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コモディティ戦略責任者(Saxo Group)
サマリー: EUのガスと電力の価格は、月曜日(9月5日)に発表された、ロシアから欧州に対する攻撃手段であるノルドストリーム1パイプラインの停止を受けて上昇した後、本日は下落して取引されています。ロシア側は、「西側諸国」がウクライナ侵攻に対する対露制裁を解除するまでノルドストリーム1の完全な再稼働はないとしています。一方、ガス価格と電力価格が、8月26日のノルドストリーム1のメンテナンス発表後の高値からそれぞれ35%と52%下落していることから、市場は、金曜日(9月9日)のEU首脳会合で、欧州が供給に対する当面の脅威を削減するための解決策を決定することを期待しているようです。
EUのガスと電力の価格は、ガスプロムが金曜日(9月2日)、ノルドストリーム1を3日間のメンテナンス後に再稼働させず、無期限に停止すると発表したことを受けて月曜日(9月5日)に上昇した後、火曜日(9月6日)には下落して推移しています。まだ稼働している最後の圧縮機ユニットでの油漏れを停止の根拠としましたが、G7がロシア産石油価格の上限設定で合意した直後に、この驚くべき決定が下されました。そのため、エネルギー戦争はさらに激化し、欧州は約30mcm/d、すなわち4%のガス供給量を失うことになりそうです。
ここ数週間、LNGの輸入が急増したため、ユーロ圏全体で貯蔵量が急速に増大していますが、ガスと電力の需要を抑制するための配給制等の供給制限や、さらなる取り組みがEU全域でますます注目されるようになるでしょう。これは、冬のピーク需要期を前にした価格高騰による、経済への破壊的な影響を緩和することを目的としたものです。
しかし、ガス価格と電力価格は、ノルドストリーム1のメンテナンス発表後のピークからそれぞれ35%と52%下落しており、市場は政策当局が欧州域内の懸念を緩和するための措置の導入を期待しています。
EUでは今週金曜日(9月9日)に首脳会合を開き、エネルギー市場に対する歴史的な介入について議論されます。市場の価格高騰および価格設定の柔軟性低下による消費者と産業への混乱緩和を目的とするもので、価格上限の設定やその他の施策が導入される可能性があります。しかし、現在の発電能力の限界(その大部分はロシアによるガス供給停止による)を考慮すると、何らかの形での配給計画が必要になることも考えられます。
会合の草案はEU議長国のチェコが提示し、一部の報道機関によれば、主に5つの分野に焦点を当てたものとなっているとのことです。
• 電力価格へのガス相場の影響の分離/制限
• 市場の流動性向上
• 電力需要削減に向けた協調的措置
• 非ガス(電力を使用しない)発電事業者(風力、太陽光、石炭)の収益制限
• EU域内排出量取引制度(EU ETS)の影響
問題の核となっているEUの電力価格体系
商品市場は供給事業者のマージンによって価格が決定される傾向にあり、電力も同様です。この制度では基本的に、再生可能エネルギーや、最近では石炭を使用した発電がより安価で可能となっているにも関わらず、ガス発電価格に連動して電力卸売価格が決定されることが通例となっています。この市場構造が、過去数か月のガス価格の高騰とあいまって、電力価格を、想像を超える水準にまで押し上げ、先週の月曜日には、ドイツの1年物電力先物価格が一時、1000ユーロ/MWh(原油換算で1バレル1700ドルに相当)を超える高値で取引されました。
ガス価格の高騰から電力価格を切り離す方法は、欧州の他の国々とのエネルギー接続が限られるスペインやポルトガル、そしてギリシャで既に実施されています。欧州全体では、このようなシステムは、合意された基準価格と実際の市場価格(現在はガス価格の高騰により上昇している)の差分を、非ガス発電事業者が買い取る形で機能しています。この収益余剰分は、消費者に還元されるとともに、限界的な電力量を赤字で生産せざるを得ない発電事業者を支援するために使用されるべきです。
1990年から2019年までの間、すなわち、世界的なパンデミックに続いてロシアのガス供給への課題が増すことになる以前に、欧州ではエネルギー源に占めるガスの割合が約20%から25%に上昇していました。昨今のガス価格の高騰により、欧州のエネルギー構成のこの部分が電力価格を左右しているため、平均または加重平均電力価格への移行が議論されており、その結果、消費者向け価格の低下につながることが期待されています。
一方、ツイッターのスレッドでは、私の同僚であるピーター・ガンリュー氏が、電力の基準価格を変更しても全体のコストは下がらず、消費者負担が電力事業者負担に変わるだけで、それによる倒産を回避するために政府の支援が必要となる理由について述べています。