ウイークリー・コモディティ・アップデート:ソフトセクターは足踏み、軽油が原油を押し上げる

ウイークリー・コモディティ・アップデート:ソフトセクターは足踏み、軽油が原油を押し上げる

商品
オーレ・ハンセン

コモディティ戦略責任者(Saxo Group)

サマリー:  先週、商品取引は強弱交錯し、燃料を筆頭とするエネルギーセクターが力強く推移した一方、農業、特にコーヒーと綿花の軟調が続いたことによってソフトコモディティセクターは1年ぶりの安値まで下落しました。全般にドル相場が主要商品の方向性に引き続き強い影響を及ぼしており、特に金は、FOMCが現在の利上げサイクルの経済的影響を見極めるために間もなく一時停止するのではないかという憶測の高まりからサポートされています。


先週、商品取引は強弱交錯し、エネルギーセクターが力強く推移した一方、農業セクター、特にコーヒーと綿花の軟調が続いたことによってソフトコモディティセクターは1年ぶりの安値まで下落しました。工業用金属は、中国共産党第20回全国代表大会の終了に伴う中国の動向に注目し、またドルも軟調に推移したことから、小幅な上昇となりました。一方、貴金属は、米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派的な姿勢がピークに近づくとの思惑から、債券やドルのセンチメントが変化したことを受けて、いくらかサポートされました。

今回の金の回復は、FRBが来年初頭までに利上げペースを緩める計画であるとの観測が強まったことを受けたものです。これは、FOMCが、既に実施した急速な利上げと量的引き締めが経済に与える影響を見極めるための時間を設ける意向であるとの見方です。しかし、週末にかけてドルが一段と強含んだことにより、金の上昇幅はやや縮小しました。ドルは、ECBがハト派的な発言をしたことでユーロに対して、また日銀がイールドカーブコントロール政策を維持する一方で政府が大規模な財政出動を伴う計画を発表したことで円に対して強含みました。日銀は、国債利回りの調整を許容していないため、他の主要中央銀行が緩和姿勢にない限り、円安が進む可能性があります。

原油は燃料供給逼迫の見通しがサポート

原油は2週にわたって上昇し続けていますが、今のところ抵抗線には達していないことから、市場を方向付ける有力なテーマがなく、方向感に乏しい状況となっています。今週は、燃料製品市場の逼迫が続いていること、米国の原油および燃料の輸出が週間記録を更新したこと、ドル安、および中国の製油所が年末にかけて燃料輸出の増加を計画していることから中国からの強い買いが入ったことが、上昇の原動力となりました。

7月以降、原油はほぼレンジ内で推移していますが、燃料製品市場は、欧米の供給不足が深刻化しているため、ガソリンや軽油・灯油・ジェット燃料などの留出油の精製マージンが上昇し、逼迫した状態が続いています。逼迫感という点では、軽油と灯油の在庫が少ない北半球の製品市場が引き続き懸念材料となっています。ウクライナ戦争や、欧州への主要な精製品供給国であるロシアへの制裁により、市場は根底から覆されました。また、ガス料金の高騰は、ガスから他の燃料、特に軽油や灯油への切り替えの活発化を後押ししています。

OPECプラスが来月から減産することを決定し、この逼迫した市況をさらに悪化させました。米国産(ライトスイート)原油が引き続き戦略備蓄から放出され、ガソリンの生産を支えることになりますが、OPECプラスの減産は主に、留出油の生産量が最も多い中・重質原油を生産するサウジアラビア、クウェート、UAEが行う予定となっています。
Source: Saxo Group
製品市況がこれだけタイトである限り、景気後退の懸念はあるにせよ、原油価格が下落するリスクは低いと思われるため、当四半期のブレント原油先物価格レンジは85ドルから100ドルの間を維持し、製品市況のタイト化によって、ますます上方圧力が加わると予想されます。

