WCU: マクロでは弱気、ミクロでは強気の見方が継続 WCU: マクロでは弱気、ミクロでは強気の見方が継続 WCU: マクロでは弱気、ミクロでは強気の見方が継続

WCU: マクロでは弱気、ミクロでは強気の見方が継続

商品
オール・ハンセン

コモディティ戦略責任者

サマリー:  今週の商品相場は、世界のマクロ経済動向が引き続き注目されて弱含みで推移しました。一部の個別商品で見られた在庫の減少など、支援材料となったはずのミクロ動向の影響は、マクロ経済動向への注目により相殺されました。しかし、全体的には、商品とその長期的な上昇力に関する当社の長期的な見解は変わっていません。その主な理由は、過小投資、都市化、グリーントランスフォーメーション、対ロシアへ制裁、脱グローバリズムなどです。


今週の商品相場は、世界のマクロ経済動向が引き続き注目されて弱含みで推移しました。一部の個別商品で見られた在庫の減少など、支援材料となったはずのミクロ動向の影響は、マクロ経済動向への注目により相殺されました。ドル相場は再び強含み、米国債利回りは上昇し、米国株は1か月にわたる弱気相場の一時的上昇が息切れして反落しました。

その引き金となったのは、米連邦準備制度理事会(FRB)高官らが、物価上昇率が従来の長期目標である2%前後となるまで利上げを継続する決意を改めて表明したことでした。このコメントにより、最近の一連の弱い経済統計を根拠にFRBが将来の利上げペースを鈍化させるであろうとの期待が一掃されました。

ガソリンやディーゼル、石炭、特にガスなどのエネルギー価格の高止まりをはじめ、インフレとの戦いは依然として勝利には程遠く、世界経済がさらに減速するリスクが高まっています。マクロとミクロの攻防が続いていることは明らかであり、その結果、短期・中期では先行き不透明な状況が長く続くと思われます。

しかし、全体として、こうした動きは商品相場とその長期的な上昇力に関する当社の見方を変えるものではありません。今週初めに開催した四半期ごとのウェビナーでは、いわゆるオールドエコノミー、つまり有形資産が、過少投資、都市化、グリーントランスフォーメーション、対ロシア制裁、脱グローバリゼーションを背景に、今後数年にわたり好調に推移すると当社が見ている理由をいくつか紹介しました。
 
先週のブルームバーグ商品指数は、上のチャートの通り2.3%の下落となり、人民元を含む10通貨全てに対するドル高の進行を受けた形での動きとなりました。なお、EUのTTFガス価格と電力価格はそれぞれ約23%と20%上昇し、パリ製粉の小麦は下落しましたが、この商品指数には含まれていません。

エネルギーは、ディーゼル精製品や米国産天然ガスがけん引して全般的に上昇し、その他のセクターの下落を相殺しました。世界的な小麦価格の下落を受けた穀物セクターや、ドル高・利回り上昇の影響を受けた貴金属が下落しました。

インフレ対策とその成長への影響が依然として最大の関心事

中国のゼロコロナ政策による成長見通しの鈍化や住宅市場危機が工業用金属に打撃を与えていることを除けば、最近の商品相場にとって最も重要な要因は、世界中の中央銀行が積極的な金融引き締めで経済活動を抑制し、暴走するインフレを抑制する努力を強めていることにより、マクロ経済の見通しが大きく左右されていることにあります。この状況は現在も進行中であり、それが成果を上げるまでの時間が長引けば長引くほど、経済が崩壊するリスクは大きくなります。米国の1年後のインフレ期待はすでに大きく低下していますが、それでも中長期的な期待は3%前後にとどまり、FRBの目標値である2%を大きく上回っています。

特にエネルギーコストの上昇を考慮すると、現時点で3%の水準に到達することも難しいとみられます。この目標が達成できない場合、商品価格にとって最大の短期的リスクとなるのは、金利上昇によって成長率が低下し、株式市場が再び下落し、リスク選好度が低下することです。しかし、このような状況下では、いわゆる政策の間違いに対するヘッジとして、金、そしていずれは銀が有益な投資対象になると当社は引き続き考えています。

世界の小麦価格は暴落

ロシア産の小麦が記録的な収穫量となる見込みであること、ウクライナ産の小麦が引き続き流入していること、そしてドル高が相まって、パリとシカゴでは価格が下落しました。最近開通したウクライナからの輸送ルートでは、今月これまでに50万トン以上の作物が出荷されており、通常のペースをはるかに下回っているものの、他の地域では天候不順により混乱した状況にある中で、幾分の安心材料となっています。シカゴ小麦先物は7.75ドル/buの支持線を突破して1月の安値を付け、パリ製粉用小麦(EBMZ2)は3月以来の安値近辺で取引されています。しかし、3月のパニック買いの原因となった不確定要素のほとんどが取り除かれたことから、ウクライナ戦争と、それに伴うトウモロコシ、小麦、ヒマワリ油などの主要食糧商品の生産・輸出能力が依然として未知数ではあるものの、これまでより落ち着いた状況が戻ってくるはずです。

