ウィークリー・コモディティ・アップデート:景気後退と供給逼迫の間で揺れる商品市場

商品
オーレ・ハンセン

コモディティ戦略責任者(Saxo Group)

サマリー:  2022年の取引も残り数週間となり、商品市場は債券や株式などのアセットクラスに対して圧倒的な優位性を維持しています。原油やそのほかの中国関連商品にとっては、中国のロックダウンは依然として一時的な懸念材料ですが、銅、銀、金などの商品にとっては、ドルの軟化やFOMCが利上げペースを緩やかにする意思を示したことが好材料となっています。


2022年の取引も残り数週間となり、商品市場は債券や株式などのアセットクラスに対して圧倒的な優位性を保っています。この1年は、幾度かの逆風にも関わらず、ブルームバーグ商品トータルリターン指数が年間20%近く上昇するなど、力強いリターンを上げました。2021年は、新型コロナウイルス発生後の財政刺激策と協調的な金融支援による商品需要の急増に牽引され、好調な滑り出しとなりました。投資不足の中で需要が大きく伸び、またロシアのウクライナ侵攻後に突如として供給不安に関心が向かいました。

ロシアに対する制裁措置とウクライナからの主要な食糧の供給リスクにより、エネルギー、穀物、金属を含むすべての商品市場の価格が上昇しました。その結果、ブルームバーグ商品トータルリターン指数は第1四半期に25%以上上昇し、その後数か月間、緩やかに下落しました。しかし、ここ数年で最も強力なドルの上昇、中国での新型コロナウイルスに関するロックダウン、成長を犠牲にしてもインフレを抑制するための中央銀行の利上げなど、数々の逆風にも関わらず、商品セクターは非常に好調で、年初来のリターンが20%近くに達したことがそれを証明しています。

2023年に向けて、4つの大きなテーマが市場の方向性を決定すると思われます。

1. 1980年代初頭以来、最も大きく反転した米国債イールドカーブに市場が織り込んでいる景気後退の深さ。
2. 景気後退により、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げから景気下支えに軸足を移させざるを得なくなり、インフレ率が十分な低水準に達する前に、ドルや米国債の利回りが反転する可能性があること。
3. 中国の国境再開により、工業用金属とエネルギーの需要が回復すること。
4. ウクライナ戦争の期間と、原油、ガス、小麦、主要工業用金属に至る主要商品の供給への潜在的な影響。

景気後退と需給逼迫

主要商品の供給が逼迫している中での景気後退のリスクと、中国におけるポストコロナの回復の強さが、2023年の商品相場の方向性を決定する重要な要因となるでしょう。米国連邦準備制度理事会(FRB)は数か月にわたる積極的な利上げを経て、現在は今後の利上げペースの鈍化を示唆しており、最終的なピークレートは今後のデータによって決まると思われます。

米国の債券市場はすでにFRBに金融引き締めの行き過ぎを示唆しており、3か月物国債と10年物国債の利回りスプレッドはマイナス64bpと20年ぶりの水準まで下落しています。これほど大幅な逆ザヤは、過去3回の景気後退期前にしか見られていません。短期金利はFRBのオーバーナイトFF金利の引き上げによって上昇し、長期債の利回りは長期にわたってインフレが定着し成長が鈍化する(あるいはリセッションに陥る)見通しから低下しています。詳しくは、香港の同僚、レドモンド・ウォンによる債券の最新情報をご覧ください。
Source: Bloomberg & Saxo

 ブルームバーグ商品指数は3.4%上昇し、工業用金属と貴金属が上昇を牽引しており、11月の商品相場は好調に推移しています。中国では、記録的な新型コロナウイルス感染者数の増加に直面した地方当局が、習主席の厳格で不人気なゼロコロナ政策の実施を再び迫られているという、連日の状況悪化のニュースにもかかわらず、このような状況です。中国人民銀行は景気を下支えするため、金曜日(11月25日)に銀行の預金準備率を25bp引き下げました。

エネルギーセクターは、中国情勢によってさらに深刻化した季節的な需要減退の中で苦戦していますが、他の市場、特に貴金属は、長期債の利回り低下と今月約5%下落したドルが支援材料となっています。今月初めに発表された米国の消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったこと、米国の経済指標が弱含みで推移していること、将来の利上げペースを緩やかにするとした最近の連邦準備制度理事会の議事録公表が要因となっています。

 

金、銀、銅のサイクル安値?