コーヒー、綿花、砂糖にとっては厳しい期間となった

ブルームバーグ・ソフトコモディティ指数は、アラビカコーヒーが6%下落の175セント/ポンドとなったのを筆頭に、今週は5%下落しました。ブラジルの2023/24年産の作柄見通しが改善の兆しを見せているものの、世界経済の減速による需要減退懸念から、投資家が長期にわたる強気のポジションを解消し続け、ますます厳しい見方をしているため、アラビカコーヒーの価格は過去14か月で最低水準となっています。しかし、対象銘柄が過去23年で最低の水準にとどまっていること、テクニカル上、かなり売られ過ぎであることを考慮すると、そろそろ173セント/ポンドあたりが支持線となる可能性があります。この水準は、2019年から2022年にかけて86セントから260セントに上昇した相場の50%修正に相当します。

砂糖は、ブラジルレアル安によって輸出意欲が高まり、供給が増加する一方で、最近確立された投機的なロングポジションが解消されたことによる打撃を受けています。綿花は5月のピークから53%下落し、世界中の消費者が支出を控えたため、供給に対する需要が弱く、2年ぶりの安値に近いところまで急落しました。主要出荷国である米国の週間輸出販売量は前年同期比で急減し、今シーズン全体の販売量は昨年や長期平均を大きく下回っています。販売不振の主な原因は、現在の景気後退で繊維製品の需要が落ち込んでおり、主要な買い手である中国からの注文がキャンセルされたことです。このことは、MSCIワールド・テキスタイル・アパレル・高級品指数の低迷に反映されており、MSCIワールド・インデックスの年初来下落率22%に対して、35%下落しました。

Source: Saxo Group

金は11月2日のFOMCをにらんで神経質な展開

サクソでは、金について、中期的には強気だが、短期的には慎重な見通しを維持しています。最近のレポートでは、FOMCが現在の利上げサイクルの経済的影響を見極めるために間もなく一時停止するのではないかという憶測が、最近の上昇を支えていることを取り上げました。さらに、長期的なインフレ率は4-5%程度になるとの見方も維持しており、これは現在の市場予想である3%以下を大きく上回っています。この見方が正しければ、ブレークイーブン・インフレ率(市場が推測する期待インフレ率)とインフレスワップレートが大きく調整されることになり、実質金利の低下を通じて金の支援材料となる可能性があります。

投機筋や投資家は、米連邦準備制度理事会(FRB)の考え方が明らかになるまで、ほとんど様子見に徹する可能性が高く、それゆえ来週のFOMCが重要視されるのです。週刊コミットメント・オブ・トレーダーズ・レポートでは、先物市場の投機筋は過去数週間振り回されており、そのため、より明確な展望が得られるまで積極的に動く意欲をなくしています。金を裏付けとするETFの投資家も同様で、6月以降、ほぼ継続的に売り越しとなっています。全体の保有量は2965トンと30か月ぶりの低水準に落ち込み、4月のピークから11%減少しています。

1615ドルの重要な支持線近辺を再び抜けた後、1か月に及ぶ下降トレンドに終止符を打つには、1735ドルを突破し、下降トレンドラインを反転させることが最低条件となります。しかし、このレベルへの道筋には、1687ドルと1700ドルを筆頭に、いくつかの小さな抵抗線が残っています。モーメンタムが再び築かれるまでには、利回り、地政学上の展開、ドルの方向性が注目されます。ドルは、ECB理事会と日銀金融政策決定会合後に上昇し、コモディティ、特にここ数週間高い負の相関を示している金に対しては支持材料とならなくなっています。


今週(10月24日の週)初め、私は、ヘッジファンド・マネージャーのエリック・タウンゼントとともに、広く聴かれているポッドキャスト「マクロヴォイス」に出演し、商品セクターの現在の状況について概説しました。その中で、経済情勢に暗雲が立ち込めているにも関わらず、このセクターが今後数年にわたって好調を維持すると考える理由を説明しました。そのリプレイおよびYouTubeはこちらから再生可能です。

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