率の下落は厳しいと見られる)、再生可能エネルギー(エネルギー面でのEUの自立が追い風)のオーバーウェイトを維持します。一方、Eコマース、バブル株、中国株、次世代医薬品株を引き続きアンダーウェイトにします。半導体は、業界内での価格競争力があるにもかかわらず低調に推移しており、センチメントがすぐに回復しないならば、半導体テーマについても弱気の見方に転じることになります。半導体業界は非常に景気循環色が強いため、半導体が低調であることは、一般に良い兆候ではありません。