ウィークリー・コモディティ・アップデート:景気後退と供給逼迫の間で揺れる商品市場
サマリー: 2022年の取引も残り数週間となり、商品市場は債券や株式などのアセットクラスに対して圧倒的な優位性を維持しています。原油やそのほかの中国関連商品にとっては、中国のロックダウンは依然として一時的な懸念材料ですが、銅、銀、金などの商品にとっては、ドルの軟化やFOMCが利上げペースを緩やかにする意思を示したことが好材料となっています。
ロシアに対する制裁措置とウクライナからの主要な食糧の供給リスクにより、エネルギー、穀物、金属を含むすべての商品市場の価格が上昇しました。その結果、ブルームバーグ商品トータルリターン指数は第1四半期に25%以上上昇し、その後数か月間、緩やかに下落しました。しかし、ここ数年で最も強力なドルの上昇、中国での新型コロナウイルスに関するロックダウン、成長を犠牲にしてもインフレを抑制するための中央銀行の利上げなど、数々の逆風にも関わらず、商品セクターは非常に好調で、年初来のリターンが20%近くに達したことがそれを証明しています。
2023年に向けて、4つの大きなテーマが市場の方向性を決定すると思われます。
1. 1980年代初頭以来、最も大きく反転した米国債イールドカーブに市場が織り込んでいる景気後退の深さ。
2. 景気後退により、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げから景気下支えに軸足を移させざるを得なくなり、インフレ率が十分な低水準に達する前に、ドルや米国債の利回りが反転する可能性があること。
3. 中国の国境再開により、工業用金属とエネルギーの需要が回復すること。
4. ウクライナ戦争の期間と、原油、ガス、小麦、主要工業用金属に至る主要商品の供給への潜在的な影響。
景気後退と需給逼迫
主要商品の供給が逼迫している中での景気後退のリスクと、中国におけるポストコロナの回復の強さが、2023年の商品相場の方向性を決定する重要な要因となるでしょう。米国連邦準備制度理事会(FRB)は数か月にわたる積極的な利上げを経て、現在は今後の利上げペースの鈍化を示唆しており、最終的なピークレートは今後のデータによって決まると思われます。米国の債券市場はすでにFRBに金融引き締めの行き過ぎを示唆しており、3か月物国債と10年物国債の利回りスプレッドはマイナス64bpと20年ぶりの水準まで下落しています。これほど大幅な逆ザヤは、過去3回の景気後退期前にしか見られていません。短期金利はFRBのオーバーナイトFF金利の引き上げによって上昇し、長期債の利回りは長期にわたってインフレが定着し成長が鈍化する(あるいはリセッションに陥る)見通しから低下しています。詳しくは、香港の同僚、レドモンド・ウォンによる債券の最新情報をご覧ください。
ブルームバーグ商品指数は3.4%上昇し、工業用金属と貴金属が上昇を牽引しており、11月の商品相場は好調に推移しています。中国では、記録的な新型コロナウイルス感染者数の増加に直面した地方当局が、習主席の厳格で不人気なゼロコロナ政策の実施を再び迫られているという、連日の状況悪化のニュースにもかかわらず、このような状況です。中国人民銀行は景気を下支えするため、金曜日(11月25日)に銀行の預金準備率を25bp引き下げました。
エネルギーセクターは、中国情勢によってさらに深刻化した季節的な需要減退の中で苦戦していますが、他の市場、特に貴金属は、長期債の利回り低下と今月約5%下落したドルが支援材料となっています。今月初めに発表された米国の消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったこと、米国の経済指標が弱含みで推移していること、将来の利上げペースを緩やかにするとした最近の連邦準備制度理事会の議事録公表が要因となっています。
金、銀、銅のサイクル安値?
金、銀、銅が力強く反発した中でも、金は、1,615ドル付近のサイクル安のように見えるところから170ドル上昇する展開となり、先週はレンジ内で推移した後に1,735ドル付近で支持線を見つけました。全体として、サクソは、金、そして銀に対して、長年にわたって強気の見方を維持しています。これは主に、今後の景気減速と、長期的なインフレが現在想定されている3%以下の水準よりも高い水準となることを市場が織り込むであろうことを根拠としています。
しかし、ETF投資家の買い意欲の欠如が続き、利回りの低下で債券に運用資金が向かいつつあるため、金が重要な1,800ドルの領域までさらに上抜けするには、利回りとドルのさらなる低下、または安全への逃避が求められる他の要因が必要と思われます。テクニカルアナリストのキム・クレイマーによるテクニカルアップデートはこちらでご覧いただけます。
小麦を筆頭に穀物セクターが軟調
パフォーマンス表の最下部にあるのが、穀物セクターです。穀物は、主に米国と欧州の小麦価格の軟調さに牽引され、今月、下落しています。この軟調さは、ウクライナの穀物回廊の運用が続いていることと、ロシアが同国産穀物の提供によって世界中に揺さぶりをかけていることに起因するものです。投機筋は全般的な軟調さに反応し、主要穀物先物6銘柄のネットロング(買い)の合計を3か月ぶりの低水準となる43万枚に減らしました。11月15日までの週についての最新のトレーダーズ・コミットメント・レポートによれば、投機筋は2019年8月以来、1週間で最大のトウモロコシのロング(買い)ポジションを解消しました。一方、小麦のネットショート(売り)は4.7万枚と27か月ぶりの水準に増やし、大麦と大麦ミールも縮小しました。
原油は中国のロックダウンと景気後退懸念の影響を受ける
原油は3週連続の下落となり、特に中国からの需要懸念がセンチメントを悪化させています。G7が提唱するロシア産原油の価格上限設定は、EU諸国がその水準で合意できずに暗礁に乗り上げた格好です。その結果、上限を設けないか、供給への影響が無視できないほど高い水準となり、ロシアはその対応に追われることになります。WTI原油とブレント原油の12か月先物スプレッドは、いずれも昨年12月以来の低水準まで低下しており、市場が景気後退や季節的な需要減退を懸念し、直近限月が高い状態となっています。
また、EUは12月5日までにロシア産原油の海上輸出を禁止するが、それを前に、市場がプレミアムを織り込んでいないことは、世界最大の原油輸入国である中国の景気減速の影響を浮き彫りにしています。中東では、ペルシャ湾産原油のスポット価格のプレミアムが、ウクライナ侵攻後に上昇した後、急激に低下しています。これは、ウクライナ侵攻以降、多くの買い手がロシア以外に目を向けるようになり、中東産原油の需要が高まったためです。
中国からの需要の減速は一時的なものですが、数か月間、新型コロナウイルスの感染拡大をロックダウンで阻止してきたため、改善の見込みは何か月か先になりそうです。中国当局が、今月初めに保健当局が発表した「ゼロコロナ」政策を緩和するための20項目に及ぶ計画に従わない限り、改善には向かわないでしょう。ブレント原油はレンジの下限付近で取引されていますが、需給に関する複数の不確定要素があるため、下値が拡大する見込みは限定的と思われます。