EUのガスが73ドル/MMBtuまたは原油換算で415ドルまで上昇

欧州の天然ガスは、今年最長の週次上昇となり、産業や家庭への圧迫を強めると同時に、地域全体の経済を景気後退に追い込む恐れも強まっています。ロシアからの供給減少によりガスと電力の価格は既に上昇していましたが、それに加え、8月の熱波による需要の増加や、ライン川の水位低下が、最近の一層の価格上昇につながりました。ライン川の水位低下により、石炭や軽油などの必需品を運搬する船舶の安全な航行が困難となり、ドイツのシェル社のラインランド製油所などの製油所も減産を余儀なくされています。また、欧州の亜鉛とアルミニウムの製錬能力の半分が停止しているため、需要の先行きが懸念している中で、これらの金属の価格が下支えされています。

豊富な雨量と気温の低下により、短期的には最近の価格高騰が解消されるかもしれませんが、全体的に見れば、供給の観点から今年の冬の大きな懸念材料であることに変わりはありません。特に、アジアとのLNG輸送の競争が激化するリスクを考慮すると、さらに懸念が強まります。
 

精製マージンの上昇が原油相場の新たな支援材料に

6月以来下落傾向にある原油は、テクニカルな見通しが価格優位に転じ、売り疲れの兆しを見せており、新たなファンダメンタルズの展開も一定の支援材料となっています。中国の新型コロナウイルスへの対応問題や不動産問題、金利の急上昇などによる景気減速懸念が、3月以降、他の商品セクターでも売りを誘い、6月中旬には原油にも影響を与えました。それ以来、ブレント原油価格は上下28ドルの調整局面を迎えています。

マクロ経済の見通しは依然として厳しいものの、最近の石油市場の動向、すなわちミクロ動向からは上昇圧力が加わる可能性があります。欧州ではエネルギー危機が深刻化しており、その結果、ガス価格が高騰し、燃料系製品への関心が高まっています。このガスから燃料への転換は、IEAが最新の更新で、2022年の世界の石油需要の伸び率予測を日量38万バレル増の210万バレルに引き上げた理由として、特に言及したものです。同レポートが発表されて以来、切り替えのインセンティブはさらに高まり、製油所のマージンにはさらに上昇圧力がかかるようになりました。

ここ数か月、需要の弱さが目立つようになりましたが、全般的に価格が下支えされるとの見通しに重大な影響を与えるとは考えていません。米国の戦略的備蓄原油の放出が間もなく期限を迎えることや、EUによるロシア産原油の禁輸措置が間近に迫っていることなどから、供給サイドの不確実性は依然として無視できないほど高まっているとみられます。加えて、高価なガスに代わる燃料系製品の需要も高まっています。こうした点を考慮し、当社は当四半期のブレント原油価格の予想を95ドルから115ドルのレンジで据え置いています。

金、銀ともにドル高、利回り上昇でもみ合い

複数のFOMCメンバーのタカ派的な発言をきっかけにドルが上昇し、米国10年債利回りが3%に向かって上昇したことから、金、銀とも、特に銀はこの週、下落しました。この数週間は、両者とも小康状態が続いており、同時期に株式市場も上昇していたため、金の需要は、先物市場の投機筋に追随する動きが中心となっていました。

先週は投機筋のポジション調整の結果、先物の買い越しが2週間で6万3000枚(630万オンス)増加し、過去6カ月で最も強い買い越しペースとなったことから、強気の建玉を減らす必要性に迫られたため、反転しました。一方、ETFの保有額は6カ月ぶりの低水準に落ち込んでおり、投資家が今のところ、FOMCが比較的短期間にインフレを抑制出来ると信頼していることを示しています。この点に疑問を持つ投資家は、政策の誤りに対するヘッジとして、ロングポジションを維持する必要があります。

金のドル建て年初来パフォーマンスがマイナスであることにやりきれなさを感じる投資家もいるかもしれませんが、2013年以来最大の実質利回りの急上昇とドルの急騰に対処しなければならなかったことを考慮すると、特に非ドル建て投資家にとっては債券や株式の損失と比較して、そのパフォーマンスは依然として許容範囲内です。つまり、政策ミスなど不測の地政学的事象に対する金でのヘッジは、今のところほぼコストフリーなのです。

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