金、銀、銅が力強く反発した中でも、金は、1,615ドル付近のサイクル安のように見えるところから170ドル上昇する展開となり、先週はレンジ内で推移した後に1,735ドル付近で支持線を見つけました。全体として、サクソは、金、そして銀に対して、長年にわたって強気の見方を維持しています。これは主に、今後の景気減速と、長期的なインフレが現在想定されている3%以下の水準よりも高い水準となることを市場が織り込むであろうことを根拠としています。

しかし、ETF投資家の買い意欲の欠如が続き、利回りの低下で債券に運用資金が向かいつつあるため、金が重要な1,800ドルの領域までさらに上抜けするには、利回りとドルのさらなる低下、または安全への逃避が求められる他の要因が必要と思われます。テクニカルアナリストのキム・クレイマーによるテクニカルアップデートはこちらでご覧いただけます。

小麦を筆頭に穀物セクターが軟調

パフォーマンス表の最下部にあるのが、穀物セクターです。穀物は、主に米国と欧州の小麦価格の軟調さに牽引され、今月、下落しています。この軟調さは、ウクライナの穀物回廊の運用が続いていることと、ロシアが同国産穀物の提供によって世界中に揺さぶりをかけていることに起因するものです。投機筋は全般的な軟調さに反応し、主要穀物先物6銘柄のネットロング(買い)の合計を3か月ぶりの低水準となる43万枚に減らしました。11月15日までの週についての最新のトレーダーズ・コミットメント・レポートによれば、投機筋は2019年8月以来、1週間で最大のトウモロコシのロング(買い)ポジションを解消しました。一方、小麦のネットショート(売り)は4.7万枚と27か月ぶりの水準に増やし、大麦と大麦ミールも縮小しました。

原油は中国のロックダウンと景気後退懸念の影響を受ける

原油は3週連続の下落となり、特に中国からの需要懸念がセンチメントを悪化させています。G7が提唱するロシア産原油の価格上限設定は、EU諸国がその水準で合意できずに暗礁に乗り上げた格好です。その結果、上限を設けないか、供給への影響が無視できないほど高い水準となり、ロシアはその対応に追われることになります。WTI原油とブレント原油の12か月先物スプレッドは、いずれも昨年12月以来の低水準まで低下しており、市場が景気後退や季節的な需要減退を懸念し、直近限月が高い状態となっています。

また、EUは12月5日までにロシア産原油の海上輸出を禁止するが、それを前に、市場がプレミアムを織り込んでいないことは、世界最大の原油輸入国である中国の景気減速の影響を浮き彫りにしています。中東では、ペルシャ湾産原油のスポット価格のプレミアムが、ウクライナ侵攻後に上昇した後、急激に低下しています。これは、ウクライナ侵攻以降、多くの買い手がロシア以外に目を向けるようになり、中東産原油の需要が高まったためです。

中国からの需要の減速は一時的なものですが、数か月間、新型コロナウイルスの感染拡大をロックダウンで阻止してきたため、改善の見込みは何か月か先になりそうです。中国当局が、今月初めに保健当局が発表した「ゼロコロナ」政策を緩和するための20項目に及ぶ計画に従わない限り、改善には向かわないでしょう。ブレント原油はレンジの下限付近で取引されていますが、需給に関する複数の不確定要素があるため、下値が拡大する見込みは限定的と思われます。 

Source: Saxo

口座開設は無料。オンラインで簡単にお申し込みいただけます。 

最短3分で入力完了!

【ご留意事項】

■当資料は、サクソバンクグループのアナリストによるマーケット分析レポートの転載、もしくは外部のアナリストからの寄稿となっております。
■当資料は、いずれも情報提供のみを目的としたものであり、特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。
■当資料は、作成時点において執筆者またはサクソバンク証券(以下「当社」)が信頼できると判断した情報やデータ等に基づいていますが、執筆者または当社はその正確性、完全性等を保証するものではありません。当資料の利用により生じた損害についても、執筆者または当社は責任を負いません。 
■当資料で示される意見は執筆者によるものであり、当社の考えを反映するものではありません。また、これら意見はあくまでも参考として申し述べたものであり、推奨を意味せず、また、いずれの記述も将来の傾向、数値、投資成果等を示唆もしくは保証するものではありません。 
■当資料に記載の情報は作成時点のものであり、予告なしに変更することがあります。 
■当資料の全部か一部かを問わず、無断での転用、複製、再配信、ウェブサイトへの投稿や掲載等を行うことはできません。
■上記のほか、当資料の閲覧・ご利用に関する「免責事項」をご確認ください。 
■当社が提供するデリバティブ取引は、為替相場、有価証券の価格や指数、貴金属その他の商品相場または金利等の変動によって損失を生じるおそれがあります。また、お預けいただく証拠金額に比べてお取引可能な金額が大きいため、その損失は、預託された証拠金の額を上回る恐れがあります。
■当社が提供する外国証券取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。手数料については、「取引金額×一定料率」又は「取引数量×一定金額」で求めた手数料が一回の取引ごとに課金されます。ただし手数料の合計額が当社の定める最低手数料に満たない場合は、手数料に代えて最低手数料を徴収させていただきます。また取引所手数料等の追加費用がかかる場合があります。 
■取引にあたっては、取引説明書および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。 
■当社でのお取引にかかるリスクやコスト等については、 こちらも必ずご確認ください。

サクソバンク証券株式会社
Saxo Bank Securities Ltd.
Izumi Garden Tower 36F
1-6-1 Roppongi Minato-ku
Tokyo 106-6036
〒106-6036 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデンタワー36F

