サマリー: 今週はNY天然ガスを取り上げました。天然ガス価格は欧州の暖冬の影響もあって大幅に価格が下がり、既に1年前と比べてマイナス圏へと下げて来ています。これまでエネルギー価格の高騰が高いインフレ率の大きな理由であったことを考えると、海上輸送コストも同時に大幅安となっている現状を考えると、2023年は欧米のインフレ率の更なる低下と思いのほか早い段階で緩和に転じるのではないかという見方も出てきそうです。
今週は大幅な価格下落が続くNY天然ガス先物(NGc1)と米国個別株CFDを2つ取り上げます。
■NY天然ガス先物(NGc1)
昨年のインフレ率高騰の大きな理由に原油や天然ガスといったエネルギー価格の高騰がありましたが、最近は特に天然ガス価格の下落が目立ちます。欧州ではロシアからの天然ガス供給が止まり、冬を越せるのかという懸念もありましたが、この冬に関しては幸い杞憂に終わりそうです。というのも欧州では広い範囲で記録的な暖冬となり、パリでは年末年始の気温がこの時期としては過去最高となったというニュースは記憶に新しいところです。
暖冬の影響は環境問題としては気になるところではありますが、少なくとも現在のエネルギー価格大幅下落に寄与し、現在の天然ガス価格は1年前と比べてもマイナス圏へと下げてきました。週足チャートをご覧ください。昨年1月の同じ週に青の縦線を引いてありますが、昨年の1月第2週の始値は4.144ドル、今週の始値は3.810ドルと明らかに1年前に比べて低い水準です。また2021年12月安値は3.536ドルで同水準を下回るとテクニカルには一段安を見込む動きにつながりそうです。
インフレの原因は物の価格だけでは無いにしても、大きな影響を与えたエネルギー価格が前年比でマイナス圏に入ってきたことは今後のインフレ率の一段の低下に繋がることが予想されますし、米国に続いてユーロ圏のインフレ率もピークアウトした動きはほぼ間違いありません。
現時点でもまだ米国、欧州とも中銀関係者のタカ派発言は目立ちますが、今後こうしたエネルギー価格の低迷が続けば、利上げピーク水準の低下や年後半における早期の緩和への転換といった見方が広がる要因にもなります。エネルギー価格の下落だけでなく、バルチック海運指数といった海上輸送コストに至っては1年前に比べてマイナス50%という水準にまで下げています。物の値段と輸送コスト双方の低下は、2023年の金融政策を考えていく上で重要な指標となって行きますので、今後今まで以上に見て行く機会を増やしたいと考えています。
なお、個人的には現在のFRB関係者もECB関係者もタカ派に寄っているため、どこかでハト派寄りの軌道修正に動いて来る可能性が高いのではないかと考えています。