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コモディティ戦略責任者(Saxo Group)
サマリー: 中国の弱い需要回復を背景に、銅はモメンタム主導のファンドによる新たな売りに見舞われ、4ヶ月ぶりに下値支持線を割り込み、長期投資志向の強気筋のポジション削減を余儀なくされています。一方、銅相場の下落が銀に波及する中、金は米国のインフレ指標の発表後に小口の利益確定売りにやや下押しされる程度にとどまりました。全体的なトレンドとして、産業用金属への投資は忍耐強く臨む必要がある一方、金は様々な面で先行き不透明感が高まる中、引き続き資金の逃避先となっています。
Today's Saxo Market Call podcast
Global Market Quick Take: Europe
ロンドンとニューヨークの銅先物は、4ヶ月ぶりに下値支持線を割り込み、モメンタム主導のファンドによる新たな売りに見舞われ、長期投資志向の強気筋のポジション削減を余儀なくされています。銅相場の下落は銀にも波及し、水曜(10日)の米インフレ指標を受けてFRBが市場が織り込む年内に75bpの利下げに対して消極的であることへの懸念が高まる中、金と同様に軟調な展開となっています。
世界経済の先行きに対する懸念が払拭されず、また、中国経済の回復も政府当局が以前推進した成長支援策に比べてコモディティ主導ではないことが明らかになる中、エネルギーや工業用金属の価格は過去1ヵ月間にわたり軒並み下落しました。今年6%に達する可能性のある中国経済は、インフラ投資や建設に代わって消費支出やサービス部門の伸びによって加速しています。
当グループでは、足元の銅の下落は一時的なものであり、「グリーン・トランスフォーメーション」は、バッテリーや電動モーター、再生可能エネルギー発電、エネルギー貯蔵、発電網の開発をはじめ、向こう数年にわたってグリーン・トランスフォーメーションに最も適した導電性金属である銅にとって強い追い風となると考えています。生産者が今後数年にわたって鉱石品位の低下や生産コストの上昇に加えて、ESGの観点から銀行やファンドが提供する投資が減少し、パンデミック前の投資意欲が後退しているといった課題に直面する見通しであることを踏まえると、これはなおさら注目すべきテーマであると言えるでしょう。
銅価格の下落によって今後数年の間に市場では多くの企業が赤字に陥り、そうした状況が続く可能性が高まっているものの、その一方で鉱山会社の収益性を支えるために価格を下支えし、供給拡大に向けて数十億規模かつ数年単位の新規プロジェクトを稼働する意欲が高まる可能性もあります。しかし、短期的には、需要の減少と相場の下落を狙う空売り筋によって、市場は困難に直面しています。5月5日までの1週間を対象とした最新のCOT(コミットメンツ・オブ・トレーダーズ)レポートによると、ヘッジファンドが保有するCOMEX銅先物(HG)の売越残高は49%増の1万5700万枚と、9カ月ぶりの高水準に達しました。
COMEX銅先物の期近物は、中国再開の楽観的な見方を背景に1月に付けた高値の4.3550ドル/ポンドから下降トレンド入りし、足元では下値抵抗線である3.80ドル/lb、200日移動平均線、および9月から1月まで続いた上昇相場のリトレースメントの50%を下回って取引されています。次の重要な節目となる下値支持線は、リトレースメントの61.8%となる3.6680ドル/lbとなっています。
米国のインフレ指標を受けてFRBが利上げを一時旦停止するとの見方が強まり、金は2050ドル付近の上値抵抗線近くまで上昇しました。しかし、今回のデータによってFRBが今年下半期に利下げ(足元で約80bps)に踏み切るとの観測が一段と強まったことで、結果的に金は目先で最も大きな課題に直面する可能性が生じています。コアインフレ率は5.5%と横ばいにとどまっており、FRBがインフレとの闘いにおいて勝利を宣言するには、a)現在2%に設定されているインフレ目標を引き上げる、b)米国がリセッションに陥りFRBが政策変更を強いられる、c)何らかの経済的ショックに見舞われる、のいずれかが生じない限り時期尚早であり、まだやるべきことが多く残されていると考えられます。
今後の経済指標の発表を見極める必要はあるものの、短期的な見通しとしては金相場はさらに足場を固めるとみられ、当グループは主に以下の見通しに基づいて金に対して全体的に強気な姿勢を維持しています。
ドル安が継続し、利回り格差が縮小する。
歴史的に見ると、過去20年の間に3回にわたって金はFF金利がピークを付けた後、その後数ヶ月~数四半期に力強い上昇を遂げており、今回も同様の展開が予想される。
世界的な脱ドル志向を背景に中央銀行の金需要は継続する見通しである。その場合、これらの需要が金価格に対してどの程度に反応するかはまだ分かりませんが、当グループは金価格の上昇は必ずしも中央銀行の継続的な金購入の妨げにはならず、その影響はあくまでも限定的なものにとどまる可能性があると考えています。
インフレは今後一段と根強さを増すものと予想され、2.5%に回帰するとの市場の期待は、短期的には実現される可能性があるものの長期的には持続せず、実質利回りの低下が織り込まれることで金相場を支えると予想される。
世界の多極化による、地政学的リスクの高まり。
上記の要因が最終的に金相場の上昇をもたらした場合、潜在的な投資家が金市場に参入する可能性がある。
金は現在、200ドル幅の上昇トレンドのチャネルライン内で取引されています。このチャネルは1730ドルを超えた局面でトリプルボトムが形成された11月を起点としています。金は、銀行危機を受けた短期金利と米国債の利回り低下によって引き起こされた3月から4月にかけて力強い上昇を遂げた後、先週過去最高値を更新した後に足場固めの展開となっています。重要な下値支持線は、1950ドルの手前の1990ドル~2000ドルのレンジ内にとどまっており、上値抵抗線が2050ドルを上回るには2100を上抜ける必要があります。