お問い合わせ

国・地域を選択

日本
日本

【重要事項及びリスク開示】

■外国為替証拠金取引は各通貨の価格を、貴金属証拠金取引は各貴金属の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、売買の状況によってはスワップポイントの支払いが発生したり、通貨の金利や貴金属のリースレート等の変動によりスワップポイントが受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■外国為替オプション取引は外国為替証拠金取引の通貨を、貴金属オプション取引は貴金属証拠金取引の貴金属を原資産とし、原資産の値動きやその変動率に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、オプションの価値は時間の経過により減少します。また、オプションの売り側は権利行使に応える義務があります。
■株価指数CFD取引は株価指数や株価指数を対象としたETFを、個別株CFD取引は個別株や個別株関連のETFを、債券CFD取引は債券や債券を対象としたETFを、その他証券CFD取引はその他の外国上場株式関連ETF等を、商品CFD取引は商品先物取引をそれぞれ原資産とし、それらの価格の変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、建玉や売買の状況によってはオーバーナイト金利、キャリングコスト、借入金利、配当等調整金の支払いが発生したり、通貨の金利の変動によりオーバーナイト金利が受取りから支払いに転じたりすることがあります。
■上記全ての取引においては、当社が提示する売価格と買価格にスプレッド(価格差)があり、お客様から見た買価格のほうが売価格よりも高くなります。
■先物取引は各原資産の価格を指標とし、それらの変動に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。
■外国株式・指数オプション取引は、対象とする有価証券の市場価格や対象となる指数、あるいは当該外国上場株式の裏付けとなっている資産の価格や評価額の変動、指数の数値等に対する予測を誤った場合等に損失が発生します。また、対象とする有価証券の発行者の信用状況の変化等により、損失が発生することがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。さらに、外国株式・指数オプションは、市場価格が現実の市場価格等に応じて変動するため、その変動率は現実の市場価格等に比べて大きくなる傾向があり、意図したとおりに取引ができず、場合によっては大きな損失が発生する可能性があります。また取引対象となる外国上場株式が上場廃止となる場合には、当該外国株式オプションも上場廃止され、また、外国株式オプションの取引状況を勘案して当該外国株式オプションが上場廃止とされる場合があり、その際、取引最終日及び権利行使日が繰り上げられることや権利行使の機会が失われることがあります。対象外国上場株式が売買停止となった場合や対象外国上場株式の発行者が、人的分割を行う場合等には、当該外国株式オプションも取引停止となることがあります。また買方特有のリスクとして、外国株式・指数オプションは期限商品であり、買方がアウトオブザマネーの状態で、取引最終日までに転売を行わず、また権利行使日に権利行使を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。また売方特有のリスクとして、売方は証拠金を上回る取引を行うこととなり、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。売方は、外国株式・指数オプション取引が成立したときは、証拠金を差し入れ又は預託しなければなりません。その後、相場の変動や代用外国上場株式の値下がりにより不足額が発生した場合には、証拠金の追加差入れ又は追加預託が必要となります。また売方は、権利行使の割当てを受けたときには、必ずこれに応じなければなりません。すなわち、売方は、権利行使の割当てを受けた際には、コールオプションの場合には売付外国上場株式が、プットオプションの場合は買付代金が必要となりますから、特に注意が必要です。さらに売方は、所定の時限までに証拠金を差し入れ又は預託しない場合や、約諾書の定めによりその他の期限の利益の喪失の事由に該当した場合には、損失を被った状態で建玉の一部又は全部を決済される場合もあります。さらにこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。外国株式・指数オプション取引(売建て)を行うにあたっては、所定の証拠金を担保として差し入れ又は預託していただきます。証拠金率は各銘柄のリスクによって異なりますので、発注前の取引画面でご確認ください。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、取引証拠金を事前に当社に預託する必要があります。取引証拠金の最低必要額は取引可能な額に比べて小さいため、損失が取引証拠金の額を上回る可能性があります。この最低必要額は、取引金額に対する一定の比率で設定されおり、口座の区分(個人または法人)や個別の銘柄によって異なりますが、平常時は銘柄の流動性や価格変動性あるいは法令等若しくは当社が加入する自主規制団体の規則等に基づいて当社が決定し、必要に応じて変更します。ただし法人が行う外国為替証拠金取引については、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用いて通貨ペアごとに算出(1週間に1度)した比率を下回らないように当社が設定します。
■上記全ての取引(ただしオプション取引の買いを除く)は、損失が無制限に拡大することを防止するために自動ロスカット(自動ストップロス)が適用されますが、これによって確定した損失についてもお客様の負担となります。また自動ロスカットは決済価格を保証するものではなく、損失がお預かりしている取引証拠金の額を超える可能性があります。
■外国証券売買取引は、買付け時に比べて売付け時に、価格が下がっている場合や円高になっている場合に損失が発生します。
■取引にあたっては、契約締結前交付書面(取引説明書)および取引約款を熟読し十分に仕組みやリスクをご理解いただき、発注前に取引画面で手数料等を確認のうえ、ご自身の判断にてお取引をお願いいたします。

サクソバンク証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第239号、商品先物取引業者
第一種金融取引業、第二種金融商品取引業
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本投資者保護基金、日本商品先物取引協会
手数料:各商品の取引手数料についてはサクソバンク証券ウェブサイトの「取引手数料」ページや、契約締結前交付書面(取引説明書)、取引約款等をご確認ください。